概要
週刊少年マガジンで連載されていた少年漫画。及び、美堂蛮と天野銀次の二人が生業とする奪還屋の呼称。
通常「ゲットバッカーズ」とはこの二人を指す。
新宿路地裏の更にずっと奥にあると言われるスラム街「裏新宿」を舞台に、
「奪(と)られたものは奪(と)り還(かえ)す」が信条の奪還屋『GetBackes(ゲットバッカーズ)』こと美堂蛮と天野銀次が繰り広げる、笑いあり涙ありお色気ありの冒険と超能力バトルを描いた活劇。
…というのが序盤の内容だったが、この手の作品によくある作風の変化は次第に顕著になっていった。
人情ドタバタお色気アクションのノリは控えめになっていき、様々な超能力者が立ち塞がる純粋なバトル漫画へとシフト。
最終的には異様にスケールの大きい能力の応酬となり、人類史上最もインフレした漫画とも称されるほどパワーインフレが激しくなったことでも知られる。
それでいて、シナリオには破綻をきたしていない(ついでに言うなら書き込み量もすごい)のは本作の特筆点である。
- 物語再序盤は護り屋・菱木竜童とデッドヒートを繰り広げる程度だったが、蛮が最強ポジションを確保していた。その後「最凶最悪の運び屋」こと赤屍蔵人が登場、物語中盤までは蛮と銀次との三強で競い合う様相だった。「魔里人編」では本気を出した蛮と互角にやりあえる敵が現れ、その後の「オウガバトル編」で「『ベルトライン』の層に住む人間はそれだけで強さの次元が違う」という設定によりモブキャラ(雑魚キャラ)が本気を出した蛮よりも強くなり、それも数話でベルトラインでの戦い方を覚えた蛮がそれらを一蹴出来るレベルになり、その後は様々な超能力者が立ちはだかり…と、編を重ねるごとに壮絶なスケールアップを果たしていく。
- その一方で、インフレ後も最強に近い主人公コンビがその辺のヤクザに一方的にボコボコにされるネタ描写だけは序盤から最終盤まで続いており、「この漫画のパワーインフレの頂点にいるのはヤクザ」と冗談半分で語られることも多い。酷い時には宝石泥棒の猿(本作では動物使いとして強ポジにいる士度が操る動物は激しく強くなるが、この猿は特に操られていない野生の猿)に重傷を負わされることも。
インフレ度合い
初期:特殊技能を扱ったバトル
中期:異能力バトル
後期:魔法バトル(比喩とかではなく本当に魔法を使う敵が現れ、主人公達がそれに対抗するために魔法を習得しだす)
末期:ドラゴンボールまたはそれ以上。物語末期の強者同士の戦いとなると、速すぎて何が起きてるか分からず、読者もヤムチャ視点になる(速すぎて動いてないように見えるだけで、小石を投げると何も無いところで石が砕けるレベル)。
結末:バトルを超えた何か
登場人物
奪還屋GetBackers
新生VOLTS&VOLTS四天王
- 風鳥院花月(CV:保志総一朗)
- 冬木士度CV:星野貴紀)
- 来栖柾(CV:堀秀行)
- MAKUBEX(CV:斎賀みつき)
- 筧十兵衛(CV:子安武人)
- 笑師春樹(CV:真殿光昭)
- 雨流俊樹(CV:小西克幸)
- 筧朔羅(CV:岩居由希子)
無限城の人々
- 鏡形而 / 加賀美京司(CV:櫻井孝宏)
- 天子峰猛(CV:三木眞一郎)
- デル・カイザー
- 氏家火生留(CV:雪野五月)
- 叶条夜(CV:宮田幸季)
- 翳沼沙羅衣(CV:田中秀幸)
- 呪術王
- 間久部
- 黒鳥院夜半
- 東風院祭蔵
- 黒鳥院舞矢
- 黒鳥院遊利
弥勒一族
運び屋
『神の記述』関係者
魔里人
鬼里人
- 兜
- 女郎蜘蛛(CV:兵藤まこ)
- 霧人(CV:竹若拓磨)
- 鬼蜘蛛(CV:郷田ほづみ)
- 影蜘蛛(CV:甲斐田裕子)
- 飛蜘蛛(CV:本多陽子)
- 毒蜂(CV:本田貴子)
- 深山幻舟(CV:黒田崇矢)
- 無明院賽蝶(CV:てらそままさき)
- 揚羽(CV:篠原恵美)
- 紫丸(CV:津田健次郎)
- 白紋(CV:小杉十郎太)
- 湖柳水爬(CV:遊佐浩二)
- 鎌多十郎(CV:江川央生)
- 奏蝉丸(CV:高木渉)
その他の人物
- HEVN(CV:夏樹リオ)
- 王波児(CV:松本保典)
- 水城夏実(CV:乙葉)
- 仙洞レナ(CV:斎藤千和)
- 音羽マドカ(CV:松岡由貴)
- 不動琢磨(CV:田中正彦)
- 菱木竜童(CV:志村知幸)
- クレイマン(CV:緒方恵美)
- 螺堂源水(CV:佐藤正治)
- 螺堂レン(CV:中西裕美子)
- 工藤邪馬人(CV:藤原啓治)
- 春龍華
- ラッキー
- 風鳥院拾参絃
- 卍一族
用語
裏新宿
新宿の路地裏をずっと行った先にあると言われる、新宿の「裏側」とも言える日本のスラム街。
