蛮勇引力
ばんゆういんりょく
概要
犬は、鎖につながれることで生きのびる道を選んだ
狼は、奴隷になれぬがゆえに絶滅に向かっている
蛮勇引力とはかつて山口貴由がヤングアニマルにて連載していたサイバーパンク漫画である。冷厳なる管理社会が敷かれた架空の首都「神都」を舞台に、侠客然とした漢(おとこ)たちが人間の尊厳を守る戦いを繰り広げる熱血漫画であり、山口作品のテーマである「支配への抵抗」を突き詰めた内容となっている。
登場人物達は江戸時代初期の一大事件「由比正雪の乱」に携わった者達を名前のモデルにしており、この物語が「体制に反発する者達の戦い」であることを強調している。
ストーリー
何事かを成し遂げた男の魂は不死であり、何者かになろうとする若者の胸にそれは宿る
支配者達は便利という名の仮面を付けて、ゆりかごから墓場に至る人の暮らしのあらゆる場面で、その財産を何重にもしぼりとる社会をつくりあげた
奴らが勝手に決めたものを自ら望んでほしいものと思い込み、奴隷であることも気付かないまま、ただ一度の人生を文明の檻の中で生きてゆく
覚めるに値しない世の中だ
鷹よ、おまえの欲しいものはおまえだけがつかみ取れる何かだ
狼よ、花や鳥や風と月と共に生きよ
登場人物
由比正雪
「肩書、所得、出身校、マイホーム、家柄、名声、そんなもの全て捨て去ったところに男の値打ちがある!」
神機力という架空のエネルギー産業で日本を支配せんとする徳川惑星にたった一人で戦いを挑むために「神都」に乗り込んだ浪人者。胸に入れ墨で刻んだ「敬人尊野蛮」の言葉をモットーに、蛮勇の猛るままに管理社会と戦いを繰り広げる男である。
敵であれば容赦なく殺す残忍さと、義理人情を重んじる暖かさを併せ持った曲者であり、その人柄は圧政に苦しむ者達の心を惹き付けてやまない。
ハイパーテクノロジーを磨き抜かれたドス一本で打ち破る戦闘力の持ち主であり、その生き様は侠客といって差し支えない。
丸橋忠弥
神都の体制からつまはじきにされた者達で構成された自治地区である「やすらぎ」のボス。命がけでメルトダウンを停止させる特攻部隊、「原子力決死隊」の元隊員であり、有事の際にはパワードスーツである多重防護服「和」を着込んで戦いにおもむく戦士である。
やすらぎに落ち延びた正雪と意気投合し、共に徳川惑星に戦いを挑むこととなった。
筋骨隆々の超人であり、男気がそのまま人になったかのような豪快な人物。正雪曰く「男という名の生き物の最後の一匹」
徳川惑星
新エネルギー「神機力」を開発した徳川神機力産業の総帥。財政界の巨魁にして日本を影から支配する権力者である。生まれながらに体内で強力な電流を生成することが出来る超人であり、神機力とは彼の生体電流を機械増幅したものである。
進化したウィルスによる人類滅亡を阻止すべく、神機力によるハイパーテクノロジーで構成した超管理社会「神都」を作り上げ、人類と神機力の融合を推し進めようとしている。が、それは同時に人から人間性と尊厳を奪い去る行為でもある。
独善的で傲慢な輩であり、自らの所行も「人への愛故の行い」といって憚らない。