概要
前後の作品と話のつながりはなく、独立した世界観を持つ初期ミレニアムシリーズの三作目。
「第1作『ゴジラ』の初代ゴジラのみが存在し、それから日本に別の怪獣は現れていない」という設定(ただし「世界各地で異常な生物が確認されている」というセリフはあり、日本以外には度々何かしらの怪獣が現れていたようである)。一方で自衛隊ではなく防衛軍が存在し、超兵器も登場せず、オキシジェンデストロイヤーが機密事項として名が伏せられ、厳格に情報統制されている。そんな日本に約半世紀ぶりにゴジラが上陸し、日本を恐怖のどん底に突き落とす。
今作のゴジラは悪役としての面が強調され、白目をむいた異形のデザインに加え、シリーズ最大のサイズである約220cmの大きな着ぐるみで迫力を出している。
ゴジラに敵対する護国三聖獣はモスラ、キングギドラ、バラゴンというメンバーで、それぞれの出典とは独立した設定を持つ。特に歴代のシリーズで悪役側を演じてきたキングギドラが正義側に回っているのが異彩を放っている。
監督は『平成ガメラ三部作』の金子修介が務め、これにより金子は2022年現在に至るまでゴジラとガメラを両方撮った唯一の映画監督となった。その為作風も平成ガメラ三部作に近く、人が死ぬ瞬間のシーンが多く描かれている。モブキャラで平成ガメラに登場した俳優も大勢参加している他、VSシリーズの川北特技監督等もモブキャラでゲスト出演している。また、平成ガメラシリーズのキャッチコピーである「日常を壊す非日常」を、当作品の超全集のインタビューにて、東宝の重役が使っていた。
本作は、観客動員数240万人、興行収入約27億1000万円と、新世紀シリーズでは1番の大ヒットを記録した作品である。特に、興行収入に関してはシン・ゴジラ(82.5億円)に次ぐ歴代2位、ゴジラの登場する映画全般に視野を広げても本作を上回ったのはシン・ゴジラの他にGODZILLA-ゴジラ-(32億円)、キング・オブ・モンスターズ(28.4億円)の3作のみである(平成ゴジラシリーズ及びハリウッド版ゴジラ以前は配給収入であったため、ここでは割愛する)。そのため、前作までの観客の減少により検討されていた休止宣言は撤回された。
あらすじ
ゴジラが撃退されてから約半世紀後、アメリカ海軍の原子力潜水艦がグアム島沖で消息を絶ち、防衛軍が救助に向かった。そこで防衛海軍の特殊潜航艇の乗員が見たものは、ゴジラを思わせる青白い背びれだった。
時を同じくして、バラゴンとモスラがそれぞれ目覚める。「放送界のゴミ溜め」ことBSデジタルQの取材班は、その現象が『護国聖獣伝記』と一致することを突き止めた。伝記を著した伊佐山教授は語る。ゴジラは太平洋戦争で死んだ怨念の集合体である事、ゴジラを止めるため三体の護国聖獣が目覚めている事を――。
登場怪獣
この世界には、以下の怪獣達の他、ニューヨークに現れた怪獣を始め、世界中で巨大生物の出現が確認されている(参照)。
ゴジラ(呉爾羅)
全高 | 60メートル |
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体重 | 3万トン |
武器 | 放射能熱線/引力放射能熱線 |
伊佐山教授いわく「太平洋戦争の怨念の集合体」。
憎悪に狂ったように暴れ周り、人間も怪獣も容赦なく意図的に殺戮する。その目的地は……。
結末も含め、歴代シリーズのゴジラでも特に異質な存在。
護国三聖獣
すべて古代朝廷によって討伐・封印され(祀り上げられ)、「くに」を守る守護神として地蔵などに力や魂を封印されていた。後の世では霊獣のモデルになった。敵の到達地点を予知して、真っ直ぐにそこに向かえる。これら護国聖獣はあくまで土地としての"くに"を守る存在であるため、"くに"に仇なす存在ならば悪人の死はいとわない。ただし、善良な動物や人間などは手の届く範囲内なら救おうとする(e.g.不良の犠牲になりかけた犬を救ったり、溺死しかけた人間や、人間の作戦の為に?ゴジラを海中に押し沈める、ゴジラの体内から人間を生還させる(?))。
なお、肉体を得てはいるものの、実態的には憑代に降りた霊魂に近い存在であるために(この点では平成ガメラに近いものがある)、血は流すが、強力な攻撃を受けるなどして肉体が限界に達した際には、死体は残らずに粒子化する。事実、三獣は全員、戦闘続行の意思があるにもかかわらず肉体が爆散してしまっていた。また、粒子の状態でも行動が可能で、仲間のサポートや合体攻撃など、スタンド化が可能である。
バラゴン(婆羅護吽)
身長 | 30メートル |
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全幅 | 24.5メートル |
体重 | 1万トン |
護国聖獣の一体で、地の神。大陸からの敵に対する防衛として、新潟県の妙高山に眠っていた。
モスラ(最珠羅)
成虫翼長 | 75メートル |
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成虫胴幅 | 5メートル |
幼虫全長 | 30メートル |
幼虫全幅 | 5メートル |
幼虫全高 | 6メートル |
幼虫体重 | 1万トン |
繭全長 | 33メートル |
護国聖獣の一体で、海の神。鹿児島県の池田湖に眠っていた。イッシーではない。
幼虫から繭になり、成虫へと変身。ギドラとともにゴジラに挑む。
ギドラ(魏怒羅)
身長 | 50メートル |
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体重 | 2万5千トン |
他の二体より復活が遅く、ゴジラと戦った時点でも完全には目覚めていない。
ゴジラよりも大きなイメージが強いギドラが、ゴジラよりサイズが小さいのはシリーズで唯一。
千年竜王キングギドラ
身長 | 50メートル |
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翼長 | 93メートル |
