概要
枢機卿(すうききょう、すうきけい、ラテン語:Cardinalis)とはカトリック教会において、最高指導者ローマ教皇の助言者たる高位聖職者。
正式な称号は「聖なるローマ教会の枢機卿」(Sanctae Romanae Ecclesiae cardinalis)である。枢機卿(カーディナル)という言葉自体はラテン語の「Cardo」(カルド―蝶番)に由来している。これには枢機卿が教会にとって蝶番のように重要なものという意味がある。敬称は猊下(げいか)。枢機卿の称号は終身であるが、何らかの理由(大抵は不祥事)による自発的な辞任は可能なほか、後述する教皇選挙の選挙権の年齢上限がある。
枢機卿は枢機卿団を構成しているが、三つの位階に分かれておりそれぞれ「司教枢機卿」「司祭枢機卿」「助祭枢機卿」という。
現代では概ね各地の教区司教が「司祭枢機卿」に、ローマで働く司教が「助祭枢機卿」に任じられる(ただしローマで働く者も「司祭」のほうに任じられる場合がある)。
残る「司教枢機卿」はローマ典礼系の定員が6名と決まっているためその空席を補任する場合に、既存の枢機卿の中から任じられていたが、枢機卿団の人数増加に対して定数増加が図られていなかったことや、既存任命者が全員長命でコンクラーヴェの議長役をできる者がいなくなる事態が生じたことなどから、2018年から増員が行われ、現在は10名程度で推移している。なお司教枢機卿は東方典礼の総大司教たちから枢機卿団に加えるべきと時の教皇が判断した場合にも任じられる。
現代において新規の枢機卿任命は後述する教皇選挙の制約である「80歳未満の者が120名以内」という上限から相当の解離(つまり数名~十数名の欠員が出る)が生じた際に行われる。年齢構成にもよるが、概ね1年から3年に一度程度の実施となっている(ただし2012年には2月と11月の2度にわたって任命が行われたこともある)。120名を超過する場合もしばしばだが、これは任命後に80歳になる枢機卿の数を見越してのこととみられる……
……はずだったのだが、2010年代末頃から、120名を超える状態が常態化しており、むしろ「120名に近づいたら増員して120名を切らさないようにする」という事態になっていて、2024年12月の任命ではついに140名を突破することになった(ただし2025年に10人ほど減る予定)。
なお、80歳以上の者も含めた枢機卿団自体の人数の上限はない。
任務
枢機卿の任命は教皇によっておこなわれる。教皇庁貴族ともいうべき枢機卿団は教皇の顧問団として二つの任務を帯びている。
- 一つ目は、教皇を補佐して教皇庁の運営に携わり、聖省の長官などの高級行政官として、あるいは教皇特使、すなわち教皇の名代としてバチカンの高級外交官としての勤めに携わる事である。
- 二つ目はさらに重要なことだが、枢機卿団が教皇選挙権を持ち、互選によって教皇を選出する務めを持っていると言う事である(教皇選挙をコンクラーベという)。ただし選挙権は使徒座空位発生日の時点で80歳未満の者に制限される。
これらと関連して、教皇没後の使徒座空位時や何らかの理由による教皇座空位時には教皇庁の運営を指導する役割も担う。使徒座空位時の枢機卿団の職務と教皇選挙の詳細については1996年に発布された使徒憲章『ウニヴェルシ・ドミニチ・グレギシ』で規定されている。
余談
枢機卿は紅い衣装を着ることで知られ、そこから真っ赤な鳥ショウジョウコウカンチョウは英語でカーディナルと呼ばれる。
アメリカ野球のメジャーリーグのセントルイス・カージナルスや、アメフトNFLに属するアリゾナ・カーディナルスの名前の由来は、この鳥のようにユニフォームが紅かったことに由来する。
関連タグ
リシュリュー(フランスの宰相も務めた枢機卿)