カナンで信仰された嵐と雷雨の神で、慈雨により豊饒をもたらすとされる。
そのルーツはメソポタミアの暴風神アダドに見られるとされ、それがシリアに入ってバアル・ハダド→主神バアルになったといわれる。
旧約聖書ではユダヤ教と対立し、ユダヤ人を誘惑する異教の神として書かれる。
元々はセム語の「主、主人」を意味する言葉で、様々な神名に付く。(バアル・ゼブル「高き館の主」、バアル・ペオル「ペオル山の主」など)
またソロモン72柱のバエルの「東方を支配する、東の軍勢を指揮する」という設定は、上記バアル・ハダドおよび数多のバアル神が信仰されたカナンやウガリット、バビロニアの地がキリスト教圏の東方世界に位置する為とも言われる。
女神転生シリーズのバアル
初出作品はFC女神転生で種族は邪神。
以降の作品では“魔神”に分類され、魔王や邪神としての性格はバエルが受け持っている。また作品によってはバールとも表記される。
シリーズを通してユダヤ教に貶められる前の豊饒神・暴風神としての性格が強く描かれており、真・女神転生2以降は男性のデザインで登場する。
一方で偽典・女神転生では「魔王バール」という悪魔が登場する。この悪魔はバエルを中心とした複数のバアル神(分霊)の集合体であり、カナンの主神としての性格と対立宗教から押しつけられた魔王としてのイメージが混在した存在で、上記の魔神バアルとはまた別の悪魔として描かれる。
- 女神転生
種族は邪神。刀を持った女性というデザインで、邪神の中で最もレベルが低い。
旧約・女神転生ではDDS2バアルの色違いデザインで登場する。
- 女神転生2
種族は魔神。デザインは下半身が蛇の翼を備えた女性。
かつて唯一神に打ち倒された古き神の一柱で、神によってバエルとベルゼブブに引き裂かれた。バエルが変化したカエルを魔界にいるベルゼブブの下に持っていくと両者が合体してバアルの姿を取り戻し、これをきっかけに真の敵である唯一神と主人公の戦端が開かれる。
バアルの女性形“バアラト”という言葉があり、バアルの配偶神や女神の名として使われた。DDS2のバアルはこの女神としての性格を内包した姿だと思われる。
- 真・女神転生
メガCD版追加悪魔として、魔神バール(デザインはFC女神転生2に近い)が登場。高位の女神を凌ぐ能力を備える。
- 真・女神転生Ⅱ
種族は魔神。杯を持つ冠を着けた青年の姿で、以降の作品でも同デザインのバアルが登場する。
- 偽典・女神転生
魔神バールハダドとして登場。角のついた冠を着け棍棒と矛を手にした戦士という姿。
魔王バールの分霊の中でも強力な存在でバエルの腹心として暗躍し、レジスタンス組織を壊滅に追い込むなど主人公側に多大な損害を与えた。
- 真・女神転生Ⅲ
魔神バアル・アバターが登場。千晶が啓いた強者のみが生きる“ヨスガ”のコトワリに応じた神が顕現した存在。
混沌の軍勢と戦い王権と結びついた神話のバアルの性格の他に、「バエルの呪い」を使用するなど女神転生シリーズのバアル(バエル)の性格も反映されている。
⇒バエル
もしかして:バール