概要
全長10メートル・体重5トン程度と、モンゴルでは最大の獣脚類である(アジア最大の称号は2011年に命名されたズケンティラヌスに奪われた)。
多数の良好な標本が知られており、復元骨格は日本でも見ることができる。最近になって2~3歳ほどの幼体の化石が発掘され、ティラノサウルス類の成長過程の解明につながるとして注目されている。
ティラノサウルスと同属だとする説もあったが、タルボサウルスの方が華奢で前肢が短い点などから現在では多くの学者が否定している。原始的な特徴もあり、アメリカの近縁種の祖先ともされている。
おそらく死肉も食べただろうが、当時のゴビ砂漠の食物連鎖の頂点に君臨していただろう。サウロロフスやデイノケイルスなどの大型恐竜の化石に、タルボサウルスの可能性が高い歯型が残されていた事がそれを物語っている。
発見と命名の歴史
1920年代にアメリカ自然史博物館の調査隊によって、モンゴル・ゴビ砂漠に恐竜が生息していたことが判明した(ヴェロキラプトル、オヴィラプトル、プロトケラトプスなどがこの調査で発見された)。
第二次世界大戦後、ソ連科学アカデミーの調査隊によって複数のティラノサウルス類の化石が発見された。この時発見された化石はティラノサウルス科の新種と考えられ、1955年の論文で「ティラノサウルス・バタール」、「タルボサウルス・エフレモヴィ」、「ゴルゴサウルス・ランキナトル」、「ゴルゴサウルス・ノヴォジロヴィ」の4種に分けて命名された。
ところが、1965年になり、「これらは全て同じ種ではないか?」という可能性が浮上。先取権規約の関係で「タルボサウルス・バタール」として統合されることになった。(学名は「警告する爬虫類の英雄」といった意味)
時は流れて1990年代。「ゴルゴサウルス・ノヴォジロヴィはタルボサウルスともゴルゴサウルスとも違う恐竜ではないか?」と考えられるようになり、ここに「マレエヴォサウルス・ノヴォジロヴィ」が誕生した。また、「タルボサウルスはティラノサウルスと同属でもいいんじゃないかな(→ティラノサウルス・バタール)」といった説や、「バタールはエフレモヴィと違う種だよ。でもティラノサウルス属でもないよ」ということで「ジンギスカン・バタール」とすることが提唱されたりと、訳の分からないことになった。
結局、現在では「やっぱりタルボサウルス・バタール1種でいいや」ということで落ち着いている。なお、中国の新疆ウイグル自治区から発見されたシャンシャノサウルスの他、ラプトレックスもタルボサウルスの幼体とされることが多い。