概要
長編アニメーション映画の制作を主力事業とするアニメスタジオ。『風の谷のナウシカ』を制作した「トップクラフト」を前身に、徳間書店の出資を受けて同社の子会社として設立。『天空の城ラピュタ』以降の全ての宮崎駿作品の制作拠点となっている。
壮大なドラマからささやかな日常まで幅広く扱うジャンルの多様さ、リアリティーに富んだハイクオリティな作画、象徴的で親しみやすく描かれたキャラクターなどが特徴。
日本を代表するスタジオのひとつであり、世界的な人気、知名度、影響力を有している。
金曜ロードショー枠でたびたびテレビ放送を行っている一方、ビデオ・オン・デマンドは一切行っていない。そのため、テレビを見ない若い層では認知度が低い。
もともとは宮崎と高畑勲の作品制作を行うために作られた会社だが、他の監督作品の制作、他のアニメ制作会社の動画グロス、短編作品および実写作品の制作、『熱風』という小冊子の発行を行う出版事業、さらに音楽事業なども手がけている。
日本のアニメスタジオでは珍しく、アニメーターが月給制であり、劣悪な労働環境が常態化している業界内では待遇は良いとされている。これは人材育成を重視する宮崎駿の意向によるもの。研修生を入れて新人育成に努めるようになったのは『魔女の宅急便』からだが、宮崎には制作中の作品に横槍を出してくる悪癖があり、このため片渕須直は『魔女』の企画を宮崎に横取りされ、細田守は『ハウルの動く城』の企画に行き詰って宮崎に交代。押井守は『アンカー』の企画段階で宮崎・高畑と対立して決裂、近藤喜文は『耳をすませば』を完成させたもののプレッシャーに圧し潰されて早逝してしまい、結局ジブリでは宮崎の後継者と言えるような有力な演出家は育たなかった(片渕や細田はいずれも日本を代表するアニメ監督として知られるが、出世作を出したのはいずれもジブリを離れてからである)。
これについては外部の同業者の多くから指摘され続けてきたが、当の鈴木敏夫も2005年時点で「このままいけばジブリは終わりますよ」と発言しており、翌年からは宮崎吾朗を筆頭に、新たな人材を積極的に監督に迎えていく方針を展開している。
1990年代以降顕著な「メインキャラに声優は使わない」の文化については好き嫌い分かれ、ジブリ好きアニメオタクの間でもこれだけは受け付けないという人も多い。
2013年の『風立ちぬ』で宮崎駿が引退を表明して今後が注目されていたが、2014年の株主総会にて、鈴木敏夫により同年発表の『思い出のマーニー』を最後として制作部門を一端解散し、アニメ制作は事実上の無期限活動休止になることが明かされた。しかし宮崎の引退撤回と次回作『君たちはどう生きるか』の制作開始に伴い、再度制作部門が立ち上げられた。
2001年、東京都三鷹市の井の頭公園内に三鷹の森ジブリ美術館が開館。これはスタジオジブリの関連法人が指定管理者として運営する三鷹市立の美術館で、ジブリやアニメーション制作関連の展示品を多数収蔵・公開している。
2022年、愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内にジブリパークが開館。作品の世界観を再現した展示が行われている。
2023年9月21日には日本テレビがスタジオジブリの株式を取得、子会社化を発表した。
名称
「スタジオジブリ」の名称は、サハラ砂漠の熱風(ghibli)に由来している。実際には「ギブリ」の方が原音に近い。公式には認められていないが、カプロニ社製の飛行機 Ca.309ギブリが直接の由来とも言われる。
なお2005年に徳間書店傘下から離れる際、ジブリの名称の権利を持つ徳間書店から買い取る必要があり、その際宮崎駿は改名案として「シロッコ」を提案したが、社内の評判がよくなかったこともあり、ジブリの名称を継いでいる。
一次創作について
「スタジオジブリ」は著作権に厳しいとされており、基本的に同人活動には寛容であるが、一次創作での商業利用やご当地化などの営利目的には厳しいとされている。
スポンサーについて
ヤマト運輸(魔女の宅急便)やハウス食品(ハウルの動く城)など作品単位でスポンサーになっている作品はあるが、あくまで映画公開中のCMで「〇〇は△△を応援しています」といった作中のシーンの一部分を放送しているにすぎず、基本的に企業とのコラボレーションは行っていない。
日本テレビとの関係について
スタジオジブリ作品のテレビ放送は原則日本テレビ系列の金曜ロードショー内のみである。これは魔女の宅急便以降日本テレビが制作に出資しており、新作が公開された際は過去の作品を放送してPRを行なう、それ以外でも「ジブリ祭り」と称して2~3週にわたり放送するなど、スタジオジブリと日本テレビは切っても切れない関係である。2023年9月にスタジオジブリが日本テレビの子会社化さてたことでさらに強化されるものと推測される。
