概要
サー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズ』シリーズに登場する。フルネームは「ジョン・H・ワトスン(ワトソン)」。「H」は、妻に「ジェームズ」と呼ばれた事があるため、「ジェームズ」と同じ意味の「ヘイミッシュ」だと推測されている。
従軍経験のある医師で、アフガニスタンで戦傷を受けて除隊後、格安で借りられる下宿を探していたとき、たまたまホームズと条件が一致するため、ベイカー街で同居することになった。神経質かつ病的な一面を持つものの、秀でた才能(相当偏っているが)と善良な一面を持つこの男と友人になる。そしてそんな矢先に、レストレード警部らの管轄で、奇妙な殺人事件が起こる。この事件でホームズの探偵としての才能に感嘆したワトソンは、ことの顛末を『緋色の研究』と名付け出版、こうして物語は始まる。
ホームズは「自分の事件をメロドラマ調に書くな」と文句を言いつつも、ワトソンの作家としての才能を認めている(「獅子のたてがみ」など)。実際、ホームズはワトソンをとても頼りにしているのだ。
ワトソンが銃撃を受けたさいは激しい心配を示し(「三人ガリデブ」)、医者としての彼の腕を信頼し(「ぶな屋敷」「バスカービル家の犬」ほか)、射撃の腕もあり(「バスカービル家の犬」ほか)、何度も命を救われている(「悪魔の足」「空家の冒険」ほか)、かけがえのない親友と思っている。
彼に向かって、本気なのかジョークなのか、「君の他に友人はいない」(「五粒のオレンジの種」)とまで言い切っている。
ワトソンも、ホームズの才能に敬服しているほか、彼が自分に対して抱いている感情に対しては感動すらしている(「3人ガリデブ」「悪魔の足」ほか)。
実際、死んだと思っていたホームズがいきなり目の前に姿を現したときは、驚きのあまり気絶し、そのあとで「幽霊」ではないようだ…。君が生きているなんてそんなことがありえるのか!?」と感動して叫んでいる(「空家の冒険」)。
ワトソン自身、ホームズがあまりにも個性が強すぎてわからないが、常識と教養を持ち合わせた人物である。彼の書き方が謙虚なのでわかりにくいが、初期の作品と比べて、彼の探偵的才能もかなりホームズの感化を受けている。
また、医師としての腕は確かで、開業後の彼の医院はかなり儲かっている。そして、ホームズが孤独を感じたときには、喜んで彼の相棒を務める(後述する通り、彼の妻もホームズを信頼しており、隣の医者と繁忙期に交代する契約を結んでいるためだ)。
生涯で二度の結婚をしている(1度目は「4つの署名」の依頼人、モースタンであり、結果的にホームズがキューピットとなった)。
推理小説界において、「探偵の相棒を務める作品の筆記者」は彼の名をとって「ワトソン役」と呼ばれる(そのポジションを作ったのはエドガー・アラン・ポーだが、彼の作品に登場するオーギュスト・デュパンの友人”私”には名がない)。
ワトソン役として有名なのは、アガサ・クリスティのヘイズディングズ大尉(エルキュール・ポワロの相棒)、シェパード医師、島田荘司の石岡和巳(御手洗潔の友人)、金田一耕助ものの作中における横溝正史などがあげられる。
関連イラスト
※ガイ・リッチー監督版