概要
「同床異夢」とは、熟語を構成する語のそのままの意味を理解するものと、その意味を比喩的に捉える慣用表現の二種類の用法がある。
まず構成する語をそのまま受け取る読み方としては、「同じ寝床で寝ていても、それぞれは違った夢を見ている様子」の意味となる。枕を隣にしていても、その眠りの中で見る夢までは同じにはならない様子を指す。
そしてこの「物理的条件等は同一・近似でありながら、夢(心の内)は異なる」という点から、二者以上が同じ立場または同じ行動をとる関係性であっても、それぞれの心のうちには異なる考えや意見、価値観、あるいは未来への展望などとしての「夢」がある、との意味ともなる。
両者を合わせるなら、「隣で寝ていて(行動)も夢(想い)は違う」といったところである。
例えば読者諸氏が、何かを調べたいと思ってピクシブ百科事典の特定のページを開くとする。
そのページには同様に何かの情報を求めて他の人々もまたアクセスする。
行動は「ページにアクセスする」という点でそれぞれ一致している。
しかし、その求めるものは同一とは限らない。
仮にこの記事で例えるなら、ある人はこの四字熟語の内容を知りたいと思ってアクセスし、またある人はこの記事(pixivタグ)がフォローするpixivに投稿された作品を求める際の足がかりとしてこの記事を使用するといった、それぞれのニーズに合わせた相違が存在している。
何かを求めたわけではなく、たまたまページを開いただけ、というケースも十分にあり得る。
あるいは手が滑ってしまっただけで、この記事とは不本意な出会いだった、ということもあるかもしれない。
これもまた、行動は同じでも想いは違う、という一例である。
ニュアンス
「同床異夢」には、その先に起こり得る現象を想定して、この語自体にもニュアンスとしてポジティブなもの、ネガティブなものがある。
「同床異夢」の言葉を使ったり受け取ったりという場面自体もまた、実際の場面では時に「同床異夢」(同じ言葉でも思っているニュアンスが異なる)となり得る。
例えば海に漕ぎ出そうとする一団があったとする。
それぞれが適した装備を持ち、知識を蓄え、体調を整えてその日に臨む。
行動と目標は同じである。
しかし、彼らはなぜ海に漕ぎ出すのか?
ある人は、海に漕ぎ出すロマンを全身で感じたいから。
ある人は、海原から見る景色を見たいから。
ある人は、海よりも皆と一緒に海に出ることが楽しみだから。
ある人は、新たなシービジネスの構想の足掛かりとなる体験を積みたいから。
このように心はさまざまなのである。
ここから、ニュアンスが分岐する。
ポジティブなニュアンスとしては、この一団には多様な視点が集っている、と見る。
ロマンを求める活力、景色を臨みたいという願い、皆と一緒に楽しめる喜び、具体的な未来を生み出したという意欲などが相乗効果をもたらし、さらにより良い展開を生み出すだろうと想像するのである。
夢にあふれた「同床異夢」と言えるだろう。
逆に、ネガティブなニュアンスとしては、例えばこの一団は中心的な意思疎通が十分でない、と見る。
海原に漕ぎ出すというともすれば命の危険もある状況にあって、それぞれの期待するものが異なるために結果個々の行動が散漫になるおそれがある。ロマン優先でこぎ続ければ景色を見る余裕もなくなるかもしれないし、余裕がなければ皆で楽しむ雰囲気は生まれにくい。ビジネスチャンスを狙う姿勢はロマンを追う者にとっては鼻につくかもしれないし、そんな状況では将来ユーザーになるかもしれないロマンチスト達に関する冷静な知見も得にくい。
それぞれの思惑から自分が船頭になりたがって、結果気づけば海どころか船ごと登山しているかもしれない。
この様子を傍目から見て所詮は烏合の衆さ、といったシニカルさと共に呟く「同床異夢」もありうるのである。
この他、特定の価値判断に依らない中立的なニュアンスもあり、こちらは先述のように同じ場所にいても「人(の想い)はそれぞれ違うのだ」ということを表現する方法の一つとしての「同床異夢」である。
「同床異夢は」文脈によってニュアンスが変わり得るフレキシブルな語であるといえるだろう。
類義語・対義語
「同床異夢」の類義語としては「同床各夢(どうしょうかくむ)」がある。
同じ床についても各々の夢を見るといった様であり、そのシーンやニュアンスもほぼ同様。
一方の対義語としては「異榻同夢」(いとうどうむ)がある。
「榻」は訓読みでは「こしかけ」とも読む。「腰掛」の意味。
こちらは異なる腰掛(違う環境)にあっても同じ夢を見る(同じ意見や価値観を持つ)といった様である。
pixivでは
pixivでは四字熟語としての「同床異夢」のほか、「同床異夢」に関連した動画作品に登場するキャラクターを描いたファンアート作品などが発表されている。
後者のキャラクターの元は「同床異夢」をタイトルとする、あるクトゥルフ神話TRPG(※)のシリーズが元である。
※「クトゥルフ神話」を題材とした様々なテーブルトークRPG(卓上遊戯)の総称。