概要
濃尾無双と謳われた虎眼流の創始者。本作における最強クラスの剣客の一人。
右手の指が六本あるのがチャームポイント。
肉親は一人娘の三重のみで、正妻とは死別。いくという妾を側に置き溺愛している。
自身が編み出した我流の剣術を元にしたものが虎眼流剣術であり、戦場や修羅場で学んだ実戦重視の剣術を教えている。その術理は合理的かつ多様性に富んでおり、元が我流であるためか弟子達の創意工夫も大いに推奨している。ただし、虎眼の才能をベースにした剣術であるため、修得にはそれ相応の体力と才覚が求められることから、免許皆伝に至れる者は少数である。
年齢は五十近く。いつの頃からか曖昧な状態が続くようになり(おそらく認知症)、頻繁に失禁したり「種ぇ」とか「いくぅ」とかつぶやきながら道場を徘徊している。恐ろしいことに、こんな状態でも剣の業前は全く衰えていない。
たまに正気に戻るが、正気の状態でも元々苛烈な性格なのでそれはそれでヤバい人。だが、親に殺されかけた源之助の命を救うなど、単なる悪人ではない一面もあったりする。
ただし、曖昧な時は「屋敷内で犯人不明の他殺死体が見付かった場合、まず、真っ先に容疑者扱いされる」、正気の時は「弟子への物理的パワハラは当り前。予想外の事でブチ切れて、弟子に重傷を負わせる事も有る」など、どっちに転んでも危険人物である事に代りは無い。下手したら正気の時の方がよっぽどタチが悪い。
弟子は勿論、家人に対しても横暴極まりない人物であり、かつての正妻を座敷牢に放り込んだうえに彼女が心を病んで自害してしまった際も「たわけ」と吐き捨てて哀れみもしなかった冷血漢である。
こんな無体極まる人間だが、彼の元に弟子入りを願う者は数多有り、虎眼流は濃尾において最強の流派と持て囃された。ある意味、“強さ”への憧れがどれだけ人を惑わし狂わせるかを読者に知らしめる存在でもある。
なお、これらの苛烈な気性は本作のみの設定。
漫画版の作者・山口貴由によると、モデルは原作者である南條範夫だという。
原作版(とみ新蔵や森秀樹の漫画を含む)ではここまで異常なキャラではなく、三重が惚れていることを理由に跡目を伊良子にすると言うなど、かなりまともな人間として描かれている。もちろん愛人の乳首を素手で切り落としたりも、ゴンザの口を刀で塞いだりも、おちょこを齧り割ったりも、刀を勝手に持ち出した犯人を刀掛けを舐めて看破したりもしない。ほんとに普通の人である。