概要
死滅回游編で桜島結界上空から突如出現した(結界の総則により結界侵入直後に転送されたものと思われる)芋虫型の呪霊。顔面に目や口はなく、6個の穴が開いており、実際の芋虫の肢にあたる部分からは人間の腕が6本生えている。
死滅回游参加のアナウンスを促すコガネに「喧シい。殺スぞ。」と怒声を飛ばしながら降下して死滅回游に参加し、桜島結界内で危険な術師、呪霊の排除をしていた禪院真希と加茂憲紀の前に現れる。
強大な気配にすぐさま臨戦態勢に入る二人だったが、巨大な見た目に反して圧倒的な速度で翻弄する呪霊に真希はある違和感を覚える。それは彼女がよく知るある術式と同じだった。
以下、ネタバレ注意
「こんにちは、真希ちゃん」
その言葉でその正体を察した真希は口を開く。
「直哉か!!」
その言葉に反応するように、顔面の穴から禪院直哉の顔が表面化し、不気味な笑みを浮かべながらこう告げる。
解説
作中初めて登場した元呪術師の呪霊。カテゴリーとしては“怨霊”に該当する(祈本里香のように特定の人物に取り憑き、その人物への加害などにより顕現する怨霊は過呪怨霊となる)。
33話で「術師を殺す時は死後呪いに転じないように呪術で殺す」と説明されており、それ故に呪力がない攻撃(真希の母親による包丁での刺殺)によって死亡した直哉は死後に呪霊に転じた。登場人物が呪霊化して復活するのは祈本里香に続いて2人目だが、里香の呪霊化は乙骨憂太の力と互いの同意と縛りで偶発的に生じた例外中の例外であり、厳密には直哉が作中初めて登場した怨霊と言える。
一部呂律が回っていないような描写もあるが、明確に真希を狙って現れた事や、憲紀や術式(脹相との戦闘から赤血操術を激しく嫌悪)を知っている事、多くの呪霊を祓ってきたとの発言、何よりも生前そのままのその言動の数々から、生前の記憶や人格はそのまま保持している模様。
憲紀によるとこのようなケースはかなり不自然であるようで、本来は里香のように強い感情のみ残して生前の人格を残さない状態が自然であるらしく、憲紀は「折本里香の方がまだ存在として理解できる」とまで評しているが、何故彼がそうなったのか詳細は不明なままである。
その悍ましい姿は、奇しくも憧れの存在が使役していた格納呪霊を彷彿とさせる。
呪霊としての等級は不明だが、生前の時点で1級呪術師の中でも上位の実力者であり、あれほど拘っていた伏黒甚爾や五条悟と同じ『こっち側』になったと自称する事や、後述するその圧倒的な実力から間違いなく特級呪霊の中でも上位に位置する存在である(そもそも生前の時点で特級呪物の脹相に対抗できる実力があった)。
197話で胴体を両断されるが、その強さへの羨望と嫉妬からか、下半身の切断面から生前と同じ人間の上半身を生やして、人間の上半身に呪霊の下半身を持った第3形態に変態し、戦闘を継続した。
戦闘能力
術式
投射呪法(とうしゃじゅほう)
生前と同じく禪院家相伝・最速の術式。己の視界を画角として「1秒間の動きを24分割したイメージ」を予め頭の中で描き、その後に実際に自身の身体でその動きをトレースできる。
生前の弱点としては「過度に物理法則や軌道を無視した動きはできない」というものがあったのだが、呪霊となった事による身体能力の向上、滞空能力獲得に加えて、そもそも人型では無くなった事による縛りの緩和、そして多少無理な挙動をしてダメージを受けても呪力で容易に再生・回復できる呪霊の身体との相性の良さから、生前よりも術式の自由度が飛躍的に増している。
そもそも生前は、戦闘の最中に術式を重ね掛けした結果の最高速度が亜音速だったのだが、呪霊化後は幼体の時点で最初の加速だけで既に音速を超えており、さらに第2形態ではこれに加えて身体にラムジェットエンジンに近い構造を獲得する。
手足を収納した亀のような状態となり、術式を駆使して音速で加速した上で、吸気口から取り込んだ空気をラム圧と呪力で圧縮し、排気する事で更なる加速と推進力を得て相手に突進する事が可能になった。その最高速度はマッハ3(およそ秒速1.020kmに相当する)に達し、覚醒後の真希ですら反応できない程である。
単純に加速による突進を繰り返すだけで周囲に衝撃波が発生し、建造物をも容易に貫通して崩壊させる為に、ただ移動するだけで街を壊滅させかねない。作中描写で比較する限りではその威力と破壊規模は、石流龍の「グラニテブラスト」にも優に匹敵する程である。
