曖昧さ回避
- 『ギリシャ神話』に登場する神。本項で解説。
- 『ゴッドオブウォーシリーズの』のキャラクター。本項で解説。
- 『女神転生シリーズ』のキャラクター。→魔神ゼウス
- 『パズル&ドラゴンズ』のキャラクター。→ゼウス(パズドラ)
- 『モンスターストライク』のキャラクター。→ゼウス(モンスト)
- 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のキャラクター。→ゼウス(ダンまち)
- 『ダンボール戦機』に登場する小型ロボット。→ゼウス(ダンボール戦機)
- 『ワールドヒーローズ』の登場人物。→ゼウス(ワールドヒーローズ)
- 『スーパーロボット大戦Z』に登場する部隊。→ZEUTH
- 『無双OROCHI3』に登場するキャラクター。→ゼウス(無双)
- 『神撃のバハムート』のキャラクター。→ゼウス(神撃のバハムート)
- 『Fateシリーズ』のキャラクター。→ゼウス(Fate)
- 『百獣戦隊ガオレンジャー』のキャラクター→ゼウスオルグ
- 『機動武闘伝Gガンダム』のモビルファイター→ゼウスガンダム
- 『ビックリマン』に登場するキャラクター→スーパーゼウス
- 『ONEPIECE』に登場するキャラクター→ゼウス(ONEPIECE)
- 『MARVELコミック』に登場するキャラクター。ギリシャ神話のゼウス本人という設定→ゼウス(MARVEL)
- 『にゃんこ大戦争』に登場するキャラクター。→天空神ゼウス
概要
ゼウスとは、ギリシャ神話における天空の神であり、オリュンポス十二神の頂点に君臨する最高神である。至善至高、全知全能の神。象徴はワシ。
父神クロノスを倒しオリュンポス山の頂に座す最高神になる。(第3代)
全知全能の力を持つ天空神であり雷を操れる唯一の神(雷神)。神々の頂点に立つため、正義や法、秩序の神とみなされることもある。彼の持つ雷霆(ケラウノス)は一たび振るえば宇宙を焼き尽くす、まさに必殺技である。
ちなみにこの雷は、クロノスらティタン神族と覇権を賭けて戦った(ティタノマキア)際、祖母である大地の女神ガイアの助言に従い、救い出したサイクロプス三兄弟が製作して贈ったものである。なお、ケラウノスの具体的な形状は不明で、図案化される際には大抵、稲妻型の投擲武器だったりする。(フィクションだと見栄えが悪いので剣になったり、ハンマーになったりする事もあるが。)
彼の武器はケラウノスだけではなく、クロノスから奪い取ったアダマスの鎌や無敵の盾アイギスも彼の持ち物であり、後者はアテナの防具として登場することが多い。また、彫刻や絵画などでは身の丈ほどはある杖を携えた姿や玉座に座った姿で描かれる。
全知全能とされるのは自分の息子に王位を追われると言う予言を知って、妻であった知恵の女神メティスを食べてしまった事で彼女の権能を受け継いだから。
変幻自在の能力を持つ(年寄りにも美女にもなれるばかりか、動物ひいては無生物にも、また他の神にも変身可能)神にして破壊神と創造主を兼ねた偉大な存在である。
おおむね世界に正義と秩序をもたらす名実ともに最高の神だが非常に女癖が悪く浮気性であり、妻(兼姉、下記の理由で妹ともいえる)である結婚の女神・ヘラの目を盗んでは、他の女神や地上のニュンペーたちや人間の美女たちを度々誘惑している。相手の女性は美少女から人妻まで守備範囲が広く、要は「美しければ欲情する」といっていい。自分の曾孫娘にまで手を出してもいる。さらに両刀使いの嗜好もあるようで、美少年に手をつけたこともあった。
たった一回の関係でもほぼ百発百中で相手の女性を孕ませている。このせいで浮気が表沙汰になることも少なくない。これは自身の血を引く強力な半神半人の英雄を人間界に送り出すという意味を持っているためである。事実、生まれた子供はたいてい英雄となり(代表的にはペルセウスやその曾孫であるヘラクレス)、人間界に多大な貢献をしていることも忘れてはならない。いわば、浮気は世界の秩序を整えるための最高神としての役割ゆえであって、決してただのスケベ心からではないのだ……たぶん。
そのためか生まれるのが人間の場合はたいていは息子であり、娘が生まれることは非常に少ない(ヘレネぐらいか。ただし相手が女神の場合は多くの娘も生まれ、女神となっている)。ここまで含めて大神としての能力の一部なのかもしれない。
そして、そのとばっちりは誘惑された女性側に向くというなんとも理不尽な展開に発展するのが、毎度のパターンである。
そしてゼウスの不誠実が原因で収拾を付けられなくなった事態、例としてはデメテルとの娘であるペルセポネとの求婚許可を貰いに来たハーデスに勝手に結婚を許してデメテルを激怒させた、ゼウスの偉大な双子を妊娠したレトに対して正妻ヘラが激怒して手が付けられなくなった時には、母親であるレアに泣きついて解決して貰うと言う最高神の割には情けない事例も存在している。
