機体解説
正式名称は「サボイアS.21 試作戦闘飛行艇」。
サボイア(サヴォイア、SIAI-Savoia)は実在したイタリアの航空機メーカーであり、「S.21」の型番を持つ飛行艇も実在するが本機とは全く似ておらず、実際に本機のモデルとされたのは別のメーカーの機体である「マッキM.33」である。これは宮崎監督の記憶違いによるものとのこと。
胴体・主翼ともに木製モノコック構造の単葉機。船艇を兼ねる胴体部の上に短い支柱でいわゆるパラソル式に配置される、浅い後退角付きの主翼を持ち、その上にさらに支柱を立てて水冷エンジンを配置している。これは水面に離着水する飛行艇の特性上、主翼やエンジン、プロペラを水しぶきから守る、割とポピュラーな配置の一つである。主翼の左右下部からは小型の補助フロートを下方に取り付けている。ポルコの二つ名「ポルコ・ロッソ(紅の豚)」の由来となった真紅の機体色に、垂直尾翼と主翼下面に緑・白・赤のイタリア国旗の意匠を持つ。
1920年代に1艇のみ制作された試作機。ポルコ曰く「危なくて飛べねえってんで、倉庫で埃を被ってた」ところをローンで購入したもので、後に改修を担当したフィオも「こんな過激な設定でよく水から離れられるわね」と評する。
しかしポルコは「難しいのは離着水の時だけさ、スピードに乗れば粘りのある翼だ」と語ってこのピーキーな機体を完璧に乗りこなしている。ポルコとのコンビで数々の武勇伝を打ち立て、彼の名声をアドリア海のエースと評されるまでに高めてきた、ポルコにとって代えのきかない愛機である。
なお、機体自体は損傷等も無い良好な状態だが、一方でエンジンの方は序盤の時点でエンストが頻発し燃料漏れまで発生する等、相当なガタ(もとい寿命間近)が来ており、その都度ポルコの応急処置や自己メンテナンスでなんとか持ち堪えていた。
だが、物語中盤にて流石にこれ以上の引き延ばしは不可能と判断しエンジンの修理または新調を決意し休暇を兼ねてミラノへ向かう最中、エンジン不調の状態でカーチスの襲撃を受けた際に最悪のタイミングで完全にエンジンが停止してしまった隙を突かれて撃墜され、主翼とエンジンを全損するも、ポルコの操縦で胴体だけは守られる。修理に持ち込まれた時はピッコロおやじからも「新造した方が早くないかい」と評されるほどの状態だったが、「コイツは残してえんだ」というポルコの強いこだわりによって大改修を受け復活した。
改修の際、再設計を任されたフィオのアイディアで主翼断面の設計変更やタブ(姿勢安定装置)の新設が行われた。また、最高速度アップを目指してポルコ側から後退角をやや深くするよう依頼している他、ピッコロ親父がどこからか手に入れてきた(お披露目時に「出処は聞くな」と牽制していた事から十中八九で非正規ルートだろう)新エンジン「フォルゴーレ」を搭載。これはフィアット社製のエンジンをモデルにしているが「GHIBLI」の刻印がある架空エンジンである。なお、エンジンの設定は原作漫画『飛行艇時代』と映画版とで異なる(次節参照)が、いずれにせよこの時代のエンジンとしては破格の馬力を誇り、この主人公機の高性能を支えている。
改修後、フィオがメカニックとして(半ば強引に)ついてくることになるが、簡易的な複座式に改装したものの、機関銃の間に挟まるという、そのあまりの劣悪な搭乗環境に呆れたポルコにより、武装の2丁の7.92mmシュパンダウ機関銃を1丁に減らしている。このため物語後半では火力が半減しており、クライマックスで機関銃不調に陥り泥仕合と化した原因の一つとなった。ちなみにフィオの座席は回転するプロペラの直下付近の、Gがかかって身体が浮こうものなら頭部が吹き飛びそうなかなり危険な位置にある。
この物語後半の仕様を、「後期型」またはフィオの頭文字を取って「サボイアS.21F」と称する場合もある。
なお、初期型と後期型の最もわかりやすい見分け方はエンジンのラジエーターの位置。初期型ではエンジン後部の左右にラジエーターが配置されているが、後期型ではエンジン前面に大きく開口部が取られて集約されている。
性能諸元
- 乗員:1名(初期) → 1~2名(後期型)
- 最高速度:330km/h(後期型)
- エンジン:
イゾッタ・フラスキニ・アッソ水冷V型12気筒 600馬力(原作漫画)
↓ 改修後
ロールス・ロイス・ケストレル 700馬力(原作漫画)
フィアット・フォルゴーレ 720馬力(映画版)
- 武装:7.92mmシュパンダウ機関銃×2(初期)→ ×1(後期型)