高速移動中は、その超加速で身体が自壊しないよう体組織の硬度が跳ね上がるが、その縛りにより高速移動中以外はそれ程の硬度はなく、憲紀の通常攻撃でもダメージは受ける(ただし、あくまで呪霊の中でも特に頑丈とされる花御程ではないというだけで、ゼロ距離で穿血をまともに受けても物ともしない程の耐久力はある)。
近接戦においては、第1形態も第2形態でも生前同様に術式を織り交ぜた肉弾戦を行う。ただし生前のように合気や関節を極める、相手の攻撃を捌くといった動作はみられず、パワーやスピード、リーチで圧倒するような戦法に変化している。生前のような細かい動きの作りはあまりできていない様子。第1形態ではその長い巨体を活かした突進・殴打が主体。続く第2形態では突進攻撃に加えて伸縮自在の手足による攻撃が可能になっており、形状やリーチの自由度はかなり高い。さらに手足を収納して高速でスピンする事で、体の丸みを利用して相手の攻撃を弾く事も可能。第3の人型状態での戦闘が描かれていれば超加速+体術と言った人間自体の強みも活かした戦法も見れたかもしれない。
また、投射呪法の「1秒間フリーズ」を応用して、空気を何層にも分けて空間に固定し、それを破壊する事で空気の爆発を起こす事も可能で、術式の拡張も人間時から遥かに進んでいる。
第3形態は直接的な戦闘描写は殆どないが、見た目は生前とほぼ同じ人間型になったものの呪霊である事に変わりはないので、首を180度回して頭を巨大化させて奇襲するなどの身体変形攻撃ができる。
領域展開
「そこに立つんは 俺や!!!!!」
時胞月宮殿(じほうげっきゅうでん)
第3形態にして遂に到達した呪術戦の極致。印相はおそらく伎芸天印。
外観は巨大な眼の付いた膣・子宮・卵巣が浮かんだ黒い空間。
引き込んだ相手には投射呪法の「24分割した動きの強要」「失敗すれば1秒間フリーズ」が必中化するのだが、呪術的には一つの領域とされる相手の体内に直接作用させる能力である為に、投射呪法をフィルムという形で具現化して直接相手の身体に打ち込むという仕様なのが特徴。
領域による術式の強化でその術式対象はより細かくなり、細胞1つ1つに対して1秒間フリーズが適用される。一度体を動かせば細胞1つ1つの動きがずれてそれだけで瀕死状態になる上に、大きく動けば動かした部位が千切れてしまうなど、領域内にいる全ての対象者が自動的に行動不能になってしまう。
作中でも久々に登場した“必中必殺の領域”の1つで、領域対策が無ければまず詰みなのは言うまでもないが、簡易領域などの領域対策があったとしても対処が間に合わなければ、簡易領域展開の為の手印を結ぶ動作で体が自壊してしまうという、極めて凶悪な領域であると言える。
また、細胞レベルのズレを反転術式で修復できるのかは不明。いずれにせよ千切れて無くなった部位の再生は反転術式でも困難なので、反転術式持ちでも対応は難しいと思われる。
ちなみに展開後の台詞から初めて領域展開に成功したらしく、展開直後は本人も領域の能力を把握していなかった模様。
余談
- 呪霊化してすぐに真希の前に現れる程に、真希に対して強い執着心を見せている事にファンからは「甚爾の限界オタクの次は真希の限界オタクか!!」「真希ちゃんのストーカーやん」と粘着系ストーカーとしてネタにされている。
- 第一形態は一部のファンからは「芋虫直哉」の愛称で呼ばれている。
- 第二形態は骨ばった外見の為、一部のファンからは「骨哉」と呼ばれている。また、女性器に見えるという指摘もある。しかも実際に後に登場した領域の中身は女性器が浮かんだ心象風景だった。この女性に対する執着は、直哉が女性蔑視的な態度をとっていた事と何か関係があるのだろうか?
- ファンブックによると呪霊の強さは生まれた時から決まっており、陀艮のように変態を遂げるタイプですら珍しい。第3形態まで獲得している直哉がかなり異質である事が窺える。
- 顔に6つの穴があるが、直哉が左右の耳につけているピアスの合計数と一致しており、前述のコガネに対する口調も合わせて初登場時点で「正体は直哉なのでは?」と一部から考察されていた。
- 前述した通り彼が何故これ程までにはっきりとした自我と人格と記憶を保ったまま呪霊化したのかは謎であり、さらに何故真希のいる桜島結界にピンポイントで辿り着けたのかも不明。呪力を持たない真希は観測ができない筈だが…
関連タグ
祈本里香…人間が死後呪いへと転じた類似例。
真人…外見が人間型の特級呪霊で、手で触る事で発動する術式を遠隔で必中させるというよく似た仕様の領域を持っている。ただし直哉が最終形態で人間型になったのに対して、こちらは最終形態で見た目が完全に人外化したのが対照的である。