このようにゼウスは箔をつける為の存在として人気があった為か、安易にゼウスの真似をしようとする不届な輩も存在した。風神アイオロスの子であるサルモネの王サルモネウスがそれで、チャリオットで爆走しながら掲げた松明を雷霆に、引き摺っていた青銅の釜が発する轟音を雷鳴に見立てて、自分をゼウスだと崇めさせるという冒涜を行った為にブチギレたゼウスが都市を滅ぼしたというエピソードがある。
ギリシャ神話では間違いなく最強格の存在だが、祖母からゼウスキラーとも言うべき存在を度々差し向けられており、一つは神々だけでは絶対に倒せない巨人族ギガース、もう一つはギリシャ神話最大最強の怪物テュポーンである(後述)。
解説
こうした他の神々とは一線を画す最高神でありながら、人間ならば間違いなくクソ野郎の烙印を押されそうな性格づけがなされたメタ的な理由については諸説あるが、有力なものとしてはギリシャ各地の諸侯や王が「我こそはゼウスの血を引く英雄の子孫なり」と訴えるべく言いだしたためだという説がある。大神から人間の英雄が出来るためには母親のほうは人間の女性でなければならず、結果としてさまざまな美女と浮気を重ねたことになってしまったというわけである。
また、ゼウスを崇拝する民族が異民族を懐柔するために「君たちが信仰していた神の正体は、変身したゼウスだったんだよ!」と同一視して各地の民間伝承を取り込んだために経歴が凄いことになったともされる。
要は二次創作(特にカップリング)やクロスオーバーが原作本篇より有名になったせいで「エロ親父」のイメージが広まったようなモノである。
ちなみに好色過ぎる脚色は当時からも批判されていた。
出生
天空神ウーラノスの孫、そして農耕神クロノスの息子としてハーデス・ポセイドンに次いで生まれた。しかし予言によって自分が我が子に王座を奪われることを予見していたクロノスは、自分の子供たち(娘のヘラ・ヘスティア・デメテル含む)を全員丸呑みにしてしまい、唯一ゼウスのみが母神レアの機転によって難を逃れる。
その後、勇敢に成長し権力に執着する父神から兄弟姉妹たちを助け、ガイアの力を借りてサイクロプス、ヘカトンケイルを救い出すと、新たな最高神となるべくクロノスとその一族(ティタン)に戦いを挑み、これに勝利。このときポセイドン・ハーデスの順で吐き出されたことで、兄弟の並びが逆転することとなる(元々の姉たちも同様)。
ちなみに、三兄弟の支配権はくじ引きによって決定されたものである。
家族関係
叔母:アフロディーテ(ウラヌスを父親とした場合)
息子:アポロン、アレス、ヘルメス、ヘパイストス、ディオニュソス、ヘラクレス(実はひ孫でもある)、ペルセウス、ディオスクロイ、アルカス、ラダマンティス、アイアコス、ミーノースなど
娘:アテナ、アストライアー、アルテミス、アプロディーテー・パンデーモス(「万人のアフロディーテ」)、ムーサ、ヘレネ、ヘーベーなど
孫:ロムルスorクィリヌス(叔母の子孫でもある)、アスクレピオス、ペレウス、ハルモニア(姪でもある)、アウトリュコス、ヒッポリュテ、ペンテシレイア、アリアドネなど
義孫:テセウスなど
玄孫:オデュッセウスなど
従兄弟/従姉妹:アイネイアス、ヘリオス、エオス、プロメテウス、アトラス、エピメテウスなど
愛人関係
女:ムネーモシュネー、ディオーネー、イオ、レダ、カリスト、エウロペ、セメレ、ダナエ、アルクメネ、マイアなど。
男:ガニュメデス
秘伝・ゼウス流誘惑術
ゼウスは大神に相応しく何にでも変身できる能力を持つが、ほとんど目当ての女性を誑かす手段としてしか使われていない。美女を手に入れるためであれば手段を選ばない、その手口の一端をここで紹介しよう。
お嬢さん、お乗りなさい…
ゼウスはフェニキアの王女・エウロペの美しさに惹かれて浮気心を起こす。ヘラの目を盗み、うまく事を運ぶためにとった手段は牡牛に化けて近づくこと。海岸を侍女たちとともに散策していたエウロペは、真っ白で美しく、人懐っこい牡牛を気に入って戯れる。ところが彼女がその背に乗ると、突如として牛は猛スピードで疾駆し、海の彼方へと走り去ってしまう。こうして彼女をクレタ島まで拉致したゼウスは、この地で思いを遂げたのだった。この時のゼウスの姿がおうし座となって天を飾っている。
窮鳥懐に入らば……
ゼウスは今度はスパルタ王妃の美女レダに思いを寄せる。相手は貞操の固い人妻だったが、彼女が森の小川で水浴びしている時に、白鳥に化けて近づくという方法を使う。しかもアプロディテに協力を依頼して鷲に化けてもらい、「鷲に襲われてレダの懐に逃げ込む」という状況を演出したのだった。そしてレダと、白鳥姿のまま交わる。そのため後にレダが生んだのは2つの卵。その卵から男児、女児それぞれの双子が孵化し、それぞれの神話を飾ることになる。この時のゼウスの姿がはくちょう座になったとされる。
相手の夫にまで……
