<< レイヴン、奇麗な花火ですね >>
(抽選 59:50ごろ~ / アセンブル 1:03:00ごろ~ / ミッション 1:04:40ごろ~)
登場
事件が起きたのは2023年8月18日、19時30分よりライブ配信された、トーク番組『PLAY! PLAY! PLAY!』の特別回、「『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』SPECIAL BRIEFING」の最終盤。
観客席のファンから抽選で一名を選出し、初公開となる「ミサイル打ち上げ施設の防衛ミッション」に挑戦してもらおうという企画である。成功すれば『非売品の限定スタッフTシャツ』を来場者全員にプレゼント、というプレッシャーが掛かる中で、抽選によって選ばれたのは「36番」。
登壇したのは渋谷から来たという男性。オンラインで常用しているというプレイヤーネーム「fireworks(ファイアワークス)」を名乗り、『AC』シリーズ全作品に触れてきたという情報が出たことで周囲の期待感が上がる中、「今までの経験を総動員して頑張りたいと思います」と謙虚に意気込みを語ってコントローラーを手にした。
このタイミングで告げられたのが、「アセンブル(機体組み立て)の制限時間は1分」という厳しい追加条件である。
経験者には常識であるところだが、『アーマード・コア』シリーズに於いては作戦に応じて機体構成を組み換えるアセンブルはミッション成功率を大きく左右する要素である。
パーツの選出によって機体の性能が大きく変わるため、作戦要件をしっかり吟味した上で慎重に機体を組み上げるのは必須の作業であり、シリーズの本質であると言ってもいい。先んじて開催されていた試遊会でも制限されていた初見同然のアセンブルを1分でやれというのだからただごとではない。
ファイアワークスも条件を突きつけられた際には驚く素振りを見せたものの、いざアセンに取り掛かると淀みない動きで次々にパーツを選出していく。
(後のインタビューによると)押し寄せるであろう多数の敵を相手取らねばならない点から、ミサイルは背部についてるからいいやとそのまま、弾数に秀でたガトリングを両手に二門、操作への不慣れもあって被弾が増えることを考慮して装甲を盛り(結果的に要らなかったですねwと言っていた)、ジェネレーターも比較検討した上で、時間内に無事アセンを完了してみせた。(残り5秒くらいで少し配慮されカウントスピードを落とされたが、それを無視してきっちり一分でスタートした)
戦闘開始
<< 借り物の翼ですか?!これ!! >>
戦場に降り立つや否や、打ち上げ施設に取り付く敵の先遣隊を蹴散らしたファイアワークスは、背後を確認した後(防衛任務で背後にアイテムがある前例がある)準備運動とばかりに(実際に自機の挙動を確認する意図があったと思われる)施設内を飛び回りながら高所を確保して索敵、続く敵の出現を確認すると防衛目標から離れて大きく前進し、積極迎撃する構えを取る。
ヘリボーンを目論む敵空挺部隊の大部分を降下前にヘリごと叩き落とし、辛うじて降下に成功した敵も抜け目なく仕留めていく容赦の無さ。
最初は放送事故を避けられて安堵していた様子のMC陣も、ファイアワークスのあまりの活躍にたじたじであった。
目立った被弾も無いまま危なげなく作戦を遂行していると、ミッション終盤に突如として惑星封鎖機構の空中戦艦”強襲艦”が出現。
いきなりの強敵出現にさすがに焦りを見せたのか、有効射程外からの攻撃で無駄弾を使ってしまう。が、どうにか調子を取り戻し、アサルトブーストで間合いの内側に潜り込むも両手のガトリングは共に弾切れで万事休す、と思われた。
しかしファイアワークスは両手のガトリングを投げ捨てるようにパージ。甲板に上がり込むや肩部ミサイルを叩き込みながら空いた両手で艦橋をタコ殴りにし始める。
さしもの強襲艦といえど艦上に取り付いた敵機への攻撃手段には乏しく(艦橋の陰に陣取っていたため艦体後方からの射線は遮られていた)、ほとんど一方的に艦橋を粉砕されてあえなく轟沈。
