CV:三浦千幸
概要
本編から約1820年前に、「大地の悪魔」と接触し、エルディア人こと「ユミルの民」の始祖となった女性。そのため通称始祖ユミルと呼ばれることが多い。
マリア、ローゼ、シーナの三人の娘がいたとされ、三つの壁は彼女達の名前から付けられたとされている。
ヒストリアが持っていた本に、大地の悪魔と思わしき者がユミル・フリッツと思わしき少女に(禁断の)果実を渡している絵がある(アニメ版では少女の名前は「クリスタ」)。
しかし、実際には契約したのではなく、穴に落ちたことによる偶発的な接触だった。加えて大地の悪魔は存在せず、存在したのは「生命」の一種である光るムカデであった。つまり、エレン・クルーガーがグリシャ・イェーガーに話した、いくつかの説の一つは当たっていたというわけである。
フリーダ曰く、優しい少女だった。
また、グリシャ・イェーガー達エルディア復権派には、「始祖ユミルは巨人の力を用いて、道や橋を造るなど大陸の発展に貢献した」と言われており、またある者からは「始祖ユミルは『有機生物の起源』と接触した」と言われている。
ユミル・フリッツは死後、巨人の魂を九つに分け、「九つの巨人」と呼ばれる、「始祖の巨人」「超大型巨人」「鎧の巨人」「女型の巨人」「顎の巨人」「獣の巨人」「車力の巨人」「戦鎚の巨人」、そして「進撃の巨人」が誕生した。
また、「九つの巨人」を継承した者は継承してから13年しか生きられず、それはユミル・フリッツが光るムカデと接触してから死亡するまでの期間と同じであり、「ユミルの呪い」と言われている。
また初代レイス王(第145代フリッツ王)と『不戦の契り』を交わし、以降レイス家(フリッツ王家)が継承する始祖の巨人はその思想に縛られ、真の力を発揮できなくなった。
出自
※物語における重要なネタバレ有り
当時エルディアは他族から領土や人民を確保する略奪民族であり、年端もいかぬ少女ユミルも親を殺され舌を引き抜かれ、奴隷として強制労働を課せられていた。
ある日ユミル・フリッツは豚の飼われている柵の入口を開けたまま放置し、その結果豚を逃してしまった。(理由は推測ではあるが余談にて後述)
その罪を問う初代フリッツ王に対し、他の奴隷達は迷うことなくユミル・フリッツを指差す。
そして罰として王から自由という名の追放(実質的には死罪)を言い渡され、野犬や同族達に追われて重傷を負う最中、大樹の洞に落ちて脊髄や木の根に似たなにか、つまり上述の有機生物の根源=光るムカデと接触した事で巨人化を果たす。
以降、フリッツ王に言われるがままエルディアの領地を拡大し、巨人の力を欲した王の妻とされ、三人の娘(長女マリア、次女ローゼ、三女シーナ)を産み、敵国マーレと戦う。
そしてある時、投降した敵が謁見した際、隠し持っていた投げ槍でフリッツ王を襲い、ユミル・フリッツは身を挺してフリッツ王を守った。致命傷を負ったユミル・フリッツに三人の娘たちが泣きすがる中、フリッツ王はさっさと傷を治して起きて働けと命じ、「我が奴隷ユミルよ」と呼びかけた。この期に及んでも奴隷としてしか認識されていない事実に絶望し、生きる意志をなくしたことで、巨人の力で回復することなく息絶えた。
しかし安らかな死を迎えることすら叶わず(ジーク・イェーガーの発言に、「生命」の死や種の絶滅は増殖目的に違反し、ユミル・フリッツは恐怖という罰則から逃げようと必死だった。より強く、より巨大な不死身の体を生み出し「死さえ存在しない世界」へと逃げた、とあるので死を迎えることができていないのはユミル・フリッツの願いである、という解釈もできる)、その後巨人の力を継承させるためにフリッツ王は亡骸を切り刻み娘達に喰わせる。
それから2000年間、『道』の中で存在し続け、たった一人でフリッツ王家、歴代の始祖の巨人達の命令に従い、全ての巨人を創り続けていた。
ユミル・フリッツは生涯フリッツ王を始めとする王家の奴隷として扱われ、死後もその呪縛から逃れることはできなかった。彼女は未だ奴隷のままであり、フリッツ王家に抗えない。
王家の血を引く始祖の巨人が全ての巨人を統率できるのはこのためであり、『道』を通してユミル・フリッツに命令を下すことでその力を行使してきたのである。
———娘たちよ 子を産み増やし続けよ
ユミルの血を絶やしてはならぬ
娘が死ねば背骨を孫に食わせよ
孫が死ねば子から子へ
