概要
刀剣の刀身を収めるための筒状の覆い。
当たり前だが、刀剣が刀身を晒したでほっておくのは大変危険であり、持ち運びに支障をきたす。
鞘はそうした刀身の危険性を封じ、装備者や周囲の器物やすれ違う人間に危害を及ぼさないためのものである。同時に刀身も自身よりも硬いものに当たれば刃が欠け、武器としての寿命が早めることになるので、そうした事態を防ぐ意味合いもある。
才質は木製や革製が多く、近代のサーベルなどは鉄やアルミニウムといった貴金属で製造されることが多い。
また、鞘と柄を日用品で改造物することで仕込み刀となる。
鞘は剣に優る
その機能上、力の象徴である『剣』を封じるため、「鞘>剣」とされる話は世界各国にいくつか存在する。
有名なものに『アーサー王伝説』に登場するエクスカリバーにまつわるものがある。
あるとき、魔術師マーリンはアーサー王に「剣が大事か、鞘が大事か」と問うた。アーサー王はそれに「もちろん剣にきまっている」と答えた。しかしマーリンはその答えを嘆き、「剣は確かに強いが、それを収める鞘はもっと重要だ。それは戦も治世も同じことであるとうのに」と諭したという。
こうしたエピソードから、鞘を『聖剣(魔剣)の力を補う充電器』としたり、鞘を用いることで剣が真価を発揮するようなファンタジーでの設定は多い。
鞘にまつわる言葉
元の鞘に収まる
悪化した状態が以前の安定した状態に戻ること。
特に人間関係において用いられることが多い。
略して『モトサヤ』。
『破れ鍋に綴じ蓋』と類義語で、恋愛関係で用いられることも多い。
鞘当て
ちょっとした諍いごとを起こすこと。
特に、一人の女性を巡って二人以上の男がその心を射止めようと争うこと。
歌舞伎から派生した言葉。
また、武士の矜持である刀に不用意に他人の刀の鞘が当たることは失礼に当たるため、ここからちょっとした原因で諍いが発生することを指すようになった。
居合
日本独自の剣術の一つ。
鞘に収まったままの刀を構え、そのまま抜刀とともに目標を斬り、鞘に戻すというもの。
白鞘
白木(余計な加工が施されていない木)で鞘と柄を拵えた日本刀を指す。
シンプルな見た目から、任侠者の武器としてよく登場する。