概要
日向夏氏による中華風ミステリー小説。
web小説投稿サイト『小説家になろう』にて2011年10月より連載開始。2012年に主婦の友社のRayBooksより単行本全一巻で書籍化。2014年に同社のライトノベルレーベル・ヒーロー文庫より書籍化し、2021年4月末時点で11巻まで刊行している。挿絵担当はしのとうこ。
また、『月刊ビッグガンガン』(スクウェア・エニックス刊、作画:ねこクラゲ、構成:七緒一綺)と『サンデーGX』(小学館刊、作画:倉田三ノ路)でコミカライズ連載している。単行本zは2022年6月時点で小学館版は既刊14巻、スクウェア・エニックス版は既刊9巻。小学館版のみ「猫猫の後宮謎解き手帳」というサブタイトルが付せられている。語られる話の内容は同じだが、描写などが違う部分もある。
中世の東洋に位置する架空の大国が背景にあり、その帝の妃たちが住まう後宮が主な舞台となっている。下女として後宮へ売られた薬師の少女・猫猫(マオマオ)が謎の多い美貌の宦官・壬氏(ジンシ)と共に後宮に関わる人間模様や騒動・陰謀を紐解いていく推理小説である。
中世の後宮における帝や妃、それを取り巻く人々の哀切や情緒を、主人公・猫猫の淡々とした視点で綴っていく作風が特徴。恋愛物としても紹介されているが、猫猫のツンデレというよりドライな性格もあって、もう一人の主人公である壬氏が空回りするコミカルな面が強い。
花街を舞台の一つにおき、主人公自身が花街お抱えの薬屋薬師、生活の為に外を出歩き、翌々は身売りの身が待ちかねない危険と隣り合わせの生活を送ってところを後宮に拾われたという経緯も相成り、漫画版2作はいずれも青年漫画による連載、原作小説も「なろう」連載時にはR-15指定、グロ描写あり(R-15G)の注意喚起を行っている。
2019年8月22日、ねこクラゲ作画の漫画版が「次にくる漫画大賞」2019年度コミックス部門第1位に選定。
2020年2月、原作小説9巻が通常版とドラマCD付き限定特装版と並行して発売。脚本は原作者日向夏。
2021年4月、原作小説11巻が通常版とドラマCD付き限定特装版と並行して発売。脚本は同じく原作者日向夏。
コミカライズのイラスト
ビッグガンガン版(作画:ねこクラゲ) | サンデーGX版(作画:倉田三ノ路※) |
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※pixiv絵師として山田明治名義。
あらすじ(WEB版)
薬草を取りに出かけたら、後宮の女官狩りに遭いました。
花街で薬師をやっていた猫猫は、そんなわけで雅なる場所で下女などやっている。現状に不満を抱きつつも、奉公が明けるまで大人しくしていようと思うのだが、彼女の好奇心と知識はそうはさせない。
ふとした事件を解決したことから帝の寵妃や宦官に目をつけられることになる。
早く市井に戻りたい、猫猫は今日も洗濯籠を片手にため息をつくのだった。
登場人物
主要人物
- 猫猫(マオマオ)
CV:悠木碧(ドラマCD)
本作の主人公。17歳。市井で薬売りとして生活していたが、女官狩りに遭って後宮に売られ、毒味役の侍女となる、小柄でそばかす顔の少女。薬師として、作中世界でも稀有なほどの薬学や栄養学を初めとした知識を身につけており、本人も何より毒や薬に対する探求心・好奇心が強い。そんな薬への情熱とは裏腹に、人間に対しての関心は薄く、何事に対しても冷めており、合理主義でドライな性格。
冷血という訳ではなく、責任感や良心は持っている。しかし舞台となる後宮で起こる政への関与には後宮入りする経緯や自身の範疇を超える面倒事には関わりたくないとばかりに消極的で自身の身分を利用して逃避、その才能を披露し宮廷や後宮の高官に天下る政治的野心は持っていない。後宮からの脱走は、連れ去られて来た受動的立場ながら一時帰宅が許されている厚遇や治安上はむしろ身の安全が確保されてさえいる関係から考えていない。
依頼は多く、皇帝からの勅命やその皇弟壬氏、その他上級妃等、才能を評価している目上からの命令と言う体で受動的に引き受けている。ちょっかいをかけてくる壬氏のことは嫌っていないが、その美貌には特に興味がなく、本気で面倒くさいと思っている。
- 壬氏(ジンシ)
CV:櫻井孝宏(ドラマCD)
