概要
「薬屋のひとりごと」の舞台である、中世(唐代中心、文化レベルは十六世紀の明代頃との作者談)の中国をモデルとした国家。
皇帝を元首として、華央州を中心とした多数の州から構成される連邦国。
作中の人物の発言から現皇帝の前の前の時代(50年ほど前)に今の都に遷都した様子。(この遷都先は今現在の猫猫達とは違う民族が暮らしていたと示唆される場面もある。)
遷都したばかりであるにもかかわらず他国の王を招くなど格式を気にしている側面もあったようだ
国家元首
世襲制の皇帝で、基本的には「華」の一族の長男が継承する。
現帝
皇帝(薬屋のひとりごと)も参照
具体的な名前はまだ出ていないが、物語開始時点では在位して2-3年ほど、34歳。作中では「主上」と呼称されることが多い。
巨乳好きのエロ親父(猫猫評)だが、政治的手腕は確かなようで、賢帝と評されている。実母(皇太后)の勧めとは言え、宦官制度や奴隷制度を廃止するなど、専制君主にしてはかなり人道的な施策を実行している。
先帝
劇中では既に崩御した現帝の実父。
真性のロリコン。このため現皇太后は1●歳で妊娠・出産という、母児共に大変危険な出産となってしまった(これが原因で、現帝は茘の国では殆ど行われることのなかった帝王切開で生まれた)。後宮に妃が入ってくる関係上、性的嗜好は暗に周囲に知られていた。
その嗜好が嫌悪されたことに加え、政治的能力も欠如しており、崩御後も「愚帝」と揶揄される始末。
実のところ自身が愚帝であった事そのものには自覚があり、そんな自身を疎ましく思っていたらしく、しかしその自覚ゆえに自ら行動を起こす事が出来ずに書画などの芸事や少女趣味に逃げていた節も見られ、権力と少女趣味から離れれば気弱であれども温厚な人物ではあった旨も見られる。趣味に関して(特に絵)は玄人はだしであり、母の支配を脱して、そちら方面に行き自身を理解してくれる大人の女性に出会うことができれば、愚帝ではなく著名な芸術家として名を遺せた可能性もあったようにも見受けられる。ある意味、王家に(あるいは、この世に。もしくは、女帝のもとに)生まれてしまった事そのものが彼の最大の不幸だった、と言えるほどの人物ではある(だからと言って彼の無能や特殊性癖が許されるものでもないが)。
女帝(先帝の母)
先帝の御世の直前より台頭し、先々帝の崩御と先帝の戴冠によって実質的に国を執り仕切ったのが、先帝の皇太后であり「女帝」と呼ばれた人物で、現帝の祖母。この時期を「女帝の時代」と呼ぶこともある。
下級妃に過ぎなかったが、他の皇帝継承候補が次々と亡くなって運良く成り上がったとされる(もちろん、その「強運」に関しては物語上の現在でも疑義が呈されている)。強権を振ってロリコン愚帝を甘やかす身勝手な母親と見做されがちで、先帝が少女趣味に走ったのも権力を志向する苛烈な母親に対するコンプレックスが大人の女性への恐怖心に結び付いてしまったため、と見られる場合がある。
一方で政治的手腕に長け、能力主義による人事など改革的かつ先進的な施策を用い、民のための政策を行ったと評価される面もある。このような面から、家柄などを重視する宮中の官吏とは敵対関係にもあったようだ。先帝とほぼ同時期に亡くなった。
なお、「女帝」はあくまで通称であり、茘の国で女性は皇帝になれない(いわゆる垂簾聴政)。
国の成り立ちに関する神話
昔々、この国には別の民が住んでいたという。
その民は長を持たなかったが、遠き地からやってきた貴い血筋の女性(にょしょう)がその地に腰を下ろし、その胎に天の子を宿した。それがこの国の最初の皇帝となられた。
女性は王母と呼ばれ、仙人であったとも言われる。月のない夜も見通せる目を持ち、その眼力にて民を従えた。
劇中「選択の廟」にて、猫猫がこの神話に対しての考察を加ている。
