概要
フォレスタル級は、アメリカ海軍初の戦後型空母である。アングルドデッキ、蒸気カタパルトなどの新機軸を一通り導入し、ミッドウェー級など戦時型空母とは一線を画する航空運用能力を獲得。満載排水量は80,000tを超え、日本海軍の「信濃」(約72,000t)から最大の空母の座を奪取することになった。
冷戦後の軍縮、老朽化から同型艦全てが退役し、現在は解体が進んでいる。
設計
第二次大戦後、核兵器の登場による戦略爆撃至上主義によって台頭した空軍に対抗すべく、海軍はユナイテッド・ステイツという、戦略爆撃機を運用可能な空母を計画していた。結局計画中止に追い込まれたものの、朝鮮戦争によって空母の有用性が明らかとなったため、これを下敷きとし、通常の航空母艦に生まれ変わったのが本級である。
この経緯のため、当初の設計ではアクシャルデッキ(真っ直ぐな甲板)であったとされるが、イギリス海軍での研究結果と、エセックス級空母アンティータムの試験結果から、アングルドデッキが設計途中に取り込まれた。艦上機のジェット化が進んでいた当時、アングルドデッキは高速機の運用に適していたため、非常に魅力的であったからである。このほか、舷側エレベータが装備され、格納庫の有効活用ができた一方で、左舷エレベータの位置が着艦の障害になりうる場所にあった。この欠点については、のちのキティホーク級において改善されることになる。
飛行甲板は戦時型の空母と異なり、艦の強度を担う強度甲板に設定され、また装甲が施された。艦首はレキシントン級のごとく、ハリケーンバウ(エンクローズドバウ;閉じた艦首)の形式をとり、凌波性が向上した。
機関
機関構成は従来と同じくボイラーと蒸気タービンであり、シフト配置を取っている。一番艦の機関出力は260,000馬力で最大速力は34ノット。ただし、二番艦からボイラーが高温高圧化され、出力や航続距離などに影響を与えており、このことは基本計画番号の変化に表れている。また、フォレスタルとサラトガでは45tの舵二枚に、小型の補助舵が一枚装備されていたが、三番艦レンジャー以降は補助舵が省かれている。
兵装
1950年代に建造されたため、当初は5インチ砲塔を八基搭載していた。しかし就役中にミサイル技術が発展したこと、5インチ砲塔の重量が大きかったことをうけて、シースパローやファランクスCIWSに換装されることになった。
航空艤装
はじめて建造時から蒸気カタパルト、光学着艦装置、アングルドデッキを取り入れた艦級である。カタパルトは四基装備され、航空機の運用力は大きくなったが、動力の蒸気はボイラーで生み出していたため、全力で発艦作業を行うと、艦の速度が低下してしまうことがあった。また、舷側エレベータは四基で、アルミニウム合金製、重量は一基あたり105tであった。
小話
米海軍人事局は、公式情報誌として「ALL HANDS」を発行している。当誌の1957年10月号では、三番艦レンジャーの特集が組まれており、艦自身が話したことを記事にする、という体での紹介が行われた。記事には、「多くのリベットを打つ音で、頭痛がなかなか止まなかった(意訳)」というような、現場の苦労話と受け取れるような文章もあり、当時の様子をうかがい知ることができる。
性能諸元
満載排水量 | 81,101t |
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軽荷排水量 | 61,235t |
全長 | 1,067ft |
全幅 | 253ft |
水線長 | 990ft |
水線幅 | 130ft |
喫水 | 37ft |
機関出力 | 260,000shp |
速度 | 34ノット |
※1.排水量はロングトン(1.01605t)。
※2.諸元はサラトガ(CV-60)のもの。
(機関出力、速度はフォレスタル(CV-59))
諸元出典(喫水の項まで):
http://www.nvr.navy.mil/SHIPDETAILS/SHIPSDETAIL_CV_60_4825.HTML
参考文献
「世界の艦船(2012年3月号増刊) 空母 100のトリビア」海人社
「ALL HANDS(1957年10月号)」米海軍人事局
同型艦
CV-59 フォレスタル
CV-60 サラトガ
CV-61 レンジャー
CV-62 インディペンデンス
関連タグ
ミッドウェー級 前級。
キティホーク級 次級。改良型。