「いい目ぇしてやがんな。一体、誰を斬りてえんだ?」
概要
剣神流剣士の頂点に立つ「剣神」。世界で最も強い七人の戦士・七大列強の第六位。
剣神流の本拠地である剣の聖地の本道場で剣術を教えており、2人の剣帝やギレーヌの師匠でもある。
若いときに龍神オルステッドと交戦経験があり、その際の敗北から強さを求めて剣神にまで上り詰めたという過去を持つ。
ルーデウスと別れギレーヌに連れられて自らの下に来たエリスの、龍神オルステッドを斬りたいと言う言葉を聞いて、彼女を気に入り直弟子とした。
なお、エリスが来るまで直弟子を取ったのはギレーヌが最後だった。
ファリオン姓であるが、初代剣神アル=ファリオンとの血縁関係はない。
人物像
狼のような容貌の中年男性。
「俺様」という尊大な一人称に現れるように、傲岸不遜な態度を微塵も隠さない。
短気で効率性を追求する性格なため、無駄なことを嫌う。
しかし、悪童で村から追い出されたギーレヌを引き取って教育したり、見込みのあると思った相手にはしっかり指導し発破を掛けたりと面倒見がいい。
名声やそれに伴う権力・金銭などには興味がなく、剣術はただ強くなれればそれでよく、その強さでわがままを通すことが生きることだと考えている。
強くなるためには飽くなき欲望が必要だという持論を持ち、それに反する弟子たちには内心失望している。
自信家のように見えるが、弟子たちには「合理を突き詰めれば自分は超えられるが、龍神オルステッドのような合理の外側にいる相手には勝てない」「もうちょっと自分に正直になれば俺程度簡単にぶっ殺して剣神を名乗れる」と語っており、自分の実力が列強上位のような「人知の及ばぬ本当の化け物」には遠く及ばないのは理解している。
剣術以外を身につけない剣の聖地の剣士の例に漏れず、読み書きは出来ない。手紙を出す際は代筆を頼んでいる。
また珍しい剣の収集が趣味で、所有する魔剣は「剣神七本剣」と呼ばれている。自身の愛剣もそのうちの一本であり、他の魔剣は王級以上に到達した弟子たちに餞別として渡している。
戦闘能力
三大流派最強と謳われる剣神流の頂点に立つだけあって、「当代最速の男」と称される純粋な人族最速の剣技を誇る実力者。弟子である剣帝二人を同時に相手にして圧勝し、ギレーヌの反応速度を上回って剣を突き付けるなど、帝級以下とは文字通り格の違う存在である。
同じ神級剣士である水神レイダ・リィアを相手にしても7割方は勝てるなど接近戦においては世界屈指の実力だが、防御力が低いので三大流派の長で唯一ルーデウスの遠距離からの広範囲魔術を防げない。
また剣神流の熟練度や速度に関しては龍神オルステッドに劣り、ラプラス戦役以前の下位列強のように赤竜の群れには対処できないなど、あくまで現代の剣士の基準の中で最強であって本当の意味でのトップクラスとは隔絶した力の差がある。
その戦闘スタイルは剣神流の基本に忠実な先手必勝タイプ。水神レイダ・リィアでも受け流せない剣速で大抵の相手には先手をとれると、相手よりも先に剣を当てれば勝てるという剣神流の理念を体現した存在と言える。
他の流派にも適性があり、水神流を鍛えれば帝級相当にまで習得できるとされる。
ただし剣神流を背負っている立場故にそれらの技を使用することはなかった。
使用技
- 光の太刀
剣神流奥義。両手を使って全ての闘気を注ぎ込み真っすぐに斬るという技。ガルは上段からの最速の一撃、中段からのどんな状況でも使える一撃、居合で相手の理合を見切る一撃と剣神流に伝わる3つの型すべてが使える。
- 流
水神流の基本技。一応使えるが慣れていないので、使った後の二太刀目の速度は大幅に下がる。
装備
- 喉笛
綺羅びやかな鍔と金色に輝く刀身を持つ片刃の剣。魔界の名工ユリアン・ハリスコが王竜王カジャクトの骨から鍛えた48の魔剣の一振りである。