ジブリは左派が多く原発反対を表明したことでも知られるが、読売グループを築いた正力松太郎は日本の原発の父であったり、渡辺恒雄は共産党からの転向組だったりとたいへんややこしい関係になっている。
なお、尺の都合で金曜ロードショーでの放送が困難な短編作品についてはNHKでも放送されたこともある。
ご当地について
スタジオジブリは実際の日本を舞台にした作品が多くあり、さらに容易に特定できることから各地で聖地巡礼が行われている。但しスタジオジブリ公式としては認定しておらず、ご当地グッズやイベントの類は行っていない。
但し、「スタジオジブリ作品の舞台地とされている」という曖昧な表現でPRすれば黙認される。実際耳をすませばの多摩市や崖の上のポニョの鞆の浦ではこのようなスタンスでご当地アピールがされているが、スタジオジブリが取りやめるように求めたことはない。
詳細については聖地巡礼やご当地化に厳しい作品一覧を参照。
一次創作の著作権に厳しい理由
一次創作に厳しい対応をとっている背景には、『風の谷のナウシカ』がアメリカで商品展開された際、かのロジャー・コーマンの手によって宮崎に無許可で原作と全く違う内容に改悪されてしまったという経緯があるため、致し方ないと思われる(現在は友人のジョン・ラセターらの協力もあり、原語版に忠実な形で制作された吹き替え版がディズニーより販売されている)。
ちなみにその当時のポスターがこれ(閲覧注意)。
その一方で、宮崎と親交の深かったフランス人漫画家メビウスがジブリファンになったきっかけは、海外で違法に出回っていたナウシカの海賊版のビデオテープだったりする。
一次創作の著作権に関する都市伝説
スタジオジブリとしての初作品である『天空の城ラピュタ』以降テレビゲームの類が一切発売されていないが、理由として「徳間書店時代に公開されていた『風の谷のナウシカ』に関連したゲームの内容に宮崎駿監督が激怒したため」というのがある。徳間書店はスタジオジブリと比べて著作権が緩いとされ、『風の谷のナウシカ』に関連するコンピューターゲームが3本製作されたが、品質が低かったうえそのうちの1本が「メーヴェに乗ったナウシカが王蟲を銃で攻撃するシューティングゲーム」だったことに宮崎駿が激怒し、スタジオジブリでは一切のゲームの許可を出さなくなったという都市伝説が囁かれていた。
しかし公式発表や徳間書店が発行するアニメージュをはじめとしたアニメ雑誌を確認してもそのような記述やインタビュー内容は未確認で、また2000年頃に有志がこの都市伝説を検証するため『風の谷のナウシカ』関連のゲームを入手しプレイしたが、「3本とも内容が原作に忠実で、宮崎駿監督が怒る要素が見当たらない」「シューテングゲームでは確かに王蟲を攻撃できるが、倒してしまうと蟲の集団が風の谷を滅ぼしてゲームオーバーという仕組みになっている(これも原作の回想に基づいている)」とまったく異なる評価となったことから、現在では完全にデマという結論になっている。
このような都市伝説が広がってしまった理由としてはアメリカで商品展開の件もあるが、当時は原作を無視した内容のゲームが氾濫しており、『天空の城ラピュタ』以降ゲーム化されていない理由に関連付けられてしまったと推測されている。
二次創作について
一次創作に関しては厳しい対応をとっているスタジオジブリであるが、二次創作については手書きなどの自作に関しては寛大な対応をとっている。但し一次創作をそのまま流用したMAD動画をアップすることに関しては非常に厳しい対応をとっている。
二次創作本・イラストについて
二次創作の同人誌やイラストについては「常識の範囲内であれば許諾する」というスタンスのため、R-18を含めて特に規制・禁止の声明は出していない。そのため、同人誌販売サイトの検索で作品名を入力すればヒットしたり、コミックマーケットでもイベントの規定に沿っていれば当たり前のように出品されている。また、Pixivでもジブリ関連のR-18は数多く投稿されている。
動画について
MAD動画においては厳しいスタンスをとっており、ニコニコ動画でジブリ作品のMAD系ムービーを公開した場合速攻で権利者侵害により削除され、YouTubeでは削除こそされないが、著作権管理システムのコンテンツID機能によりアップロード完了後に速攻で動画公開がブロック(日本国内外の全ヵ国)され、その相応のペナルティを受けるが、公開ブロックが回避されている場合は短期間で三回(投稿数)連続で削除されてアカウント停止になるのでやめた方がよい。同社が所有する全作品は登録済み。また、削除しきれなかった残りのMAD系動画に関してはこのペナルティを受けて観れなくなっている。
尤も、作品を無断で複製、編集、公開したMADが消されるのは至極当たり前のことであり、何もジブリに限った話ではない。確かに他所ではMADを許可しているものもあり、ジブリが二次創作のイラストに寛大であるため誤解されているが、実際の動画を基に作られているのは「一次創作の流用」のため、見逃されずに削除されている。