後宮を取り仕切っている美形の宦官。天女のような美貌と蜂蜜と形容される美声を持ち、彼を狙う者は男女問わず多い。一方で裏では多くの実力者たちと繋がりを持っている謎の人物。公称は24歳だが実年齢は18歳。
猫猫の知識や聡明さに目をつけ、彼女を侍女として取り立てる。以降、猫猫に興味を抱き始めるも、当の猫猫からは邪険にあしらわれている。敏腕ではあるが意中の人の気を引く能力は皆無に等しく、彼になびかない猫猫相手には空回っていたり、なぜかM属性に開花していったりとちょっと残念な人。涼やかな態度や見た目の華やかさとは裏腹に、面倒事を抱え込んでしまう苦労性であり、宦官とは別の顔も持っているようだが……。
なお、本名は華 瑞月(カ・ズイゲツ)という。
宮廷・後宮
架空の国「茘」を治めている現帝。34歳。美髭の偉丈夫。好色であるが、政治能力は持っており、抜け目がない御方。ふくよかな女性が好み。
- 高順(ガオシュン)
CV:津田健次郎(ドラマCD)
壬氏付の武官。高順は宦官名。とても気が利き、猫猫曰く癒し系。
- 水蓮(スイレン)
壬氏付の初老の侍女。もとは壬氏の乳母で、現在の皇帝を身籠った皇太后を守り抜いた伝説の侍女でもある。壬氏の母親のように周囲の面倒を見てきた。高順とともに壬氏の正体を知る数少ない人物。
- 虞淵(グエン)
後宮に医者として勤めている、どじょうひげの宦官。性格はいいのだが、仕事はできないおっさん。猫猫からは「やぶ医者」と呆れられたりしつつも、仲良くやっている。
- 紅娘(ホンニャン)
玉葉妃に仕えるやり手の侍女頭。30歳。侍女の鑑のごとく玉葉妃に尽くしている。仕事に関しては鬼だがアメとムチの使い分けが上手い。猫猫が能力を隠していた事情(人攫いに自分の給金の一部が天引きされる)を知ると、猫猫が過失を犯した体にして人攫いへの送金を止めさせる傍ら、今までと同等の給金を「追加手当」として猫猫に直接渡すように取り計らった。
- 桜花(インファ)・貴園(グイエン)・愛藍(アイラン)
(左から愛藍、猫猫、桜花、貴園)
桜花(声):上條沙恵子(ドラマCD)
貴園(声):守屋亨香(ドラマCD)
愛藍(声):河野茉莉(ドラマCD)
玉葉妃に仕える侍女三人娘。活発な桜花、おっとりした貴園、長身の愛藍の三人娘。三人とも働き者で、人が良いが、少し夢見がちなところがある。猫猫をたびたび不憫な子と勝手に誤解しては同情している。
ドラマCDでは、猫猫と共にガールズトークを展開した。
- 鈴麗(リンリー)公主
- 小蘭(シャオラン)
後宮に身売りされた下級下女。14歳。猫猫が下女であった頃からの、ほぼ唯一の女友達。お喋り好きで情報通であり、猫猫によくお菓子で買収されている。
- 子翠(シスイ)
猫猫と親しくなる一人。
- 翠苓(スレイ)
外廷の官女として務めていた一人。
武官・文官
- 李白(リハク)
CV:内匠靖明(ドラマCD)
出世株の若い武官。20代前半。面倒見がよく、下働きの者たちにも目を掛けているが、素直すぎるきらいがある。猫猫や妓女たちに良いように使われていることもしばしば。猫猫曰く、駄犬。
- 漢 羅漢(カン・ラカン)
片眼鏡をかけた狐目の中年軍師。有能であるが、気まぐれな変人。猫猫とはなんらかの関係があり、なにかと彼女に構おうとするが、猫猫からは蛇蝎のごとく嫌われている。
- 漢 羅半(カン・ラハン)
CV:小林千晃(ドラマCD)
羅漢の甥(異母弟の次男)で養子。19歳。やはり狐目に丸眼鏡をかけ、帯には算盤をぶら下げている。猫猫にとっては従兄であり義兄。猫猫からは「世界が数字で見えている」といわれるほど数字に対する認識が優れており、王宮では財務を担当している。
- 羅半兄(ラハンアニ)
羅半の実兄。本人は否定しているが「プロの農民」で、本名を名乗る前に羅半兄という通称が定着してしまった。
- 馬閃(バセン)
高順の息子で壬氏の乳兄弟。真面目で律儀だが、頭が固く融通が利かないのが欠点。父親と同じく壬氏に仕えている。発展途上である一方、腕っ節には目を見張るものがある。
- 馬良(バリョウ)
高順の息子で馬閃の年子の兄。科挙に受かるほどの秀才だが、極度の人見知りで前の職場を辞めた。雀とは政略結婚で一児を設けている。今は壬氏の下で書類作業をしている。
- 麻美(マーメイ)
- 雀(チェ)