また「茘」という文字は国の成り立ちを示すとされ、草冠は「華」の一族、その下を支えるのが三本の「刀」であり、その当時から続く有力な氏族を示すらしい。
登場した州と氏族
中心は「華」の一族と華央州。そして、作中に厳密なルール・設定は明かされていないが、有力な氏族の中でも皇帝より一族を表す通字を賜っており、これを「名持ちの一族」と呼ぶ。その中でも十二支の字を賜った一族は特に有力な氏族である。
それぞれの州を統括するのは元来有力な氏族であった。しかし、上述の「女帝」の実力主義の時代に排斥されたり族滅にまで至ったケースもあり、劇中でも氏族に関する大きな事件が起こっている。
華央州
都のある物語の主な舞台。猫猫など多くのキャラの出身地。作中の「都」は物語開始の50年以上前に現在地に遷都しており、疫病で滅びた別の民族の遺した外壁や水路を利用している。大河と海が近く、利便性が高い。
実在の中国のどの都市に該当するのか推定は難しいが、近隣で稲作ができることから長江河口付近の上海、杭州、南京あたりかと思われる。唐代の都は基本的に長安(現在の西安)なのだが、長安は内陸過ぎるので、海の近くとするには無理がある。
ちなみにアニメ版だと宮殿の見た目が紫禁城に寄っているため北京である可能性もある。
「華」の一族
名乗るのは皇帝と皇弟のみ。梨花妃も華の傍系らしい描写がある。
使うことすら不敬とされる文字とされる。が、反骨精神の強い女華はこの文字を使って自ら改名している。緑青館の三姫という有名人ながら、宮廷官僚の接待までして名前について咎められないあたり、そこまで罪深いという訳でもなさそうである。
この他に壬氏がお忍びで街中に繰り出す際に「壬華」を名乗っている。
あと何故か性的な意味で業の深い御方々の多い一族だったりする。
「馬」の一族
皇族を護衛及び補佐するための氏族で、高順(妻の桃美)、子の麻美(馬の一族の男性に嫁いている)、馬良、馬閃が該当。
高順は現帝の幼馴染かつ乳兄弟で、麻美らも皇弟と幼馴染かつ乳兄弟であるなど、国家元首がこれで良いのか疑問に思う程度には家族ぐるみで親しい仲である。
皇族の乳母、乳兄弟になる事の多い一族である為、力を持ち過ぎる事が無い様に、原則男性は官位・官職に就く事は無く、女性は妃になる事が無い。
本来は「マー」なのだが作中の人物は「バ」で通っている。
「巳」の一族
皇帝直属の諜報機関。上記の「馬」の一族とは裏表の関係。
表向きには「一族」という形を通している(実際、一族の低位にある者は血族継承を行っている者もいる)ものの、その神髄の継承は実は血縁によるものではない。
「実力のある者が才覚のある者を徒弟・養子として養成することで技術や家督を継承させる」「一族に属する人員の全容を把握しているのは最上位の管理者数名のみ」「血族内、特に上位幹部陣の力関係は徹底した実力主義によるランク制であり優れた実績を積み重ねた者が血族における発言権や実権を与えられる」という形式を取っている。まさに「諜報機関」。
また、それゆえにか(特に未熟な一族の構成員は)家族的な情に疎かったり、あるいは人のそうした部分を唾棄するほどに嫌い易い傾向がある。(この事で、作内ではある人物が悲劇に見舞われている)
その性質上、通字である「巳」の字を名に含む事は無い。積極的な出世も行わず、中間管理職を転任し続けている事が多い。
劇中では雀が登場しているが、既に馬の一族である馬良と結婚している。もっとも他の一族と婚姻しても巳の一族としての「お役目」が消えるわけでもなく、むしろ婚姻を利用して他の「名持ち」の動向を調査する事や婚家の立場を利用して「お役目」を達する事を目的としているケースがとても多い。(もっとも馬の一族など一部の「名持ち」は、それを承知で雀ら「巳の一族」の人物を自家に受け入れている)
「漢」の「羅」の一族
