概要
「応天の門」とは、『月刊コミック@バンチ』(新潮社)にて、2013年10月より連載している日本の漫画。作者は灰原薬。第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作品。
主人公は学問の神様として名高い菅原道真と、百人一首「ちはやふる」の作者で歌人として有名な在原業平。基本的な流れは平安京に起こる数々の怪奇事件を検非違使(現代における警察)として活躍する業平が、若くして博識な道真の元に持ち込み、解決していくというもの。頭は良いが毒舌で人付き合いが苦手な道真と、人心掌握がうまく色男の業平の絡みが魅力的な作品。
菅原道真と在原業平が怪事件に挑むミステリーの中に、台頭する藤原氏勢力の暗躍を描く歴史ものとしてのストーリーも展開される。平安時代の話であるが、妖怪や幽霊の存在は本質の目くらましであり、謎解きは理論的に行われる点が特徴。一方でこの時代に台頭する藤原氏勢力の暗躍についても描かれており、道真、業平ともに藤原氏との過去の因縁が徐々に明らかになる。藤原氏と主人公二人がどのように絡んでいくかが数話完結のミステリーと並んで本作品の醍醐味となっている。
なお、「応天の門」は平安時代の事件「応天門の変」を意識したタイトルと推察される。
登場人物
菅原道真(すがわらのみちざね)
本編の主人公。文章生(平安時代の官吏養成施設最高機関・大学寮で学ぶ学生のこと)。学者を多く輩出する菅家の現当主菅原是善の3男。そのため友人の紀長谷雄からは「菅三殿」と呼ばれている。
また、屋敷の人間からは幼名「阿呼さま」で呼ばれることもある(本人はこの呼び方をされるのを子供扱いされていると取っているのか、あまり好んではいない様子)。
幼少の頃より学問の才に秀で、文学から地学、化学など様々な知識が豊富。一方人付き合いや遊びを面倒・馬鹿馬鹿しいと感じており、普段は自宅にこもって唐から伝わってくる書物を読みふけっている。
しかし業平の強引な誘いによって数々の事件と関わることで、知識を人のために使う喜びに徐々に目覚めるようになる。
自身も貴族であるが貴族達の権力争いに非常に強い嫌悪感を示すのと対照的に、庶民には平等な目線で接しようとする。
家柄でなく学問の実力で出世ができるという唐に対して強いあこがれを抱いている。
在原業平(ありわらのなりひら)
本編もう一人の主人公。平安時代の警察である検非違使を率い、都の警護を務める。平城帝の血を引くエリートだが、藤原家の勢力が強い宮廷内では権力の中心から外されている様子。歌人の才は都中が認めるところだが、同時に女性遍歴の多さも有名。そのため、過去に関係した女性がらみの事件に巻き込まれることも。
人心掌握に長けており、社交的で人脈も広いため、様々な人物から相談事を持ちかけられることが多い。道真の知識をかっており、都で起きる怪事件を解決するためだけでなく、知人からの相談事をそのまま道真に丸投げすることもある。
白梅(はくばい)
道真と業平が解決したとある事件がきっかけで、道真に仕えることになった女官。容姿は良くないという設定だが、漢学の知識は豊富である。情にもろい。道真のことを主人としてよく慕っているが、業平に対してはアイドルを見るような熱狂ぶりを示す。
紀長谷雄(きのはせお)
文章生。道真の数少ない友人。名門紀家のお坊ちゃんで惚れっぽく、遊ぶことが大好き。勉強嫌い。道真と性格は正反対で、遊びの誘いをいつも断わられているが、道真の周りをはなれようとしない。軽い性格が災いして失敗することも多い一方、一途で純粋な面もある。
島田宜来子(しまだのぶきこ)
道真の師である島田忠臣の娘。道真とは許嫁にあたる。学問ばかりの道真が相手にしてくれないのをさみしく思っている。感情表現ゆたかな行動派の姫君。