このときの狙いはミュケナイ王妃アルクメネ。しかしこちらも貞淑な人妻であり、やすやすと誘惑に落ちたりはしない。だが美女を手に入れるためには手段を選ばないゼウスは何と彼女の夫アムピュトリオンに化ける。ヘルメス神の化けた従者まで伴って本物らしく見せかけ、戦場から凱旋する本物の夫より1日早く彼女の閨に入り込んだのだ。しかもこのチャンスを存分に生かすため太陽神アポロンに命じてしばらく日が昇らないようにさせ、実時間にして3日3晩にわたって夜の営みを楽しんだという。この結果として生まれたのがかのヘラクレスだったが……。
乙女の園に入るには……
アルカディアのニュンペー・カリストの美しさに一目惚れしたゼウスだったが、彼女は処女神アルテミスに仕える身で、女神に絶対の純潔を誓っている清純そのものの乙女。男への警戒心は恐ろしく強いと見たゼウスは、なんと彼女の慕うアルテミスに姿を変えて彼女の前に現れる。これには完全にカリストも騙され、偽のアルテミスの愛撫に無邪気に身を委ねてしまう……って彼女はもともとアルテミスとそういう関係だったのかもしれない。後はゼウスは頃合いを見て(あるいは欲情を抑えきれなくなって)正体を現し、愕然となる乙女に対して事に及んだのだった。
その時不思議なことを起こした……
アルゴス王アクリシオスの一人娘だったダナエは諸国の王子から結婚の申し込みが殺到するほどの美女だったが、「孫の手にかかって殺される」という神託を恐れた父王によって、どんな男とも会わないよう青銅の塔の中に幽閉されてしまう。しかし天上から彼女の美しさを見てまたもや欲情したゼウスにとってこの程度の障壁は物の数ではない。ゼウスは何と自らを黄金の雨に変えて窓から彼女の身体に降り注ぎ、思いを遂げたのだった。ダナエ自身も不思議な快感に浸されつつも、これで子供を孕むとは思いもよらなかったことだろう。そして生まれたのが後に英雄として名をとどろかすペルセウスである。
やるときはやる男
ここまで様々な痴態を晒しているゼウスだが、時には最高神らしく、英雄的な行動をすることもある。有名なテュポーンとの戦いである(ただしこの戦いはゼウスの去勢と敗北を意味する時代の移り変わりともとれる説があり英雄的とはまた違った説もある)。
ガイアが産み出したテュポーンがオリンポス山に攻め込んだ際、十二神は散り散りとなり逃走し、ハデスですらも冥界を震わせる地震に身を竦ませたが、唯一ゼウスは家長として単身テュポーンに立ち向かった。地上を焼き、海を干上がらせ、地球を半壊状態にまで追い詰めた戦いは一度はゼウスが敗北したものの、この壮絶な戦いの末、ゼウスは弱体化したテュポーンをエトナ山の下に封じ込めることに成功した。
普段は浮ついているが、やるときはやる、まさに昼行燈のお手本のような人物である。これならばヘラがゼウスに惚れたのかも頷ける……かもしれない。
語源
「ゼウス」という神名は、主格ではΖεύς, Zeús (/zdeús/)と書かれる。呼格ではΖεῦ, Zeû。対格ではΔία, Día。属格はΔιός, Diós。与格ではΔιί, Diíという形になる。ディオゲネス・ラエルティオスは、シュロスのペレキュデースの記述から、Ζάςという形を挙げている(※1)。
ゼウスは、インド・ヨーロッパ祖語の天神 *Di̯ēus の、ギリシア神話における後身といえる。その神名は詩集『リグ・ヴェーダ』(ヴェーダのサンスクリット語ではディヤウスDyaus/Dyaus Pita。※2、※3)、ラテン語に見出すことができ(ジュピター/ユーピテルは、印欧祖語における*Di̯ēusの呼格 *dyeu-ph2tēr に由来する。※4)、 *dyeu- (「光」「空」、そしてラテン語のdeusを筆頭に後世の多くの派生語においては「天」「神」)が語源となっている(※2)。北欧神話のテュールは、古高ドイツ語ではZiu,、古英語ではTiw、ゲルマン祖語でTiwazと呼ばれ、印欧祖語の *Tīwa- に由来しており、北欧の神の名では唯一、本来のインド・ヨーロッパ語の語源(「天」「昼」)を受け継いでいる。テュールは、その役割の多くが鉄器時代から雷神トール(ゼウスと同一視される)や恐るべき軍神オーディンへと移っていったとはいえ、印欧語族の天神のもっとも若いヴァリアントのひとつといえる。
ゼウスは、オリュンポスの神々では唯一、その名に明白にインド・ヨーロッパ語族の語源を持つ神格である(※5)。
線文字Bで表された、ミュケーナイ・ギリシア語におけるもっとも古い形は、di-weもしくはdi-woという形になる(※6、※7)。
※1 Diogenes Laertios ([1925] 1972): «1.11» i: Hicks, R.D.: Lives of Eminent Philosophers («Livene til framstående filosofer»), gresk tekst
※2 «Zeus», American Heritage Dictionary.
