概要
『文豪とアルケミスト』に登場する徳田秋声×泉鏡花のカップリング。
このタグを用いて投稿する場合、腐向けタグとの併用や、文アル【腐】などの棲み分けタグの使用が望ましい。また、記事内で示す通り、他ジャンルの男女カップリングとカップリング名が被っていることから、検索の利便性からも腐向け及び棲み分けタグの併用を推奨する。
曖昧さ回避
現在、Pixivにおいてこのタグは以下のカップリングを指す。
当記事では1について説明する。
ゲームにおける二人の関係(以下、プロローグ及び回想、手紙内容、オフィシャルキャラクターブックのネタバレ注意)
史実と同じく秋声・鏡花共に尾崎門下生であり、ゲーム内でも尾崎紅葉を含めた関係が、各種回想や手紙のやり取りの中で描かれている。
両者とも石川県金沢市出身。鏡花の方が兄弟子にあたる。
プロローグ
有碍書内でピンチに陥った秋声を助太刀する形で鏡花が駆けつける。
無事に敵を倒し、図書館に二人で帰還しようと試みるものの、プロローグ後にそのまま初期文豪とともに図書館で過ごすことになる秋声と違い、鏡花は館長が緊急で転生させた魂の不安定な存在なため、戻る間も無く消えてしまう。その際、「積もる話もあっただろうに」と言われた秋声は「積もる話なんてあるわけないじゃないか」と素っ気なく返すが、一部始終を見ていたネコには「……そうは見えなかったがな」と言われている。
有碍書内回想
紅葉に対し絶対的な忠誠を誓っている鏡花には秋声の態度が不敬と映ることも多く、咎めるようなセリフが聞かれる一方で、秋声から鏡花のことを優秀で自分とは違うのだという鬱屈した思いをぶつけられると、予想外であったような反応を見せる。
秋声もまた、師に対する信仰を押し付けてくる鏡花を煩わしく思っている様子であるが、紅葉から彼が秋声のことを気にかけていたと告げられた際は、言葉には出さないものの何か思う所があったようだ。
食堂回想
すでに火が通っているあんぱんすら炙る鏡花に、秋声が呆れている。
その後鏡花は、自身が手で掴んでいた部分(ようは食べさし)を「欲しければ差し上げますよ」と発言している。(回想は秋声の溜息で締めくくられているため、その後秋声がどうしたのかは不明)
手紙
秋声が鏡花に口頭で伝えれば済むはずの内容をわざわざ手紙に書き記すなど、鏡花に対してどこか素直になれない素振りが見られる。
このように秋声は鏡花のことを避けている節があるものの、図書館ボイスや喪失ボイスで鏡花の名前を出したり、オフィシャルキャラクターブックの質問コーナーでも鏡花に触れていたりなどと、かなり気にはしているようである。
史実における二人の関係(回想等の元ネタ注意)
ゲーム内とは真逆で、主に秋声の方が積極的に鏡花について触れている。
幼少期
両者とも石川県金沢市に産まれ、同じ小学校に通っていた。(鏡花の方が紅葉門下では兄弟子であるが、年齢は秋声の方が一つ上)
互いに共通の友人もいたようだが、当時は面識がなかったようである。
ゲーム内で鏡花が発言している通り、鏡花が秋声のことを認識したのは尾崎紅葉の玄関番をしていた時であるようだが、秋声の方は自身の随筆に、
『第四高等中学の前身である石川県専門学校へ向かう途中に皮膚の美しい丸顔の青年とすれ違い、それが鏡花だとは知らずにその風貌に深い印象を受けた』
『リーディング試験の際に桜色の丸い顔をして近眼鏡をした青年がおり、素晴らしい発音だった。それは鏡花がミッションスクールに通っていたからである』
『田舎には珍しい、ちょっと印象の深い美しさだった』
などと金沢にいた頃から鏡花のことを認識していたと取れる文章を残している。
(いずれも 八木書店/徳田秋声全集第23巻 内の随筆より要約して抜粋)
紅葉門下時代
その後鏡花は紅葉門下に入り、秋声もそれに続く形で上京して門を叩くが、玄関番をしていた鏡花に紅葉の不在を告げられてしまう。入門したいという趣旨の手紙も書くが、まだ未熟だというような返事とともに返送されてしまい、しばらく一般企業に勤めたりしていた。
数年後、鏡花の仲介もあってなんとか入門を許される。
門下生時代はそこそこ仲が良かったようで、同じく尾崎四天王である小栗風葉や柳葉春葉も交えてのエピソードがいくつか残されている。