物語が展開する中心となる場。最奥部には街の象徴である巨大な廃墟ビル・無限城が聳え立つ。治安は劣悪。
無限城
裏新宿の中心にある、高層ビルの廃墟群によって形成された城。ストーリー上重要な場所。
その治安は裏新宿でも最悪。モデルはかつて香港にあった九龍城。
地下、城下町、下層階(ロウアータウン)、中層階(ベルトライン)、上層階(バビロンシティ)に分かれる。
後半では最早哲学レベルに巨大化する。
VOLTS(ボルツ)
かつて無限城下層階(ロウアータウン)にあった、リーダーの雷帝・天野銀次と四天王を中心とするジャンク・キッズグループ。最強最悪と恐れられたが、天野銀次が無限城を出て行くことで解散となった。
裏稼業
表の仕事ではない、裏の世界の職業。登場する多くの人物はこれを仕事としている。
奪還屋、運び屋、仲介屋、探し屋、奪い屋、案内屋、始末屋など。
本編の重要なネタバレ
この物語の舞台は、本来の現実世界の「バックアップ」として創られたセカイである。
物語の途中から、舞台が仮想現実の世界であることは示唆されていたが、中盤までは「無限城の中だけが仮想現実(創られた世界)である」かのように描かれていた。しかし実際は「無現城のみならず、無限城の存在する世界全体が仮想現実だった」ということ、そして無限城の頂点にあるとされてきた「バビロンシティ」こそがいわゆる「現実世界」だった、という事実が最終盤で判明する。
別の世界には裏新宿ではなく新宿が存在し、異能力といったものも存在しない。それは所謂、この記事を読む我々の世界に酷似している世界である。
バックアップのセカイを創ったのは、現実世界で息子「天野銀次」を亡くし抜け殻のようになっていた女性科学者・天野博士。クローンは技術的には可能でも社会的に認められておらず、また例えクローンを造ったとしても「無限に折り重なる偶然が世界を創りだしその結晶が一人一人の人間なのだとしたら、それは同じ遺伝子を持った別人である」という結論に至る。
天野博士はこの難題を乗り越えて銀次を蘇らせる"知恵"として、世界そのものをもう1つ創る、すなわち世界の複製品である現実世界のバックアップの作成を考案する。まずはじめに世界を構成するあらゆる可能性・構成・混沌さえも取り込み自己開発していける電脳倉庫『アーカイバ』を設計する。その設計とコンセプトが出来上がった頃、世界の崩壊と消滅がそう遠くない未来に訪れると判明したこともあり、世界の最高頭脳の殆どがこれに賛同した。結集した天才達は「頭脳集合体(ブレイントラスト)」と名付けられ、あらゆる分野からアプローチして人間の願いそのものが世界を創るという「意思の力」という答えを導き出す。
ブレイントラストは、全人類に絶望とほんの少しの希望を植え付け、全ての意思を統一して収斂させることで、もう1つの世界を創る原動力を生み出す。その過程で、赤屍のように超越者として覚醒する者が現れだした。
若き天才科学者である加賀美京司が発見した「魔鏡効果」の理論のもと、天野博士が創り出した「アーカイバ」の実態に、あらゆる分野の最高頭脳と最高の力が結集し、もう1つの世界・・この漫画本編の"セカイ"が誕生した。最初は単なる混沌であったそれは凄まじいスピードで成長し、現実世界が辿った全ての歴史をなぞりながら歴史を生み出していった。
しかし、ある時点からそのセカイは現実と異なった歴史を辿り始め、この世界に似て否なる独立したセカイとして勝手に成長していった。その結果、現実とは違う法則が存在し、現実世界では起こり得ない現象が平然と起こるセカイとなっていった。それは最早バックアップにはなり得ない似て非なる何かと成り果てながら、時間軸的に現実世界に追い付くところまで来てしまった。もし現実がこれに追い抜かれれば現実がかき消されうることから天才達は焦り、修正を図ったが既に時は遅くどうにもできなかった。そこで加賀美京司(セカイの中では鏡形而と名乗っている)などを「観察者」としてセカイの内部へと送りこんで干渉を試みたが、結果セカイに取り込まれ、帰還すらできなくなってしまった。
そして、本編終盤の話に繋がる。
捻くれたセカイの発展を止める最終手段として、セカイを初期化し、もう一度混沌から創り直すしかないという結論に至る。そのためのロジックをアーカイバに命令し、セカイ側から自己初期化プログラムを発動するように試みる。その際、その実行の実体としてセカイの頂点に立つ1人の「創造者」を選択し、その手によってセカイをあるべき姿へと再構成させようとしたのであった。物語終盤に読者置いてきぼりで唐突に始まった「悪鬼の戦い(オウガバトル)」とは、この「創造者」を決めるための予定された戦いであった、ということになる。