※3 Beekes, R. S. P. (2009): Etymological Dictionary of Greek, Brill, s. 499.
※4 Harper, Douglas: «Jupiter», Online Etymology Dictionary.
※5 Burkert (1985): Greek Religion. s. 321.
※6 «The Linear B word di-we»; «The Linear B word di-wo». Palaeolexicon. Word study tool of Ancient languages.
※7 Nilsson, Martin Persson (1950):The Minoan-Mycenaean Religion and Its Survival in Greek Religion, Biblo & Tannen Publishers, s. 533
『ゴッドオブウォーシリーズ』におけるゼウス
ギリシャ神話を題材とした人気アクションゲーム『ゴッドオブウォー』シリーズでは、主人公クレイトスの実父にして、物語の全ての元凶として登場。
スパルタ人女性カリストとの間にクレイトスとデイモスをもうけるも、「印を持つ人間の戦士がオリュンポスに破滅をもたらす」という予言を受け、生まれつき赤いあざを持った幼いデイモスをアレスとアテナに捕らえさせ、死神タナトスの王国に幽閉した。この一件によりクレイトスは力と勝利に固執するようになってしまう。
成人したクレイトスがオリュンポスの使徒として仕えていた際は、墓掘の老人に化けたりして彼に助言を与えたり自身の力の一部を彼に授けて協力するも、そもそもクレイトスが戦ったペルセポネやアレスの反逆はゼウスが原因でもあった。さらにクレイトスがアレス討伐のために解放したパンドラの箱から出た災いの一つ「恐怖」に蝕まれ、自分がクロノスを討ったようにクレイトスが自分に破滅をもたらす運命の息子だとして激しく恐れるようになる。
アレスの後釜となったクレイトスがオリュンポスへの恨みを募らせて暴れ回ると、かつて自身がティタノマキアを終結させるために鍛え上げたオリュンポスの剣に彼を騙して神の力を注がせて奪い、弱体化したところを処刑した。しかしガイア達タイタンの協力で復活したクレイトスは、運命の三女神を屠って手にした運命の力を使ってこの瞬間に戻り、ゼウスの力の一部を奪い重傷を負わせた。だがアテナが自信を庇って犠牲となったことで難を逃れ、クレイトスとタイタン族を滅ぼすべくオリュンポスの神々との一致団結をした。
最終決戦では力の一部を失ったにもかかわらず圧倒的な力を以てしてクレイトスを追い詰めるも、パンドラの協力を経てパンドラの箱に隠されていた最強の力「希望」を覚醒させたクレイトスによって遂に倒された(この際のCSアタックは、〇ボタン連打で画面がゼウスの返り血で真っ赤に染まって見えなくなるまで殴り続けるという、あまりにも衝撃的なものだった)。
こうして滅んだゼウスだが、北欧へと流れ着いて新たな家庭を築いたクレイトスのその後の人生においても、拭いきれない過去としてクレイトスを苦しめている。
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トール:最高神であり同一視される『北欧神話』の神。雷神としての属性が同じである為、木曜日(Thursday)の語源となった。尤も、起源的にはアレス(マルス)と同一視されて火曜日(Tuesday)の語源となったテュールもゼウスに近い存在らしいが。ちなみに、MCU映画「ソー:ラブ&サンダー」では、トールその人であるソー・オーディンソンがゼウスの事を同じ雷神の先輩としてリスペクトしていたのだが……?
ディヤウス:同一起源とされる『インド神話』の天空神。息子のインドラもゼウスに近い存在らしいが。