概要
CV:佐々木望
『駿府城御前試合』の第一章『無明逆流れ』に登場する人物。
稀有の美貌を持つ齢三十余の剣士。盲目・破足と身体に大きな障害を持ちながらも“無明逆流れ”なる奇剣で虎眼流の剣士を次々と葬った経歴を持つ。
御前試合の第一試合において、虎眼流の生き残りである片腕の剣士・藤木源之助と闘う。
周囲の人間を利用し、高い身分に昇り詰めようとする野心家。妖艶な雰囲気の美青年であり、女殺しと言って差し支えない。
天賦の才で虎眼流の秘技を次々と身につけ、源之助と並び跡目候補の1人と目されていたが、師・岩本虎眼の愛妾・いくとの密通が露見し、仕置きを受けて盲目となり追放される。その後はしばらく音沙汰を見せなかったが、盲人の自治組織「当道座」の最高位である検校と関わりを持ち、虎眼流への復讐を開始する。独自に編み出した剣技“無明逆流れ”で虎眼流の高弟達を次々と葬り去り、かつての師である虎眼もこれにて討ち取った。
母が夜鷹(下級の売春婦)という下層の生まれのため、己の出自に対するコンプレックスが強く、異常な出世欲の元となっている。「伊良子清玄」の名は元々の名前ではなく、かつて江戸で弟子入りしていた医師の名前を盗んだものであり本名は不明である。なお虎眼流内では、「江戸出身で染物屋の勘当息子」という嘘の来歴を語っていた模様。
過去に虎眼流の高弟達が自身の知る身分だけを笠に着た侍とは違うと気づき仲間意識を抱いたが、源之助のある一言により屈辱を味わう。そのため虎眼流の中でも特に源之助には強い恨みを持っているものの、源之助の実力は誰よりも高く評価しており、主君である忠長を前にして「虎の中の虎」とさえ述べるなど、歪んだ友情を抱いている。
己の野心のためには人を造作もなく蹴落とす冷血漢だが、苦労した出自ゆえか子供に対しては別人のような優しさを見せる一面もあった。また、身分差別主義者や人を人とも思わない思想の持ち主に対しては殺意を抱く側面があり、彼の前でそのようなことを言った者は男女の区別無く黄泉路へ送られた。矛盾しているが、彼が最も嫌悪しているのは彼が成ろうとしている”武士”という階級そのものである。