尾崎紅葉の死、『黴』、火鉢事件
ゲーム内回想でもあるように、紅葉のことをあくまで対等な人間だと考えている秋声と、絶対的存在だと考えている鏡花では価値観が合うはずもなく、徐々に仲が悪くなっていく。
最終的に紅葉が亡くなった際のことを生々しいほど詳細に書き記した秋声の作品『黴』が、紅葉を神のように信仰していた鏡花の怒りに触れ、完全に仲を違えてしまう。
後に秋声の方は、共通の友人である里見弴に鏡花との仲を取り持ってもらえないだろうかと頼み込んだりしているため、仲直りを望んでいた様子であるが、その里見弴に「それはあなた方のどちらかが危篤で、その枕元ででもなければ難しいのではないか」と言われてしまい、「ずいぶんひどいことを言う人だね」と笑いつつも少し怨めしそうに返したとされている。
火鉢事件
火鉢事件という名称はあくまでこの項での説明のための便宜上のものである。
紅葉の死後に計画された出版計画のために、秋声と出版会社の社長が鏡花を訪ねた。
しばらくは睦まじく昔話をしていたのだが、たまたま話が紅葉に及んだ際、秋声の発言の何かが鏡花の逆鱗に触れたらしく、真ん中にあった火鉢を飛び越して秋声を押し倒し、所嫌わずぶん殴った。
その後なんとか社長が仲裁して秋声を自動車に押し込んだが、突然のことに驚いたこともあるのか、秋声はしばらく見栄もなく泣き続け、社長を困らせた。
というエピソードである。
なお、この事件はあくまで里見弴による伝聞という形で残っているため、火鉢を飛び越えた〜の件は創作である可能性もある。
この事件の後、里見らによって二人を仲直りさせるべく揃って会合に招いてもらったりしているが、鏡花の方がろくに話もしないままお酒をどんどん飲んで狸寝入りしてしまい、仲直りは失敗に終わってしまう。
後日秋声は「この間は好意を無駄にしてしまったが、なんとかもう一度機会を作ってもらえないだろうか」と里見に頼んでいる。しかし里見は心を鬼にしてこう言った。
「そんなこと何度やつたつて絶対に無駄だ、そのかはり、どちらが先かしらないけど、いざといふ時には必ず知らせるから」
(里見弴/『私の一日』より)
しかし……
この辺の詳しいエピソードは、里見弴の『二人の作家』『私の一日』を参照のこと。
『和解』、そして晩年
『和解』とは鏡花の弟・泉斜弟が秋声所有のアパートで亡くなったことをきっかけに、二人が和解(和解したとは言っていない)するということを書いた秋声の小説である。括弧内で述べた通り、とても和解したとは言い難い内容で締められている。青空文庫で読むことができるので、気になった方は是非読んでほしい。
そしてそのまま時は流れ、1939年9月7日、鏡花は癌性肺腫瘍により、里見や奥方に見守られながら息をひきとる。
しかしながら、そこに秋声の姿はなかった。
なぜなら、危篤の知らせが間に合わなかったのである。
後に鏡花の危篤をラジオで知った秋声は慌てて家を飛び出し、途中で出会った里見に尋ねる。
「どう?」
「たった今……」
その辺等を聞くと、秋声は鞭打つような激しさでこう言った。
「駄目じゃアないか、そんな時分に知らせてくれたって!」
(里見弴/『二人の作家』)
また、鏡花の死後に秋声は同年9月8日の東京日日新聞のインタビューにこのようなことを答えている。
「先年自分が大病を患ったときにわざわざお見舞いに来てくれ、また、自分も訪ねて行くという交際が始まっていた」
「楽しい昔話をして、また今度一つか二つ二人でどこかへ行こうと話をしたばかりだったのに……」
この秋声へのインタビュー内容が事実であるならば、里見たちの知らぬところでこっそり会って旅行の約束をするぐらいの仲に戻っていたのに危篤に間に合わなかったということになり、虚構ならばそれはそれで、秋声は最後まで鏡花との仲直りを望んでいたともとれる。
つまり、どちらにせよとても辛い。
その他、
・秋声の随筆を読むと尾崎紅葉と同じぐらいの頻度で鏡花の名前が出てくる。
・『なにがし』名義で書かれた小説の筆者が鏡花であるとすぐに見抜く。
・ 鏡花が懇意にしていたという理由だけで、件の旅館に泊まる。
・疎遠になった後も、鏡花の弟や友人に会う度に「鏡花はどうしているか」と尋ねていた。
……などと、完全に史実が最大手状態である。