概要
1929年に東欧のバルカン半島に成立した多民族国家。初期の正式名称は、セルビア人・クロアチア人・スロベニア人王国であったが、後に海外からの呼称であったユーゴスラビアへ正式に改称した。王国、連邦人民共和国、連邦共和国と変化してきた。首都はベオグラード。
セルビア人のとその王室によってまとめられていたが、第二次世界大戦中にナチスの侵略を受けて王国が崩壊し、実質上の傀儡国家となった。これに対してヨシップ・ブロズ・チトー(Josip Broz Tito)などによる主導のパルチザンで独立を回復し、ナチスを排した。
戦後はチトーを指導者とする社会主義共和国連邦となり、東側陣営の下に入るが、冷戦には東側の中心国家であったソ連に与せず、外交上中立的な立場を通し、インドやガーナなどの非同盟国家にも積極的に支援した。
チトーが死去した後は国家間のまとまりを少しずつ失い始め、更にそれに追い打ちをかけるように、スロボダン・ミロシェビッチ(Slobodan Milošević)政権成立後に始まったセルビア人第一主義的政策が連邦内の他民族の反発を招くことになった。
その結果として、1991年頃からクロアチア、スロベニア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどが激しい民族紛争を経て独立し、かつての巨大国家の体は失われた。
残ったセルビア地域が共産主義的要素を排した上でユーゴスラビアを名乗っていたが、1998年のコソボ独立を武力鎮圧しようとして米軍やNATOの介入を招いて国際紛争となり、ユーゴスラビアは完全に崩壊し、2003年にセルビア・モンテネグロに改称。それでも、連邦内でのナショナリズムの高揚を制止することはできず、2006年には遂にセルビアとモンテネグロに分かれ、ユーゴスラビアは事実上消滅した。