概要
曹操の跡目を継ぐ際には弟の曹植と激しい後継者争いを繰り広げている。ただし、本人同士の仲の悪さというよりは取り巻き達の権力争いという性格が強い。
人格面
非常に繊細でいささか神経質な面があったようである。
人の好き嫌いが激しく、気に入った人間相手には身分が下の相手でも胸襟を開き接する一方で、嫌った相手には情すら感じさせない行為を行っている。特に、于禁の最期に於ける逸話は三国志の著者である陳寿に「君子の行いではない」と激しく非難されている(三国志の正史は魏を正統な王朝としているにもかかわらずである)。
演義では(不可抗力とはいえ)弟の曹熊を心労のために自殺させ、曹植に無理難題をけしかける(「七歩詩」)などの、一種の陰険さとして描かれた。ただし、前者のエピソードは演義の創作であり(正史では普通に病死による早逝)、後者は史実を元にしてこそはいるがある程度の意図があったものである。これについては次項で記す。
政治面
一方、政治面では非常に優秀であった。
上記にあるように曹植をはじめ親族を僻地に封じ領地変更を頻繁に行っていた。その行為を悪い方向に解釈し意地の悪いアレンジを加えた物が演義の曹植の逸話だが、これは別に兄弟を憎んでやったことではない。
これは皇帝への権力の集中・安定を図った施策の一環で、配下による皇族を利用した反逆を防ぐために行った事である(ただし、後にこれが裏目に出て司馬氏の専横を許すことになるのだが……)。彼はその他にも宦官の昇進に上限を設け政治への関与を制限し、皇后を窓口にした外戚(皇族やその親族)の政治関与を禁止している。
また、私刑・仇討ちを禁止し、大逆罪(早い話が皇帝暗殺)以外の密告を罪とするなど社会情勢の安定も図っている。
皇位簒奪に関しては漢を正統としたい民衆の立場からしばしば悪く言われるが、当時後漢の権威はもはや有名無実だったの公然の秘密であり、動かしがたい事実でもあった。
その状況下では曹一族への権力の正統性の移動は時代の要請であったともいえる。実際(形式上とはいえ)漢から魏への皇位継承は正統な手続きにのっとって行われており、そのやり方は司馬氏をはじめ後世の手本となったほどである(もちろん、感情面で納得したくないというのも理解できる話ではある)。
彼の在位はわずか七年と短いが、逆に言えばそれだけの期間でこれほどの成果を挙げているといえる。呉への遠征でこれといった成果を挙げていないことから将才に関しては疑問符がつくものの、少なくとも内政面においては非常に優秀な君主であったといえるだろう。戦闘面に関しては、有能な部下が多かったというのもあるかもしれない。
文化面
彼は父の曹操、弟の曹植と共に「三曹」と後に称えられる、文人としての顔も持っていた。
また、文学を国家レベルで保護しており、中国史上初の文学論評である「典論」を編纂している。現存する最古の文学論評である論文では「文章は経国の大業にして、不朽の盛事なり」とその効用を極めて高く評価している。
変な面
大のフルーツマニア兼ワインスキーでもあった。
梨や葡萄などの果物をマンセーしては詩に書くほどで、ワインに至ってはヨダレを垂らしては唾を呑み込む程の愛飲家である。特に葡萄こそ最高の果物と大絶賛していた。
逆に蜜柑は酸っぱくて大嫌いだったようだ。猫様と気が合いそうだ。
各メディア作品での曹丕
『真・三国無双』
詳しくは曹丕(真・三國無双)を参照
若いころの曹操にそっくりだが、「奸雄の類が棲めぬ世だ!」と父とは相反する考えを持っている。
演者はガンダムX+ガンダムXディバイダー。
アニメ版のラストに登場し、機駕の建国を宣言した。
愚行愚策を繰り返しては曹操軍を自滅に追い込んでいる無能なボンボン。
この作品の魏憎しのスタンスがいかんなく体現されている哀れなキャラ。
魏志 文帝紀 建安マエストロ!
主人公。
蒐集家だったり、美食家だったり、弟曹植との父曹操の後継者争いの苦悩等をあまり描かれなかった曹丕の一面を描いている。
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