概要
英名はCamel spider;Wind scorpionだが、蜘蛛や蠍から独自に分類されたクモ綱動物で、1100種以上が知られる。
一般的に目にするヒヨケムシは、全身がクリーム色で、短めの体毛が生えている。
8本足であるが、前方の触肢(昆虫の触角にあたる)が発達しているため、ぱっと見ると10本足に見える。また、多くのクモ綱動物の頭胸部は1つ殻に融合したが、ヒヨケムシの頭胸部はある程度まで節に分かれるのも特徴である。
そして中でも特に目に付くのが、その最大の特徴とも言えるくちばしのような顎(鋏角)だろう。
その奇妙な姿から、日本ではウデムシやサソリモドキと並んで「世界三大奇虫」と呼ばれる。
生態
昼行性の種類もあるが、多くの種類は夜行性で、日中で石の裏返しなどにより太陽の下で晒すとすぐ影のある場所へ向かって走り、正に「日避け」である。
食性は肉食で、ほとんどの種類は乾燥地帯に住む。
毒は持たないが、苛酷な環境に適した獰猛さを持っており、脚が非常に速く、昆虫;クモ;サソリの他にも小型の脊椎動物も襲って食らうこともある。強大な鋏角は勿論、その長い触肢の先にある吸盤も獲物を確保する強力な武器である。
しかしながら体の殆どの部分は無防備で柔らかく、ヒヨケムシ自身も捕食者に狙われやすい。
多くのクモ綱動物と同様、獲物の体液しか呑めないので食事の最後は必ず遺骸が残されたが、ヒヨケムシはその体液を搾り出すため、大きな鋏角で獲物をぐしゃぐしゃな肉塊になるまで咀嚼するので食事はかなりのエグイ絵面になる。
また、その乱暴な繫殖行為も注目されている。多くの種類から交接直前にオスがメスの腹部と生殖孔を噛むようにマッサージする行動や、交接失敗による共食いも確認される。メスが交接直前から麻痺されたように動けなくなる状態に入るという現象がある。
なお、ヒヨケムシに関する研究は非常に少なく、その生態は今も多くの謎に包まれていれる。
人間との関わり
あらゆる噂で誇張されたが、基本的には無害な動物である。人間を自発的に襲うことはしないが、活発な捕食者であるため、下手に手を出すと防衛行動として噛まれる危険性があるため、注意すべし。
上述の日当りを避ける習性から速い動きに加えて、人の影を追い掛けて「襲い掛かる」と勘違いされることもある。
一時期、巨大ヒヨケムシの画像がネットに出回ったことで一躍有名になって、それから「人喰い」や「猛毒クモ」など様々なデマがネットで広く流された。
屈強な兵士が宿舎内でこれと遭遇し、悲鳴を上げて逃げるという微笑ましい?映像が見られることも。
稀にペットとして流通するが、不明点の多い生態からか、長期間の飼育が大変困難であり、1年ほどで死んでしまうことが多い。