レイヴン、奇麗な花火ですね
登場
事件が起きたのは2023年8月18日、19時30分よりライブ配信された、トーク番組『PLAY! PLAY! PLAY!』の特別回、『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON SPECIAL BRIEFING』の最終盤、観客席のファンから一名を抽選により選出し、非売品の限定Tシャツを賭けてこの日初公開となる打ち上げ施設防衛ミッションに挑戦してもらおうという企画である。
抽選によって選ばれたのは渋谷から来たという男性。
オンラインで常用しているというユーザーネーム『ファイアーワークス』を名乗り、豊富な過去作のプレイ経験を披露し、「今までの経験を総動員して頑張りたいと思います」と謙虚に意気込みを語ってコントローラーを手にした。
そして告げられた追加条件が、「アセンブル(機体組み立て)の制限時間は1分」という厳しい時間制限である。
経験者には常識であるところだが、アーマード・コアシリーズに於いてアセンブルはミッション成功率に大きく関わる。
パーツの選出によって機体の性能が大きく変わるため、要件をしっかり吟味した上で慎重にパーツを選出するのがこのシリーズに於いては必須の作業であり、シリーズの本質であると言ってもいいかもしれない。それを1分でやれというのだからただごとではない。
ファイアーワークスも条件を突きつけられた際には驚く素振りを見せたものの、いざアセンに取り掛かると淀みない動きで次々にパーツを選出していく。
(後のインタビューに寄ると)押し寄せる多数の敵を相手取らねばならない点から弾数に秀でたガトリングを両手に二門、操作への不慣れもあって被弾が増えることを考慮し装甲を盛り、ジェネレーターもしっかり吟味したファイアーワークスは、無事アセンを完了する。
戦闘開始
戦場に降り立つや否や打ち上げ施設に取り憑いていた敵を蹴散らしたファイアーワークスは、準備運動とばかりに(実際挙動を確認する意図があったと思われる)発射施設内を飛び回ると、続く敵の出現に対し大きく前進、防衛目標から離れて敵を積極迎撃する戦術を取る。
ヘリボーンを目論む敵空挺部隊の大部分をヘリごと叩き落し、辛うじて降下に成功した敵も抜け目なく仕留めていく容赦の無さ。
最初は放送事故を避けられて安堵していた様子のMC陣も、ファイアーワークスのあまりの活躍にたじたじであった。
そうして危なげなく防衛を達成していると、ミッション終盤、突如として空中戦艦が出現する。
いきなりの強敵出現にさすがのファイアーワークスも焦りを見せ、有効射程外からの攻撃で無駄玉を使ってしまう。
どうにか調子を取り戻し、間合いの内側に潜り込むも、両手のガトリングは共に弾切れとなりパージされ万事休す。
するとファイアーワークス、吶喊して甲板に乗り込むや空いた両手で艦橋をタコ殴りにし始める。
さしもの空中戦艦といえど艦上への攻撃手段は乏しく、有効な反撃もされないまま艦橋を粉砕されてあえなく轟沈、華麗に地上に舞い戻ったファイアーワークスは、消化試合とばかりに残敵を掃討すると、無事に打ち上がったミサイルを見送ってプレイを締めくくった。
注目点
- カウントダウンを引き伸ばすMCの配慮を突っぱね自らアセンを切り上げたプロ意識
- 両手2丁持ち故のシンメトリーで美しい機体のフォルム
- ACVDで染み付いた操作がうっかり出てしまう茶目っ気
- アサルトブースト、パンチなどACVIの新要素がふんだんに盛り込まれたプロモーションとしての完成度
- ばっちり勝利演出を捉える見事なカメラワーク
- 強敵を前に弾切れしてしまうものの徒手空拳で食らいつく熱い展開
- ナレーターの奇麗な花火ですねというあまりにも出来すぎなセリフ
エピローグ
ドン引きしていたMC陣がその後語ったところに寄ると、どうやらこの企画はそもそも失敗を前提としていたそうである。
無念の敗北に肩を落とすプレイヤーに、制作が助言を与えながら再度アセンのチャンスを与え、その後見事にリベンジを果たすことで「アセン次第でこんなに違うんですよ」と締めくくる腹積もりだったそうな。
ところが上述のようにファイアーワークスは、厳しい条件をものともせず、危うさを見せつつも初見でミッションを達成してしまったため、企画意図を見事にぶち壊し伝説を残したのであった。