本名:ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ(フランス語: Jules Gabriel Verne、 1828年2月8日 - 1905年3月24日)。『月世界旅行』は世界初の科学小説と呼ばれ、その作品は1世代下のH・G・ウェルズと並びSFの源流となった。
概要
フランスの小説家。劇作家として出発したが、『気球に乗って五週間』で科学的道具立てを用いた冒険小説に独自の分野を開拓。続く『地底旅行』『月世界旅行』で科学小説のジャンルを確立した。彼の作品は多くが映画化され、(例: 世界初の職業映画監督であるジョルジュ・メリエスの代表作は『月世界旅行』であった。また、ディズニー初の実写映画である『海底二万哩』は彼の著名な小説『海底二万里』を原作とする。)古典として数多くのジュブナイル版が出版されている。
彼の作品はおおむね当時(19世紀)の科学の知見を下敷きにしており、ウェルズ作品のようなオーバー・テクノロジーは基本的に扱われない(これについては、生前ヴェルヌ自身も言及している)。いわゆるスチームパンクの元ネタとして、現在でもゲームや漫画、アニメ、SFなど様々な分野に影響を及ぼしている。
作風
冒険小説を得意としており、まだ見ぬ世界に対する好奇心を刺激するような、雄大な世界観を特徴としている。
一方で科学文明の発展に楽観的であった19世紀の人とは思われないほど科学技術にシビアな目線を向けていた。著作の中でも、科学技術の発展がもたらす弊害をいち早く取り入れており、環境汚染や人間性の喪失といった根深い諸問題を100年以上前の時点で描き出した先進性は、今日の人々を驚かせている。
「19世紀のアメリカには文盲が居ない!今ではもう人種差別も存在しない!誰もが正式な賃金を受け取って幸せに超巨大コロンビヤード砲を作り上げたのである」なんていう小説がフランスで発表されたなんて、アメリカ人は怒らなかったのだろうか。
『月世界旅行』にはアメリカ人の好戦性への揶揄(ロケットではなく大砲で月に行くという設定にしたのはこのため)、『海底二万里』『神秘の島』には欧米列強の植民地主義と人種差別への批判など、強烈な社会風刺を盛り込んだ展開も多い。
晩年には厭世的な傾向を強めたと言われていたが、近年になって 『気球に乗って五週間』以前に書かれた未発表のディストピア小説『二十世紀のパリ』が発見され、技術文明への悲観的な傾向は当初から持ち合わせていたことがはっきりした。