概要
中生代・白亜紀後期(約8000万〜7000万年前)のモンゴルに生息していたドロマエオサウルス科の小型肉食恐竜。
ベロキラプトルとも表記される。名前は「素早い泥棒」「鋭敏な掠奪者」くらいの意。
全長約2m、体重は推定15kg程度。
特に鳥に近い肉食恐竜の一つで、風切羽の痕跡すらある鳥の翼にごく近い前肢と、第二指に深く曲がった大きな鉤爪のある後肢が特徴。
尾は腱で硬化しており竹竿のようにまっすぐ。
近年の発見で、前肢の骨に鳥類特有の特徴(羽毛が生える土台になる小突起)が確認され、近縁種の直接的な化石証拠とも相まって羽毛を持った姿で復元されるようになった。
プロトケラトプスと格闘するかのようなポーズのままで保存された「闘争化石」が有名だが、実際にヴェロキラプトルがプロトケラトプスを捕食しようとしていたという説の他に、一方がもう一方から卵を守ろうとしていたなどの説がある。
なお、ヴェロキラプトルが1対1でプロトケラトプスと渡り合ったという仮説については、体格差の関係から疑問視されている。
「ジュラシック・パーク」シリーズ
映画「ジュラシック・パーク」シリーズでは、T-REXと並ぶ2大メイン恐竜として扱われており、劇中の「ラプトル(ラプター)」という呼称と共に一躍有名になった。
どの作品でも大きな見せ場があり、特に原作では一貫して最大の脅威として描かれている、シリーズの常連である。
なお、実際のヴェロキラプトルの身長は、コヨーテ程度の大きさしかないのに対し、映画のヴェロキラプトルは約4m以上あり、どちらかというとデイノニクスやユタラプトルに近い体型をしている。また、頭骨の形状も実際のものとは大きく異なる(後述のように、デイノニクスを参考にしたのだから当然だが)。
(左:映画におけるラプトル、 右:実際のヴェロキラプトル)
これは、原作発表当時、デイノニクスをヴェロキラプトル属に含める説があり、それが採用されたことが原因の一つとされる。
また、近年のヴェロキラプトルは鳥のように腕を折り畳んでいたと考えられているが、本シリーズでは一貫して腕を幽霊のように垂れ下げた旧復元を採用している。これは新説を省みてないというよりかは、旧作リスペクトの一環であると見るのが適切であろう。
アラン・グラント博士は『III』にて、知能の高さから、「もし絶滅しなければヒトに代わる知的種族に進化したかもしれない」と言及している。いわゆる恐竜人間説であるが、一般的にはトロオドンとされている説で、これをシリーズ常連のヴェロキラプトルに取り入れたということだろう。
ジュラシック・パーク
ジュラシック・パークで飼育されている成体3頭が登場。体色は灰色。
当初8頭いたというが、ボスとなっている最も大きな1頭のメスが2頭を残して全て殺したという。
冒頭からパークのスタッフを襲い、中盤で脱走した後もアーノルドやマルドゥーンといった人物を次々と殺害した。
最後の最後まで執拗に主人公のグラント博士達を襲撃するが、最終的に1頭は、ティムとレックスによって冷凍室に閉じ込められ、残りの2頭はラストでグラント達を追い詰めた時に突然現れたT-REXのレクシィに捕食・撃破されて全滅する。
原作では、恐竜のクローン再生を成功させた張本人であるヘンリー・ウーや作業員なども犠牲となった。また、野性化し繁殖したラプトルの群れも登場している。
ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
サイトBに生息していた群れが登場。体色はトラのような黒い縦縞模様が入った茶褐色となっている。
中盤、背の高い草むらに出現し、サイトBから脱出しようとした恐竜ハンター団を襲撃してほぼ全滅させた。その後も島を出ようとした主人公のマルコム博士達に襲い掛かるが、マルコム達は間一髪のところでこれを撃退して脱出に成功する。
最後まで脅威であり続けた前作とは異なり、今作では中ボスのようなポジションであり、サイトB脱出後は全く出番がない。そして出番のある場面では、意外と間抜けなシーンが目立つ。
ジュラシック・パークⅢ
サイトBに生息していた5頭の群れが登場。ただし今回は雄と雌が登場し、性別で体色が大きく異なるほか、オスには羽毛の一部が見受けられるなど、前2作に登場したラプトルとはまた異なる個体群であるようだ。雄、雌ともに全長4m、体高1.7m。
知能が更にパワーアップしており、生きた人間を囮にして(とどめを刺せる人間を敢えて生かして)仲間の人間を誘い出そうとするなど人間並みの狡猾さを誇る。
また、今作では自力で卵を産んで繁殖しており、このラプトルの卵が重要な役割を担う。
1作目と同じく、島を脱出しようとする主人公のグラント達の前に最後まで立ち塞がる。
ジュラシック・ワールド
最新作にももちろん登場。公式サイトでは全長5m、体高2mとされている。
今作ではなんと、主人公のオーウェンによって訓練された4頭の個体が登場する。長女には「ブルー」(Blue)、次女には「デルタ」(Delta)、三女には「エコー」(Echo)、四女には「チャーリー」(Charlie)と、それぞれ名前を付けられている。なお、「アルファ」(Alpha)はオーウェン自身である。
今作では、訓練者であるオーウェンの指示を聞き分けることが出来るなど、極めて高い知能が示されており、劇中では主人公と共に協力してインドミナス・レックスの掃討作戦を繰り広げる。
ところがインドミナスは、ラプトルの遺伝子も保有しており、それを利用して彼女達と会話をし、人間を敵だと認識させた。その結果、ブルー達はインドミナスに騙されて人間を襲ってしまい、ラプトルは本作でも人間の敵となってしまうが…