黒煙を上げる艦体を尻目に華麗に施設へと舞い戻ったファイアーワークスは、消化試合とばかりに残敵を掃討。終盤の猛攻ではサブミサイル2基を破壊されたものの、無事に打ち上がったメインミサイルを見送ってプレイを締めくくる。
予想される着弾地点に向かっていったミサイルは眩い爆炎を上げ、オペレーターのエアは「奇麗な花火ですね」とレイヴン…否、ファイアワークスに語りかけるのだった。
注目点
- 来場者パスに書かれた番号が抽選に使われたが、その番号が『36(3+6=9)』で注目が集まる
- カウントダウンを引き伸ばすMCの手心を突っぱね自らアセンを切り上げたプロ意識(計測してみたところキッチリ一分である)
- ガトリングの両手2丁持ちが生み出すシンメトリーの美しいフォルム
- 『ACVD』で染み付いたであろう操作がうっかり出てしまう茶目っ気(同作では壁蹴りで上昇出来る、それを狙ってか機体を壁に擦り付ける癖が出ていた)
- 特殊台詞まで再生されるほどの手際の良さ(「手加減してやれ、やりすぎると可哀想だ」という趣旨の台詞が出ている)
- アサルトブースト、パンチなど『ACVI』の新要素がふんだんに盛り込まれたプロモーションとしての完成度
- ばっちり勝利演出を捉える見事なカメラワーク
- 強敵を前に弾切れしてしまうものの武装パージから徒手空拳で食らいつく熱い展開
- 最終的にリペアキット未使用、APを75%残してミッションを完了させた機体捌き
- 依頼主が「花火会場」と軽口を叩く現場で「fireworks(花火師)」を名乗る傭兵が「奇麗な花火」を打ち上げるという出来すぎなシチュエーション
エピローグ
<< やるじゃないかビジター。いい余興を見せてもらったよ >>
歴戦の傭兵が魅せたお手本のようなプレイングにドン引きしていたMC陣がその後語ったところによれば、どうやらこの企画はそもそも失敗を前提としていたそうである(司会進行を務めていた松嶋初音は「リハーサルでも成功者は出なかった」と振り返っている)。
無念の敗北に肩を落とすプレイヤーに、制作スタッフが助言を与えながら再度アセンのチャンスを与え、その後見事にリベンジを果たすことで「アセン次第でこんなに違うんですよ」と締めくくる腹積もりだったそうな。
要するに一般人を衆人環視の場で騙して悪いが公開処刑する企画だったのだ。
だが上述のようにファイアワークスは厳しい条件をものともせず、初見でミッション内容を予測、必要な最低限の要素だけを特化させたアセンを行い、無事任務完遂して企画意図を見事に粉砕。数万人が見守る公式生放送で伝説を残したのであった。
もはやイレギュラーである。
場面だけ切り取れば「捨て駒のつもりで雇い入れた傭兵がイレギュラーだった」という
AC作中企業が何度も経験した事態を実際に起こしたのだからたまったモノではない。
全国試遊会で名を上げた各地の一般通過レイヴン達(C4-621の記事参照)の流れを汲んで地名を取り入れた「渋谷の花火師」の他にも、来場者番号から「強化人間36」の呼び名も生まれている。
無粋なツッコミについて
口だけは達者な我々一般人の業として、
もはや当然のごとく「出来すぎ」「ヤラセ」「仕込み」などの声はなくもなかった。
が、今回の1件は仮にヤラセだったとしても衆人環視の場で見事に観客映えするプレイイングを成功させている時点で及第点をとうに通り越している。しかも仕込みならば
- 「自然に見えるペースで弾丸を過剰消費してタイミングよく弾切れを引き起こす」
- 「ミッション失敗にならない程度に護衛対象を損耗させる」
という条件付きになるため下手したらぶっつけ本番の奇跡よりも難しい可能性すらある。
そもそもAC6と言うゲームで仕込みが可能なのかどうか。
仕込んでいたとして観客の重圧も相手にしつつ細工の効かない本番で一発成功できるのか。
それは発売日以降に我々自身や実況プレイヤーの皆様が明らかにしてくれるだろう。