山口貴由
やまぐちたかゆき
デビュー作は「サイバー桃太郎」。代表作は「覚悟のススメ」「 シグルイ」など。主に秋田書店系列の雑誌で作品を連載する。
デビュー前には小池一夫せンせいに師事している。
その師の教えを仰ぎ、「銀座の街を裸の女が駆けていくような」作品を描き続ける異色の漫画家である。
ネット上では、しばしば「若先生」と呼ばれることがある。
これは「シグルイ」の伊良子清玄の「若先生と呼べ」という台詞にちなむ。作中の虎眼(先生)・清玄(若先生)という関係が、「シグルイ」における南條範夫氏(原作)と山口氏の関係を彷彿させるためである。
後にSNSを通じて、この通称が本人にも知られていたようだが、この時既に年齢は57歳に達しており、少し不思議な気分を味わっているかのような発言をしている。
男らしく硬派なキャラクターが主役を務めることが多い。
また、ほとんどの作品でグロテスクな描写が頻出する。わけても臓物(特に腸)に並々ならぬ執着があるらしく、幾度もド派手にピックアップされる。
同様に、男性キャラクターの全裸(またはそれに近い半裸)も頻繁に描かれる。
いわゆる「燃え」漫画の系譜に連なる作品を多く手がけるが、どれも一筋縄ではいかない、非常に癖のあるものがほとんどである。台詞センスや演出も独特であり、世界観にそぐわない若者言葉をいきなりブチ込んできたり、極太明朝体で決めゴマを飾り立てるなど、インパクト溢れる個性的な作風が特徴である。
アクの強いキャラクター造型もさることながら、デザインセンスもずば抜けており、曲線と直線が絶妙に絡み合ったメカニックやグロテスクながらも不思議な格好良さがあるクリーチャーなど、好事家達を唸らせるデザインを数多く生み出している。
デビューから「蛮勇引力」あたりまでは、シリアスな物語とユニークなキャラクターを織り交ぜた破天荒な作風が特徴だった。
しかし、2003年開始の時代劇「シグルイ」にて、(原作付きということもあってか)シリアス一辺倒の重厚な作風へと変化。だが、救いの無い「シグルイ」の物語を描き切ったことで、精神的に相当なダメージを抱え込んでしまい、「勧善懲悪のヒーローを描けなくなってしまった」という。
そのため、続く「エクゾスカル零」も同スタイルでのスタートとなり、ドライで陰鬱な物語が展開されていったが、同作の中盤あたりから精神的に回復していったのか徐々にギャグ的なノリが見え始める。
そして間を置かず連載された「衛府の七忍」では再び破天荒な勢いを復活させ、初期作風と中期作風のハイブリッド的なスタイルへ変化することとなった。
最新作である「劇光仮面」では長年培ってきた作風を敢えて封印し、外連味を抑えた小説的な作風を開拓。画業三十年を超える山口貴由が満を持して描く現代劇であり、己の創作原点を生々しくえぐり出す私小説のようなスタイルを取っている。
一方同作では、昭和特撮には特有の実在性があったと語っているが、作者自身は令和の特撮映画「ゴジラ-1.0」を視聴し、現代でもこの実在性はあったと柔軟に受け止めている。
- サイバー桃太郎(ジャックポット{リイド社}、1990年)
- 平成武装正義団(ジャックポット{リイド社}、1992年)
- 炎のうさぎ戦士(ジャックポット{リイド社}、1992年)
- 悪鬼御用ガラン(ジャックポット{リイド社}、1993年)
- 覚悟のススメ(週刊少年チャンピオン{秋田書店}、1994年~1996年)
- みな殺しのアモール - THE MANHUNTERS 2 -(週刊少年チャンピオン{秋田書店}、1997年)
- 悟空道(週刊少年チャンピオン{秋田書店}、1997年~2000年)
- 蛮勇引力(ヤングアニマル{白泉社}2001年~2002年)
- シグルイ(チャンピオンRED{秋田書店}、2003年~2010年、原作:南條範夫)
- エクゾスカル零(チャンピオンRED{秋田書店}、2010年~2015年)
- 衛府の七忍(チャンピオンRED{秋田書店}、2015年~2021年)
- 劇光仮面(ビッグコミックスペリオール{小学館}2021年~)
コメント
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