概要
周囲の空気よりも密度の小さな気体を袋に詰め、宙に浮かせるもの。
一般に「気球」と言うと、
- 人が乗るための(熱)気球
- 気象観測用の気球
のいずれかを指すことが多い。
広義には、動力の具わった飛行船や、玩具としての風船をも含めることがある。言語によっては気球と風船を同じカテゴリーに入れており、例えば英語ではどちらも「baloon」である。
人が乗れる飛行物体としての歴史は古く、気球による有人飛行が成功したのは18世紀後期、アメリカ合衆国の独立とほぼ同時期でフランス革命より前である。しかし、移動の際には進路が風で大幅に制限されるという弱点があり、交通手段として大規模に使われる事はなかった。
構造
まずは人が乗る熱気球について説明する。
大まかに言って、熱した気体を入れて浮力を得るためのバルーンと、バルーンの下側に取り付けられた、人や物が乗るためのゴンドラとにわけられる。熱い空気を作るためのガスバーナーはゴンドラに積載されている。
ゴンドラには浮力を調整するための重りと、地上とつながるためのロープが備わっていることが多い。
水平移動のための動力(エンジン、プロペラなど)は設置されていないことが多い。
トラブルに対してある程度の復帰策を講じる事が出来る反面、常に人の手による柔軟な操作を必要とする。
このように安全性などの面から有人の気球は熱気球が主流となるが、比重の軽い気体を用いるものもある。主に航空機的な実験や「無茶な冒険」に用いられ、破裂に備えて幾つもの小型気球をゴンドラに繋げ、予備の気球やヘリウムガスボンベなども積み込んでいる。安全性や操作性に欠けるが、高高度での長期滞在に適している。
気象観測用などの無人の気球は逆に、比重の軽い気体を気密性のある袋に詰めた物を使用する。これは気球の内圧を適度に保つ弁を装備するだけでかなりの高度がとれ、さら極論を言えば万が一事故が起きても、落下地点さえ問題無ければそのまま落としても何の人的被害もないためである。
また観測終了後に自由落下することが織り込み済みで、落下傘などが取り付けられた物もある。
気球の下にはゴンドラの代わりに測定機器が取り付けられている。
主な利用
観光地やイベント会場で、展望台や観覧車の代わりに高いところから景色を眺めるのに利用される。
空中を漂う楽しさのため老若男女を問わず人気があるが、浮かんでいる間は客やスタッフの乗り降りができないので、利便性に欠けるという問題がある。
また気象観測用の気球は、高層の空気の温度・湿度や風向を調査するのに用いられる。
比較的低層の気象を観測する場合は地上からケーブルなどでつないで飛ばすが、高層の気象を観測する場合、ケーブルなしで自由に飛ばして観測するので、かなりあちこちへ飛んで行ってしまいやすい。日本より西にあり、成層圏のジェット気流の風上にあたる韓国や中国などから時々流れ着く怪しげな物体は、この気象観測用の気球が飛ばされてきたものが多い(もちろん日本でも気象観測用気球が飛ばされてしまうことはある)。
最近になってアメリカにも中国から気象観測用の気球が流れ着いたことがあったが、その時にアメリカがとった対応はF-22に搭載した空対空ミサイルによる撃墜というものであった。
(中国側は『あくまでも気象観測用であり、そちら(アメリカ)に漂着した事については誠に遺憾に思っている』と釈明したが、当のアメリカ側は中国側の説明について全く信用しておらず、それどころか『これは軍事用のスパイ気球に違いない』と判断した結果上記の行動に出たものと思われる)
過去の利用
飛行船や飛行機が登場するより前は、上空から観察するためのほぼ唯一の手段であったため、軍隊などによる偵察によく使われた(吹き流されては困るため、この場合は大抵、地上から係留されている)。
爆撃機の爆撃高度がまだ低かった頃には、水素入りのガス気球で爆撃を妨害する阻塞気球を係留して防御することができた。
日本の風船爆弾や、イギリスの気球爆弾(→Wikipedia「アウトワード作戦」)は、気球を無人遠距離攻撃に使った例である。