我が後生においても
我がエルディアはこの世の大地を巨体で支配し
我が巨人は永久に君臨し続ける
我が世が尽きぬ限り永遠に……
そして二千年後
王家の血を引くジーク・イェーガーの「すべてのユミルの民から生殖能力を奪え」という命令を実行しようとしたが、エレン・イェーガーによる、
「終わりだ」
「俺がこの世を終わらせてやる」
「俺に力を貸せ」
「お前は奴隷じゃない 神でもない ただの人だ」
「誰にも従わなくていい お前が決めていい」
「決めるのはお前だ お前が選べ」
「永久にここにいるのか 終わらせるかだ」
「オレをここまで導いたのはお前なのか?」
「待っていたんだろ」
「ずっと」
「二千年前から 誰かを」
これらの言葉に涙を流し、自らの自由意志によって、エレンの「この世を終わらせる」という願いに応じた。
第1話『二千年後の君へ』は、自由を求めたユミル・フリッツからエレン(あるいはミカサ)への呼びかけであり、第122話『二千年前の君から』でエレンはユミル・フリッツからのそれに応えたのである。
「天と地の戦い」で光るムカデや九つの巨人、無垢の巨人が消失したことから、ユミル・フリッツは二千年にも及ぶ呪縛から解かれることとなり、最終巻の加筆ではユミル・フリッツの幻影がミカサの前に現れ、ミカサから「おやすみなさい…ユミル」と言われたのを最後に消滅した。
余談
エレンを止めようとする勢力に無数の知性巨人をけしかけ、それでいてその敵にも巨人の力を与え、ジークの死後もエレンに始祖の力の行使を許し、エレンとミカサの口付けを見て微笑むなど、彼女の行動には矛盾と謎が多く、エレンですらその真意を正確には把握していない。エレンは「自由を求めているのに、自分を奴隷としか思っていないカール・フリッツを愛してしまった彼女は愛の苦しみから解放してくれる誰かを求め、ついに現れたのがミカサだった」と最終話で発言している。
始祖ユミルが強大な力を持っていたのにもかかわらず決して反抗などをせずにいたのは、奴隷であったからだけではなく、フリッツ王への愛から逆らえずにいた為であり、それ故に彼及びその一族の命令を聞いていたのだと思われる。
それは結局のところ愛情の奴隷というものであり、彼女はその状態を二千年続けた後エレンの呼び掛けで目を覚ました。
ユミルは己を自由を渇望するエレンに重ね、またエレンを慕い何でも彼の言うことに付き従っていたミカサにも重ねていたのではないかと考えられる。
自由を求め大量虐殺という過ちを犯すエレンを自由の奴隷という状態から、またミカサはエレンを止めることで愛の奴隷という状態から解放させることこそが、ユミルにとって必要なことであったのだと推察される。
生前に家畜の豚をあえて逃したのは柵に囚われて自分と同じ奴隷同然の扱いを受けている彼らに同情し、せめて彼らだけでも自由にしてあげたいと彼女が思って逃がしたのでは思われる。
また、便宜上ユミル・フリッツと表記しているが、フリッツ王にとってユミルは奴隷でしかなく、奴隷に王の姓を与えたかどうかは不明。
王家の血を引く巨人の謎
作中ではエルディアの王家の血を引く巨人のみ、始祖の巨人を介して他の巨人を操る力を発揮できる。
しかし、ユミルの民の祖先は上記の様にフリッツ王との間に出来た子供であり、そう考えるとユミルの民全員が王家の血を引くことになってしまう。
作中ではこの謎については明かされず、読者の間で考察されているに止まる。
その中では、フリッツ王の正室の子とユミルの民の間にできた子が王家の血を引く巨人になったと考察されている。
関連タグ
アリス(ARMS)…作者が影響を受けたと公言している作品の登場人物。全ての始まりであり鍵を握るキャラクター、薄幸であった生涯、未知の生物に寄生される、等非常に共通点が多い。
以下、最終巻での重要なネタバレを含みます
パラレルワールドと思われた嘘予告「進撃のスクールカースト」が、実は本編より100年後の世界であったことが判明。
ある映画を見て帰っている(現代の)エレン、ミカサ、アルミンの近くに、(後ろ姿だが)ユミル・フリッツに似た人物とその娘三人が歩いている姿が確認できる。
「死すら存在しない世界」ではなく現実世界を幽霊のように歩いている始祖ユミルもいるので、まるっきり転生した生まれ変わりというわけではないようだが、幸せな未来を歩いている模様。