概説
長野県駒ヶ根市に有限会社春日無線電機商会として設立。当初は高周波コイル(ラジオ受信機の部品)製造からスタートした。山に囲まれ電波が届きにくい環境である伊那谷で培った高周波技術がFMチューナー、無線機器の礎となっている。
オーディオブーム全盛の頃には山水電気、パイオニアと並びオーディオ御三家とされ当時の社名(トリオ)から俗に「サン・トリ・パイ」と呼ばれた。
また、長年アマチュア無線や受信機を手がけてきた技術の蓄積を生かしチューナーのトリオとも呼ばれていた。アマチュア無線機器ではアイコム、八重洲無線(現バーテックススタンダードの前身の一)と共に、三巨頭を形成していた。
2008年現在の主力商品は、カーマルチメディア機器、家庭用オーディオ機器、無線機器である。カーオーディオは富士重工やホンダなどに純正オーディオとして供給している。
かつては単体のラジオ受信機、携帯電話、PHS、コードレス電話、ファクシミリ、磁気テープなどの製造、音楽レコードの制作(トリオレコード)を行っていたが、業績の不振で撤退している。
オシロスコープなどの計測機器事業は1996年より子会社のケンウッド・ティー・エム・アイ(Kenwood TMI Corp.)が開発・製造・販売を行っていたが、2002年に日本毛織へ譲渡。2006年12月1日より株式会社テクシオ(TEXIO CORPORATION)に社名変更を行っている。
デジタルオーディオプレーヤー市場には、2001年初頭にWMAフォーマット対応のCDプレーヤータイプで参入するも事実上失敗に終わる。 2005年にフラッシュメモリタイプで再参入。当初はクリエイティブ社のOEM供給を受けていた。また近年ではMEDIA kegシリーズでリニアPCMレコーダーを発売した事がある(ただし2011年度をもって撤退)。
かつて、TDKからOEM供給を受けて、コンパクトカセットを出していた。
日本ビクターとの経営統合
2006年12月、松下電器産業(現 パナソニック)から日本ビクターを買収する交渉に入ったという報道がなされたが、最終的には条件が折り合わず見送った。
2007年7月24日、日本ビクターが8月10日に総額350億円の第三者割当増資を行い、2008年に持ち株会社による経営統合することを前提にケンウッドが200億円、スパークス・グループが150億円を引き受け、業務・資本提携で合意。10月1日、折半出資で技術開発合弁会社、J&K テクノロジーズ株式会社を新設。カー及びホームエレクトロニクス技術開発のコラボレーションがスタートした。
2008年6月27日、10月1日に共同持株会社・JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社(本店は横浜市のJVC本店内)を設立し、経営統合することが株主総会で承認された。ケンウッド及びJVCは9月25日に上場廃止。共同持株会社・JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社が10月1日に設立・上場され、ケンウッドは同社傘下の事業会社となった。
2011年5月13日、10月1日にケンウッドを含む3事業会社と、JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社(8月1日に株式会社JVCケンウッドに改称)が合併する計画が発表された。10月1日に予定どおり合併が行われ、株式会社ケンウッドなる法人は65年の歴史に幕を下ろした。
沿革
1946年 - 「有限会社春日無線電機商会」を長野県駒ヶ根市に設立。
1947年 - 商標を「TRIO」に決定
1950年 - 社名を「春日無線工業株式会社」に変更。
1955年 - 東京都大田区に東京事業所設立。
1960年 - 社名を「トリオ商事株式会社」に変更。
1961年 - 東京証券取引所市場第二部に上場。
海外向けブランド名KENWOODが誕生
1963年 - 東京都八王子市に八王子事業所設立(現在の本社)。
1969年 - 東京証券取引所市場第一部に上場。
音楽レコード事業(トリオレコード)に進出。
1979年 - シンガポールに初の海外工場を設立。
1980年 - カーオーディオ事業に進出。
1981年 - 山形県鶴岡市に「東北トリオ株式会社」(現・山形ケンウッド)設立。
1985年 - 音楽レコード事業(トリオレコード)から撤退。
1986年 - 社名を「株式会社ケンウッド」に変更。
1989年 - 東京事業所を神奈川県横浜市緑区に移転、横浜事業所を設立。
1990年 - 長野県伊那市に「株式会社長野ケンウッド」を設立。
1994年 - 中国上海市に「上海建伍電子有限公司」(当時は合弁)を設立。
1996年 - マレーシア工場を設立。
2001年 - 中期再建計画を発表。
2002年 - 産業再生法を申請し、抜本再建計画を発表。
本社を東京都八王子市に移転。
2004年 - 東洋通信機株式会社(現エプソントヨコム)より無線機事業譲受。
2005年 - 「ケンウッド」ブランドが25周年を迎える。
アイコム株式会社と技術面および資本面で提携。
2006年 - 創立60周年を迎える。
2007年 - 米国の無線通信事業会社であるZetron社を子会社化。
1月、創立者である春日二郎が逝去。享年89。
6月28日、河原春郎が会長となり塩畑 一男が社長に就任。
10月1日、日本ビクターとの技術開発合弁会社、J&K テクノロジーズ株式会社を新設。
2008年10月1日 - 日本ビクターと共同持株会社、JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社を設立し、JVC・ケンウッド・ホールディングスの完全子会社となる。
2011年10月1日 - 株式会社JVCケンウッドに合併。
社名の由来
1947年2月に採用された「TRIO」ブランドは、音楽に関係した事業内容にふさわしいブランドとして選ばれたもので、親族による経営(春日三兄弟)が三重奏のように調和するという願いも込められている。1960年1月には、ブランド名に合わせて、社名がトリオ株式会社(国内販売会社はトリオ商事株式会社)に変更されている[1]。
「KENWOOD」ブランドは、1961年11月に海外向けブランドとして採用されたものである。アメリカ事務所を設置した際、既に「TRIO」が商標登録されていたため、急遽ブランド名を考えなければならなかった。そこで、よいイメージのあるハリウッドの「WOOD」に、語のつながりがよく高級感がある「KEN」を合わせて「KENWOOD」とした[1]。
日本では「TRIO」ブランドのみが使用されていたが、1979年10月に最高級オーディオ製品のLシリーズが導入された際に、その専用ブランドとして「KENWOOD」が初めて使われた。その後、まったく同じオーディオ製品(ミニコンポ、ステレオ)を「TRIO」、「KENWOOD」両ブランドで並行販売したところ「KENWOOD」ブランド製品ばかり売れたこともきっかけとなり、1981年8月には「KENWOOD」がコーポレートブランドとされ、一部製品に「TRIO」を残して、ブランドが「KENWOOD」に統一された。さらに、1986年6月には社名が株式会社ケンウッドに変更されるとともに、全ての製品が「KENWOOD」ブランドに統一された。
2006年には、創立60周年を記念して、日本国内向けに「TRIO」ブランドを復活した限定モデルが発売されている。
なお、調理器具を製造する同名の企業がイギリスにある(同社のロゴは「K」の斜線部分が赤い)が、関連は一切ない(社名は同社の創業者に由来。現在はデロンギ傘下)。そのため、ロゴには同社との識別のため「W」に赤い逆三角形が入っている。事業分野が重複しない(また同社は日米では事業を展開していない)ため同じ商標を使用しているとみられる。