馬良の妻。ひょうきんな性格だが腕は確かで侍女の業務の他、壬氏と猫猫の護衛を務めている。
- 桃美(タオメイ)
- 陸孫(リクソン)
羅漢の部下。一度見た顔は忘れないという特技の持ち主で重宝されていたが、先方からの要請で西都の玉葉の兄の元に出仕している。
上級妃
- 玉葉(ギョクヨウ)妃
CV:日笠陽子(ドラマCD)
翡翠宮に住まう、皇帝の妃の一人。19歳。位は貴妃。西国からの血を引き、赤い髪と翡翠の目をもつ胡姫。聡明で、器の大きい人格者だが、食えない一面もあり、壬氏や猫猫をからかって楽しむことも。
- 梨花(リファ)妃
(右)
水晶宮に住まう、皇帝の妃の一人。23歳。位は賢妃。絢爛でありながら儚い印象もある女性。
逆境の中、妃として皇帝の心を掴むべく奮闘している。また、豊かな肢体の持ち主。
- 里樹(リーシュ)妃
金剛宮に住まう、皇帝の妃の一人。14歳。位は徳妃。元は先帝の妃であり、出家して再び後宮入りした経緯がある。皇帝の妃の中では最年少で、気弱な性格。ことあるごとに虐められたり貶められたりする不幸属性。
- 阿多(アードゥオ)妃
柘榴宮に住まう、皇帝の妃の一人。35歳。位は淑妃。皇帝の東宮時代からの妃であり、乳兄弟。男装が似合う中性的な雰囲気の麗人。非常に賢く、凛々しさと同時に、母性のような包容力も兼ね備えている。
- 楼蘭(ロウラン)妃
阿多妃の後に淑妃の座についた妃。17歳。趣向を凝らした奇抜な衣装や装飾を身につけており、外見も中身も掴みどころがない、謎の多い妃。後、壬氏他に忘れられない存在となる。
緑青館
宮廷にも顧客を持つ高級娼館。
- 鳳仙(フォンシェン)
緑青館の元妓女で猫猫の母親。碁と将棋が強く、碁なら羅漢にさえ勝つ腕前の持ち主。猫猫を産んだことで妓女としての価値が下がり、安い仕事に落とされた末に梅毒のために廃人同様となって離れに隔離されていた。猫猫の画策で羅漢に身請けされるも、翌年の春先に他界する。
- やり手婆
緑青館を経営する老婆。けちでがめつく人使いが荒い、妖怪のような婆。昔は売れっ子妓女であったらしい。損得勘定にうるさいが、貸し借りや約束は守る主義。
市井
- 漢羅門(カン・ルォメン)
(イラスト中央)
猫猫の養父であり、薬の師匠。元後宮医官の宦官。腕はいいものの、お人よしなゆえに、貧乏くじばかり引いている不遇の親父。猫猫曰く馬鹿だけど尊敬できる人。
その他
- 白娘々(パイニャンニャン)
各地を転々とする謎の人物。赤目。白髪。白い容姿。人相書きにも記された特徴を持つ。周囲からは仙女と評され実物を目の当たりにした猫猫からは白蛇と評された。
ドラマCD版オリジナル
第一弾
- 佩芳(ベイファン)
CV:不明
音楽の才能があった先帝の中級妃。長らく病に臥せっており、「最後に作った曲をある人物に譲渡したい」と遺言を残したが、肝心の相続人を明かさないまま死去した。
声は、記載はないものの回想として割り振られている。
- 嬌嬌(キョウキョウ)
佩芳の侍女頭。
第二弾
- 孔雀館楼主
CV:中野泰佑
- 禿
関連動画
- 原作9巻付属ドラマCD(サンプル)
下記「【MC:田中美海】ヒーロー文庫通信S 「薬屋のひとりごと」大特集」で紹介されたドラマCD紹介部
- コミックス(ビッグガンガン)版
- 【MC:田中美海】ヒーロー文庫通信S 「薬屋のひとりごと」大特集
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媒体 | 小説家になろう |
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ジャンル | ライトノベル |
出版社 | 主婦の友社、スクウェア・エニックス、小学館 |
コミカライズ | 月刊ビッグガンガン、サンデーGX |
ジャンル | ミステリー、中華風ファンタジー |
職業 | 薬師、女官、侍女 |
舞台 | 後宮、花街、娼館 |
用語 | 茘 |
NL | 薬屋男女カプ |
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イラスト・漫画 | 小説 |
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