ガル・ファリオンが初めて入手した魔剣。
作中の動向
エリスを弟子にして自ら鍛えるとともに、剣の聖地に各流派の実力者を招いて修練を積ませた。これはあらゆる剣技に精通するオルステッドに対抗するための措置である。
そして5年の修業を終えたエリスに剣王の称号と剣神七本剣の一振りである「鳳雅龍剣」を授け、免許皆伝とした。
エリスを送り出したのちも自身は剣の聖地に留まり続けている。
関連人物
弟子。龍神を倒すという夢を託した。しかし、強さ自体を求めるガルと、ルーデウスを守るために強くなりたいエリスとでは求めるものが違い……。
- ニナ・ファリオン
娘。剣神流の門下であるが、実際に指導したのは剣帝の一人である。
短気で過激に見えるが意外と常識人と性格はガルに似ている。
- ジノ・ブリッツ
甥。才能は評価しているが「言われるままに動く主体性のない男」と酷評している。
若い頃からいつか倒したいという執念を募らせていた相手。剣神になった後はある事情から挑むことを考えなくなった。
弟子。「人の世界で生きたければ人のルールを守れ」と悪童だった彼女に教育した。
結果、「餓えた虎から牙の抜けた子猫になった」と教育に後悔している。
ネタバレ
以下ネタバレ注意
「自由に生きた奴が強ぇのは、いいなぁ……」
エリスがルーデウスと結婚したことに影響を受けたニナとジノが結婚を望み、自分に勝てなければと認めないと返し、それをきっかけに成長したジノに敗北、「剣神」の称号を失う。
そして剣の聖地を出て放浪していたところをギースに勧誘されて、龍神オルステッドと戦う機会を求めて彼に協力する。
決戦ではエリスとルイジェルドの二人と交戦。
確実に勝つため水神流の技を使うも、その影響で剣速が落ちた二撃目をルイジェルドに防がれた隙にエリスの剣で両断された。
光の太刀で勝負できなかったことで自分がジノに負けたことで剣神としての自信を失ったこと、そして剣神という立場に捕らわれて弟子たちに教えていた「欲望のままに剣を振るう」ができていなかったことで自分が弱くなったことを理解した。
最期に「喉笛」をエリスに渡し、自由に生きるエリスを称賛して息絶えた。
この時のエリスとルイジェルドの実力は帝級相当で、ガルの初登場時に剣帝2人を軽くあしらっていたことを考えると、光の太刀で斬りかかっていれば楽勝だったはずである。
確実に勝つためと言えば聞こえが良いが、結局のところ自分が人生を使って磨いてきた技で勝つ自信がなく、小細工に逃げただけでしかなかった。
傲岸不遜な態度だったが、ギレーヌにルールを守るように教育したり、腰巾着のような態度の剣聖たちに対しても見下しつつも指導はしっかりするなど、その本質は真面目な常識人と言える。
そのため剣神という立場に捕らわれて弟子の指導や道場運営など剣神流のために動き、いつしか本当に自分がやりたかった龍神オルステッドに挑むことさえ考えなくなった。
そして剣神の立場から解放されたときには、自分の実力に自信がなくなって口で挑発し他流派の技を使うなど小細工に頼り、それが敗因になるなど、本人も自虐すらできない落ちぶれた有様だった。
関連人物(ネタバレ)
ルーデウスが龍神配下になったことで龍神側に協力しガルと敵対。挑発の際はそのことを責めたが、そうしたしがらみにも何も縛られない生き方はガルにはできず最期に称賛を送る。
- ジノ・ブリッツ
ニナと結婚の条件としてガルを倒すように言われ実行。剣神になった後は生前のガルの教えを守って自分のやりたいこと以外は何もせず、門下生にも何も教えない。
協力者。彼の口車に乗ってヒトガミ側の協力者として動くことになる。「このままでは終われない」というギースには共感していた。