なお現実世界とセカイの歴史にズレが生じたのは、蛮の祖母である「ウィッチクイーン」と呼ばれた反逆者と、それに力を貸すブレイントラスト内の裏切り者達によるテロ行為が原因だった。要は、蛮と銀次の最後の戦いは、バックアップのセカイを現実とは異なるそのままの形で存続させようとするウィッチクイーンサイドと、セカイを現実世界と同じものに修正したい天野博士サイドの代理戦争であり、蛮と銀次はその主導権争いの"駒"のようなものであったことになる。最終的に銀次(天野博士サイド)が勝つのだが、銀次がゲットバッカーズのセカイのままセカイを確立させてしまった、という話となった。
「神の記述」などは世界のルールを壊すためにウィッチクイーンが用意したもので、簡単に言えば、
- 世界がファンタジーしてるのは全部蛮の婆ちゃんのせい
- →そんなハチャメチャな世界はバックアップとして成り立たないから天野博士達は何度も修正を試みる
- →蛮という異物が邪魔して修正は上手くいかない
- →もうすぐ干渉出来なくなるから1度世界を初期化するしかない
…ということ。ただ、蛮の祖母が何故計画を邪魔したのかは不明。作中でその目的・心情は一切語られることはなく、テロリストということしか分からない。
蛮の祖母はバックアップが成り立たなくなるよう歴史改変などメチャクチャな干渉をしている(歴史が変わるどころか魔法や異能力や超人が当たり前になるレベル)が、現実世界とバックアップのセカイをどうしたかったのか、考察しづらい。人類滅亡がそう遠くない未来に起こることからあらゆる科学者が手を貸してくれた計画であり、それに抗う行為は現実の人類の滅亡を確定させようとする行為にも近い。逆にバックアップのセカイの方を重んじてるかというとそうでもなく、そもそも銀次達のいるセカイが消滅(初期化)することになったのは蛮の祖母が干渉したせいであるので、結局やっていることは両方の世界を破滅させようとしていただけである。博士サイドが悪役みたいに描かれているが…………ぶっちゃけ蛮の婆ちゃんが全部悪い。
作中でMAKUBEXが「裏新宿が自分の知らない街並み(読者のよく知る「新宿」の街並み)になってしまう」という夢を見て怯えていたが、これは作中の世界が読者のいる世界と同じものに修正されようとしている暗示である。
・・結論から言うと、本作は「人情ドタバタお色気アクション」と見せかけた「異世界ファンタジーバトル漫画」とみせかけた「SF漫画」であった。
良い意味でも悪い意味でも世界観にとらわれていない漫画であり、これがインフレの主な原因。唐突な超展開を超難解な理屈で考えることを封殺してくるため、理解が追い付かないのに物語に順応しながら読むことが出来る。後々、単行本を読み返し、1つ1つ整理しだすとツッコミどころが多い…ただし、ちゃんと説明付けされているので話に矛盾はない。
アニメ
2002年10月から2003年9月まで全49話がTBS系列(ただし新潟放送、山陰放送、熊本放送、大分放送、宮崎放送、琉球放送除く)にて放送された。
当初はIL編で終了する予定だったが、予想以上の人気を誇ったため、それ以降のビーナス編、神の記述編の一部(雨流の箇所のみ)などもアニメ化された。アニメーション制作はスタジオディーン。
主題歌
オープニングテーマ
「揺らぐことない愛」(第1話 - 第25話)
作詞 - 田村直美 / 作曲 - 田村直美、川本盛文 / 編曲 - 川本盛文 / 歌 - 田村直美
「薔薇色の世界」(第26話 - 第49話)
作詞 - キリト / 作曲 - アイジ / 編曲 - PIERROT & MASAHIDE SAKUMA / 歌、演奏 - PIERROT
エンディングテーマ
「一秒のリフレイン」(第1話 - 第13話)
作詞 - 乙葉、堂島孝平 / 作曲 - 堂島孝平 / 編曲 - 長谷川智樹 / 歌 - 乙葉
「涙のハリケーン」(第14話 - 第25話)
作詞 - PANINARO 30 / 作曲 - 徳永暁人 / 編曲 - 清水俊也 / 歌 - BON-BON BLANCO
「Mr. deja vu」(第26話 - 第37話)
作詞 - YURI / 作曲 - オオヤギヒロオ / 編曲 - 宗像仁志 / 歌 - naja
「CHANGIN'」(第38話 - 第48話)
作詞 - 西寺郷太、竹前裕 / 作曲 - 西寺郷太、奥田健介、小松茂 / 編曲 - NONA REEVES、門倉聡 / 歌 - NONA REEVES feat. YOU THE ROCK☆
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