本項では 3. について記述する。
解説
乳袋とは、普通の材質の服を着ているはずなのにボディスーツのように布地がおっぱいに貼り着いて谷間や下乳、乳房全体の形が露わになっている様。転じて
「まるで服におっぱいの形をした袋がついているようだ。」という意味で作られた言葉である。
広義には「重力に逆らって胸の下が引き絞られた服装」という意味も含まれている。
「おっぱいアーマー」もボディラインが出ているという点では同じだが、鎧が胸の形に合わせて作られているので似て非なるものである。
乳袋が生まれた理由
これには2種類の理由があり、1つがあまりに現実的に描いてしまうと見栄えが悪くなるからであり、もう1つは画力不足や服の構造の認識不足により無意識に乳袋を描いてしまうからである。
見栄えを良くするため
心理学、精神分析学において対象の悪い部分を無視する、全てを肯定的に認知することを理想化という。乳袋は、いわば人体描写の理想化(デフォルメ)である。
現実の衣類は乳房に限らず、漫画的な描写に反し、肌に密着せず、たわみ、膨らんでいる。特に乳房の下に布は張り付かないため、乳頭部分から真下に布地が下がり、胴回りが膨らんで胴体が太いように錯覚させてしまう。
実際、胸の大きい人は、大き過ぎるが故に着られる服が少ないことが悩みとなっている。
絵画は、目が三次元で捉えている情報を二次元に落とし込む技術であり、精緻な描写を重ねても違和感は必ず起きる。従って絵の技術の進歩は、理想化と共にあったと言っても良い。
つまり、現実と違う描き方をしなければ、むしろ違和感を無くすことが出来ないという課題である。
また画法とは、美しい絵を描く技術である。そこを突き詰めていくと現実と異なる描写であれ、美しく見えることの方が重視されると考えられて来た。
このために実際より大きく描く、角度を着ける、暗くする、取り去る(描かない)などの手法が取り入れられて来た。
そのような画法の理想化(=現実の不快な部分を取り去る)が辿り着いたのが、古代エジプトの壁画、日本の浮世絵、カートゥーン調、漫画絵(アニメ絵)である。これらはいずれも現実から大きくかけ離れた描写をしているが、美しく、より違和感なく認知されるように発展した技術である。
乳袋はより不都合なく絵を見せるための技術の一つなのである
画力及び理解不足のため
人体を描くとき、まずは体を描いてから、その上に服を描くという手順の人は多い。
その際に巨乳キャラクターだと、普通なら服の布はピーンと張っているか幕のように垂れるかの状態になる。
しかし服を着た時の構造を理解していないと、生地が胸に張り付いたような状態で描いてしまう。
その結果、意図せずに乳袋が生じてしまうのである。
このため、一部では「乳袋=下手な絵」と認識されている。
なお、広義の乳袋に相当する服は立体裁断などによって実現されており、巨乳であってもお洒落を楽しみたい女性向けに需要を確立している。
ただし「乳袋」という呼称自体が性的あるいは批判的な文脈から発生したものであることを考えると、リアルで(特に面と向かって)この用語を使うことはあまり推奨されないことに注意が必要である。
実際に乳袋は「リアリティが無くて気持ち悪い」という意見と、「リアルでなくても見栄えが良い」
という意見が常に対立しているのである。
問題点
乳袋には使用に至る二つの理由が混在している。
一つは上記でも述べられている胴回りをスッキリと見せるための視覚効果。
大雑把な段階分けとしては
- コルセットなどの胸の下部を締め付ける衣服を使用せず、それらと同様の効果が確認できる。(締め付けがスカートやズボンの位置で起こった場合は乳テントとなる。)
- 二つの乳房を一つにまとめて包んだ形になる。(谷間は確認できないか、ごく自然な凹凸やシワのみで確認できる程度。)
- 一つの袋から完全に分かれているわけではないが、二つの乳房の形が確認でき、谷間はしっかりとした凹凸や輪郭線で描かれ、脱いだ時の乳房の形が想像できる。(男性向けはこの段階の物が多い。)
- 想像しなくとも裸の乳房とほぼ変わりない、ボディペイント状態。
等が挙げられるのだが
この内一番上の段階ではセックスアピールの意味合いはほぼ無く女性向けでも見られる事もある。
対して一番下になると視覚効果よりもセックスアピールの意味合いが強くなり卑猥な表現となる。
人によってどの段階の事を指すかバラバラなため、話し合いの上で誤解を招く原因となっている。
(中には1.の段階の作品を卑猥な使用法ではないにもかかわらず乳袋と言う言葉で一纏めにし、
4.に対して発言するかのように卑猥な存在として批判している事例もある。)