いわゆる「隠れた名家」。「漢」自体は茘ではありふれた苗字であり、特別な名家を指さない。しかし漢の「羅」の一族となると劇中の人物の間ではかなり有名。(近年の毀誉褒貶あふれる評価に関しては恐らく変人軍師なおっさん(羅漢)の行動が原因だが…)
簡単に言うと、非常識ではあるが、それゆえに一芸に秀でた傑物を排出することの多い家。いわゆる研究者肌の一族であり、茘における学問的イニシアチブをとる事の多い家のひとつ、として知られている。
もっとも一族の全ての人間がそうだというわけでもなく、個々で優劣に差がある。また、秀でる一芸も各人によって異なるノンジャンルである(軍務や政治に優れた者の子であっても、その才覚は受け継がず算術や農業や医術など全く別の分野に才覚を伸ばすことが多い)ため一族として見た場合には、その権勢は一定しないという難点がある。
現在は、某親父どのが傑出したお人好しと医学バカぶりによって貧乏クジを引かされた事と、おっさんのやらかした御家騒動のせいで、ビミョーすぎる立場である様子。後継ぎの羅半があくせく奮闘中である。
その他
阿多妃の氏族に関する記述はまだ無いが、現帝の幼馴染でもあるので相応の出自と思われる。
子北州
子の一族が治めている、文字通り華央州より北方に位置する土地。森林資源が豊富。
「子」の一族
茘の建国当時から続くとされる名門。
文官トップで狸親父呼ばわりされる子昌が族長を務める。また、阿多妃と入れ替わりで黒曜宮に入内した子昌の娘の楼蘭妃も該当する。
戌西州
商業都市である西都が州都。華央州の都からは旅程が順調であっても片道半月以上かかる。北の北亜連、西の砂欧と国境を接している。内陸の乾燥地帯であり、米などは育ちにくい。新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠あたりをモデルにしているかもしれない。
「戌」の一族
かつて西戌州が治めていた氏族。当主が女性継承である珍しい一族。女帝の怒りを買って氏族ごと滅ぼされた。族滅の経緯は不明。
「楊」の「玉」の一族
戌の一族が族滅されてから、商売人であった楊の一族の玉袁が台頭し、実質的に西都を治めている。胡姫である玉葉妃は玉袁とその妾(コーカソイド系らしい踊り子)の娘である。
「卯」の一族
氏族としては西都編で登場につきここに記載。
里樹妃の母方が本家筋だが、その母親含め既に他界しており、直系は病弱な上に老齢の先代当主とその孫の里樹妃のみであり、その里樹妃も後宮に入内している。里樹の父は卯の一族の傍系から本家へ婿として入ったが、この関係から実権を握っているものの一族の権勢は落ち目の傾向にある。
周囲の国家
砂欧
西の乾燥地帯の国。王と巫女の二君主制。描写からはコーカソイドとモンゴロイドが混じったような人種で構成されているらしい。中東の国がモデルと思われるが、巫女が存在し女性が政治的発言権を有する点から、国家宗教はイスラム教と全く異なるようだ。
北亜連
北の山脈を隔てて国境を接する国。山脈は非常に険しく、西都を経由するしか国境は超えられないとされる。まだ殆ど描写が無いが、「複数の国集まり」という記述があるため、ロシアではなく旧ソ連がモデルではないかと推察される。
亜南
茘の南に位置する。独立国家ではあるものの、物語の100年以上前から茘の属国となっている。
史実や描写される範囲での茘との文化の類似性から、ベトナムがモデルとみられる。
初期に登場した芙蓉妃は、実はこの国の姫(王女とか?)である。
海の向こうの東の国
茘の国の東は海に面しており、その先に島国があるとの描写がある。モデルは日本だろう。
ある人物がその国に渡った描写がなされている。
別名・表記ゆれ
関連タグ
外部リンク
薬屋の時代背景について:原作者日向夏本人による作品背景説明