概要
アカボウクジラ科のツチクジラ属の大型のハクジラで、体長は13mとマッコウクジラの次に大きい。主な餌は魚類やイカ類等。
また、全身が灰色で、くちばしを有するハクジラの中では最も大きい。
ハクジラでは珍しく、メスがオスよりも大きくなる。また、オスの個体数がメスの3倍もいるという推測もあり、捕獲されてきた個体の3分の2がオスであった。その代わり、オスの方が長生きする(かもしれない)という意味では珍しいのかもしれない。
比較的に冷たい海に生息する種類である。
北大西洋には分布しないが、似たようなニッチはキタトックリクジラが占めている。また、熱帯地方にも滅多に見られないが、こちらでは「トロピカルトックリクジラ」ことタイヘイヨウアカボウモドキが見られる。
種類
- ツチクジラ
北太平洋、日本海、オホーツク海の南部などに棲息する。日本では相模湾や伊豆大島、富山湾よりも南に回遊する事は少ないとされるが、韓国や隠岐で確認されたりなど、実際は知見が不足している可能性もある。北米では、メキシコ半島まで南下することもある。
日本の沿岸捕鯨の対象となっており、かつて東京湾や富山湾で大量に捕獲された(とくに前者は「鯨の都」と呼ばれるほどに多く捕殺されていた)。「富士山に参詣するためにやってくる」という伝説が残っており、銛を撃ち込まれて絶命の寸前に苦し紛れに顔を水面上に上げる光景を見て「死ぬ間際に山の姿を見ようとする」という表現も伝わっている。
近年は捕鯨による個体数の減少や分布の変化の影響からか房総沖での捕獲がままならず、東北や北海道に行くようになっている。また、日本海側ではしばらく捕鯨がストップしていたので人懐っこい個体が増えたとも言われているが、捕鯨が再開されてしまった。
- ミナミツチクジラ
南極海に生息。
新種として登録されたのは、1851年とこちらの方が早い。
体長は学問上の確認が9m以上、目視での目測が11m以上と、北太平洋の種類に比較すると若干短い。
別名「カラス」。
最近確認されたツチクジラ属の新種で、まだ種類が確定されていなかった時代は「オホーツク海のトックリクジラ」と呼ばれたりもしていた。タイヘイヨウアカボウモドキも似たような経歴がある。
その名の通り全身が真っ黒で、かつ体長が6~7mと上記二種よりもかなり小型である。また、より浅瀬に近寄る傾向がある。
オホーツク海や日本海、アラスカ等で確認されており、知床や網走ではホエールウォッチング船から目撃されることもある。
捕鯨
ツチクジラは日本の沿岸捕鯨の対象として、年間60頭前後が捕獲されている。
本種はIWCの管轄外で、かつイルカやミンククジラと違って、何故かあのシーシェパードやグリーンピースの反対対象にすらなっていない(抗議活動は行わないが、ネットでの反対は示していたりする)。
アカボウクジラ科は、最もミステリアスな大型生物群の一つであり、クロツチに限らず近年でも新種が発見されたり、生きた姿が確認された事のない種類や目撃例や漂着例もとても少ない種類も珍しくないなど、学術的にも生態に未知の部分も多い。