体重 | 2万5千トン |
武器 | 引力光線 |
モスラからエネルギーをもらい、完全に覚醒したギドラの姿。
陸・海・空のすべてを制覇する最強の存在。
大きさは変わらないが、従来のキングギドラ同様、黄金に輝く大きな翼を持ち、口から引力光線を放つ。
- パチンコ「CRゴジラ3S-Tバトル」でもこのデザインで登場した(参照)。
キャスト
立花由里 | 新山千春 |
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武田光秋 | 小林正寛 |
門倉春樹 | 佐野史郎 |
江森久美 | 南果歩 |
三雲中将 | 大和田伸也 |
日野垣真人 | 村井国夫 |
広瀬裕 | 渡辺裕之 |
丸尾淳 | 仁科貴 |
小早川時彦 | 葛山信吾 |
防衛軍大佐・崎田 | 中原丈雄 |
伊佐山嘉利 | 天本英世 |
立花泰三 | 宇崎竜童 |
スタッフ
備考
- 当初、監督の金子は対戦相手として自身の息子の好きな怪獣でもあるカマキラスを考えていたが、同窓会の席で同級生に話したところ「カマキラス? 何それ?」と言われてしまい考え直したという。
- 前作のメガギラスとの虫被りも問題視されたといわれている。
- 続けて考えた案は宇宙飛行士が宇宙線を浴びて変化した怪獣となってゴジラと戦うというもので、怪獣化した父親と娘の交流を軸にしていたが、「どうやっても悲劇で正月映画にふさわしくない」として没になり、三大怪獣の登場に繋がった。
- 最初に護国三聖獣の構想が固まった際には、アンギラス、バラン、そしてバラゴンの3体で企画が進んでいたが、東宝の偉い人に「そんな地味な面子じゃ客が集まらない」と言われ、知名度を重視して本編の三体になった。企画のまま実現していたら下のイラストのようになったと思われる。
- 当初大橋明はアンギラスのスーツアクターを務める予定で、アンギラスのポジションを受け継いだキングギドラ役にスライドした。
- このようにほとんどアンギラス・バラン・バラゴンで制作準備が進んでいた状態での変更だったこともあって、スタッフインタビューなどでは「完成作品に思い入れはあるが当初の予定のままやりたかった」という発言が散見された。
- 後年金子監督は「モスラとキングギドラのおかげで画面が華やかになり、シリーズを継続することもできたのでベストな選択だった」と語っている。
- 年々低下する興行成績の対策として、平成ゴジラでは初めて他の映画との同時上映がなされたのだが、その作品が劇場用アニメ『とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』で腰が砕けた者は多い。巨匠・出崎統が監督を務めており決して出来は悪くないのだが、『ハム太郎』を目当てにやってきたちびっ子たちは、白目をむいて暴れまくるゴジラの姿に泣きじゃくり、彼らのトラウマになったことは想像に難くない。詳しくはゴジハムくんを参照。ラインナップもこちらで。
- 金子監督は抵抗を感じたものの、興行が不安視されていることを察し、「登場怪獣の変更に比べれば衝撃は少なかった」と語っている。
- 一方プロデューサーの本間英行は両者の客層があまりにも異なることを憂慮したが、上層部はそれも計算済みだったのではと推測している。
- 劇中、「アメリカにもゴジラと酷似した巨大生物が出現し、『ゴジラ』と名付けられたが、日本の学者は同類とは認めていない」という台詞が出てくる。これは98年版GODZILLAを指していると思われ、このことから98年版GODZILLAと世界観を共有しているのではないかとする説がある。
- 金子監督は98年版GODZILLAが不評だったことにちなんで思いついたと語る一方、『ゴジラ-1.0』公開時の対談において、上記の台詞は98年版GODZILLAをディスっているわけではない、と発言している。
- 勿論設定的な問題として、アメリカに出現したゴジラ(98年版)と日本に出現したゴジラ(初代と本作)では、余りにも形態や能力(熱線の威力や生命力)が違っており、日本の学者が同種と認めない事に関しては、一応筋は通る。平成ガメラ三部作で例えるなら、ギャオスとイリスの関係についての台詞(「形態が著しく違っている」)が、ニュアンスとしては近い。
- 結果的に世界各国で怪獣災害が発生し、その対策が必要であるという設定の補強につながり、複数の怪獣が登場することに説得力を持たせる演出となった。
- バラゴンとカメーバは、共にミレニアムシリーズにて33年ぶりに復活した。
- 先述の通り、監督は平成ガメラ三部作の金子が務め、これによってゴジラとガメラの作品を両方撮った唯一の映画監督となったとあるが、本作の劇伴はこちらも平成ガメラ三部作で劇伴を担当した大谷幸氏が務めており、ゴジラとガメラの両方の作品で劇伴を担当した唯一の音楽家という事になった。
- 本作のエンディングは本作のタイトルテーマを中心に1992年公開の『ゴジラVSモスラ』にてゴジラが富士山からの復活時に流れた所謂「ゴジラのテーマ'92」や1989年公開の『ゴジラVSビオランテ』にて黒木特佐率いる自衛隊がゴジラを待ち受けるべく若狭にサンダーコントロールシステムを設備するシーンに流された「怪獣大戦争マーチ」が使われていた。
関連タグ
とっとこハム太郎:この年から2年間、映画版がゴジラシリーズと同時上映されたアニメシリーズ。
ゴジラ-1.0:本作に影響されたゴジラ作品で、同作に登場するゴジラや現実に即した兵装を使う登場人物との類似性がある。
ゴジラ×メガギラスG消滅作戦←ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃→ゴジラ×メカゴジラ
外部リンク
ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 - Wikipedia