なお、自分で描いたイラストや自作3Dを用いた動画については二次創作と見做され、ジブリの申し立てで削除されることはない(他の権利者からの申し立てがあれば別)。
作品一覧
タイトル | 監督 | 公開日 | 時間 | 配給 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
風の谷のナウシカ | 宮崎駿 | 1984年 | 116分 | 東映 | 厳密にはトップクラフト制作の作品だが、現在は正式にジブリ作品として扱われている。 |
天空の城ラピュタ | 宮崎駿 | 1986年 | 124分 | 東映 | |
となりのトトロ | 宮崎駿 | 1988年 | 86分 | 東宝 | 同時上映『火垂るの墓』。 |
火垂るの墓 | 高畑勲 | 1988年 | 88分 | 東宝 | 同時上映『となりのトトロ』。 |
魔女の宅急便 | 宮崎駿 | 1989年 | 102分 | 東映 | |
おもひでぽろぽろ | 高畑勲 | 1991年 | 119分 | 東宝 | この作品からスタジオジブリのロゴが使用される。 |
紅の豚 | 宮崎駿 | 1992年 | 93分 | 東宝 | |
海がきこえる | 望月智充 | 1993年 | 72分 | テレビ映画として放映後に地方の映画館で上映。 | |
平成狸合戦ぽんぽこ | 高畑勲 | 1994年 | 119分 | 東宝 | |
耳をすませば | 近藤喜文 | 1995年 | 111分 | 東宝 | 同時上映CHAGE&ASKAのPV『OnYourMark』。 |
もののけ姫 | 宮崎駿 | 1997年 | 133分 | 東宝 | |
ホーホケキョ となりの山田くん | 高畑勲 | 1999年 | 104分 | 松竹 | |
千と千尋の神隠し | 宮崎駿 | 2001年 | 125分 | 東宝 | |
猫の恩返し | 森田宏幸 | 2002年 | 75分 | 東宝 | 同時上映『ギブリーズ episode2』。 |
ハウルの動く城 | 宮崎駿 | 2004年 | 119分 | 東宝 | |
ゲド戦記 | 宮崎吾朗 | 2006年 | 116分 | 東宝 | |
崖の上のポニョ | 宮崎駿 | 2008年 | 101分 | 東宝 | |
借りぐらしのアリエッティ | 米林宏昌 | 2010年 | 94分 | 東宝 | |
コクリコ坂から | 宮崎吾朗 | 2011年 | 91分 | 東宝 | |
風立ちぬ | 宮崎駿 | 2013年 | 126分 | 東宝 | |
かぐや姫の物語 | 高畑勲 | 2013年 | 137分 | 東宝 | |
思い出のマーニー | 米林宏昌 | 2014年 | 103分 | 東宝 | |
レッドタートル ある島の物語 | マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット | 2016年 | 80分 | 東宝 | 日仏ベルギーの合作。 |
アーヤと魔女 | 宮崎吾朗 | 2021年 | 82分 | 東宝 | スタジオジブリ史上初の3DCG制作でテレビ映画として放映後に映画館で上映。 |
君たちはどう生きるか | 宮崎駿 | 2023年 | 124分 | 東宝 |
レッドタートルに関しては、欧米のクリエイターや企業との対等合作でかつ脚本や絵コンテなどのストーリー作りの大元は向こう側が担当した。そのため作画、ストーリー、さらに登場人物の言葉としてのセリフが皆無というサイレント映画である事などが、スタジオジブリらしい作品を期待していたファンたちの期待を大きく裏切り、日本での評判やテレビ放映時の視聴率がかなり低いものとなった。
画像配布
2020年9月18日、ジブリがサイトを更新。
自社作品の画像写真の無料配布を開始した。
公開された画像は『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』『崖の上のポニョ』『借りぐらしのアリエッティ』『コクリコ坂から』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』『思い出のマーニー』の8作品。
ジブリ代表取締役の鈴木敏夫氏によると「常識の範囲でご自由にお使いください」とのこと。
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宮崎駿 高畑勲 鈴木敏夫 久石譲 宮崎吾朗 近藤喜文 近藤勝也 高坂希太郎 米林宏昌 森田宏幸 細田守 岸本卓
徳間書店 コニャラ 多摩ニュータウン 小金井市 三鷹市 三鷹の森ジブリ美術館
⇒作品内容・二次創作関連のものは「ジブリ」に記載