概要
車体に繋がれたケーブル(鋼索)を巻き上げたり循環させることにより移動させる乗り物。海外では索道を含むことがあるが日本では主として坂を上り下りする乗り物で、鉄道の一種をさし、ケーブルを用いるものの線路やタイヤなどを併用するため索道には含まれない。
現代の日本で運用されているものは井戸のつるべのように、長いケーブルの両端に一組ずつ車体をつないで、中間地点でお互いにすれ違うようになっているものが多い。
形式上通常の鉄道よりも急勾配に強く、日本では観光地などで、登山用に使用されている。過去においては旅館などで施設内の移動用に使われる事も多かったが、これらの用途のほとんどは法律の変更や設備維持の問題によりエレベーターやモノレールに置き換えられている。
車両本体は動力を必要としない(動力が必要な箇所はケーブルを巻き上げる装置に必要となる)ため基本的には集電装置は不要である。しかし安全確保に必要な通信設備や放送設備、計器類、車内照明、自動ドア、空調設備など車内の電装品を動かすために架線が張られパンタグラフを装備していたり、軌道横から集電していることがある。
この形式は大量輸送に必ずしも向いているわけではなく、日本でも箱根や立山など、他の交通機関を幾つも乗り継いで目的地に向かうルートではケーブルカー部分の輸送力がピーク時のネックとなる場合がある。
海外
海外では、急高配に強いという特性により坂の多い街中などでもエレベーターとともに使用されている。イスタンブルやナポリでは地下鉄のケーブルカーがあり、トリエステでは路面電車の急勾配区間でケーブルカーが電車を押し上げている。
日本で一般的な交走式ケーブルカーは「フニクラー」と称される。かの有名な童謡「フニクリ・フニクラ」もイタリアのケーブルカーのCMソングとして作られたものである。
一方交走式ケーブルでは、仕組み上3つ以上のゴンドラを併用には複雑な走行方式が必要で、世界のほぼ全ての交走式ケーブルカーが2つないし片方をダミーウェイト(おもり)とした1両の車両のみで走行する。
また主にダムなどで使用される産業用・貨物用のケーブルカーを「インクライン」(勾配・傾斜の意)と呼ぶが、システム的には同じである。インクラインは重い貨物や、時にはダンプトラックなどを運ぶため旅客用以上に大規模になりやすい。
なお、英国英語ではロープウェイを指す場合がある。また、横に引っ張る水平エレベーターをケーブルカーと呼ぶことも稀に有る。
循環式
サンフランシスコのケーブルカーが有名だが、これは循環式ケーブルカーと呼ばれ、日本で用いられている交走式ケーブルカーとは構造が異なり、路面の溝の中を走っているケーブルをつかんで走っている。ゴンドラ(車両)とは別に地中にて常にケーブルを動かし、止まる際は車両側でケーブルを掴むレバーをいちいち離す必要がある。本来「ケーブルカー」はこの方式のものを指すのだが、残念ながら世界には殆ど現存しておらず、また日本では横浜博覧会の会場で期間限定で運用されていたものを除いて登場すらしていない。サンフランシスコなど古いものではグリップマンと呼ばれる専任のレバー操作手がいるが、ものすごい手間のかかる作業である。また大規模なケーブル循環装置の導入のコストなどもあるのか、循環式ケーブルカーが絶滅危惧種たる所以かもしれない。