概要
富嶽とは、かつて旧日本軍が計画した超大型爆撃機のこと。当時日本最大の航空機メーカー・中島飛行機が音頭をとって軍部に売り込んだのが始まりとも言われる。
概要は六発の発動機を持ち、その発動機は2500馬力級の発動機を二基串刺に配置して5000馬力とする計画であったが、2000馬力級発動機の開発にさえ難儀していた当時の日本の国力で実現できるはずもなく、その後出力を3000馬力に落とすなど発動機だけでも計画は二転三転した。
その上成層圏を飛行することが前提であったため機体構造も難問が山積しておりこちらも計画は二転三転していた。
結局戦局悪化の影響で計画のみに終わり、また終戦後図面などが焼却されてしまったため現在もその概要については不明な点が多く謎に満ちた航空機である。
それ故か架空戦記では超兵器の定番として活躍の機会は非常に多く、八面六臂、獅子奮迅の活躍をしている場面も少なくない。ある意味実現できなかったことに対する当時の技術者たちの無念を代弁するかのようである。
また、謎に満ちているが故に解釈の幅も広く、一般にはレシプロエンジンが定番であるが、中にはターボプロップエンジンやジェットエンジンを搭載した富嶽も存在するほか、独自解釈が更に飛躍して計画時の性能を大幅に上回るものも散見される。
機体も機首が当時の一般的な日本機のように段つきのものも多いが、最近の研究ではかのB-29のような段のない滑らかな形状の機首であることがほぼ確定している模様。
余談ではあるが、富嶽とは日本の最高峰、富士山(3776m)に因んだ命名である。
仮に実用化に成功していれば何らかの形で世界史に影響を与えたことは間違いなく、敗戦という結果は覆らなかったとしてもその後の戦略に何らかの影響をもたらしたであろう。
その存在と名が戦後人に知られるようになったのは1990年代の架空戦記ブームによる。ただしその多くは海軍の正式な計画(G10N1)ではなく、中島知久平(中島飛行機創業者)の太平洋往還爆撃機(Z飛行機計画)構想によるもの。これを知らしめたもっとも著名な作品が荒巻義雄の『紺碧の艦隊』と檜山良昭の『大逆転! 幻の超重爆撃機「富嶽」』だが、直接タイトルとなった後者では、モデルは中島知久平のZ飛行機でありG10N1ではないことが第1巻巻頭に明記されている。