概要
何らかの謎を作中で提示し、その解明または解明を仄めかす描写を展開させることを趣旨とする作品群のこと。
元々は神秘、謎、不可思議を表す単語だったが、転じてそういった要素を扱った創作作品のジャンルの総称となった。
謎解きに使用される手段にちなんで『推理モノ』と呼ばれることもある。
pixivにおいては謎を用いた作品やそれ自体が謎な作品に付されるタグである。
多くの場合、作中で何らかの事件が起こり、その事件の真相を隠蔽しようとする『犯人』と、真相を暴こうとする『探偵役』の間で物語が展開される。
上記のような定義が含まれていれば基本的にミステリーとなり得る為、ホラーや医療要素を含んだものなど、様々なジャンルのミステリーが存在している。
基本的には小説を媒体とする『推理小説』が有名だが、テレビやゲームなどでも使用され種類は幅広い。
『ミステリ』と語尾を伸ばさずに呼ぶことも多い。
要素
ミステリーは様々な特徴的な要素からなる。
典型的な犯罪事件を扱う場合は、who done it?(誰がやったか、犯人)、Why done it?(何故やったか、動機)、How done it?(どうやったか、犯行手段)が問題となる。原則として、これらが揃わないと真相を暴いたとは言えないからである。また、これらを応用することで発展的な要素、複雑なトリックも生まれている。
その他のミステリー要素一覧
動機
犯罪、特に殺人のようなリスクの大きい犯罪が起こるからには、通常それなりの動機が必要とされる。ちょっとした気の迷いで人を殺すというのは、犯人として処罰されるときの長期の懲役、時には死刑といったリスクには見合わないであろう。動機がない者を簡単に犯人呼ばわりすることはできないのだ。もちろん、それを逆手にとって、通常の方法では動機を解明しようもない事件というのもありうる。
犯行手段
刺殺や撲殺なら、容疑者は犯行に用いられた凶器を犯行時に入手できたのか。凶器があったとして、容疑者に使いこなす腕力や技能があるのか。外傷がないのなら毒を盛られた可能性はあるのか。そもそも、推定死亡時刻に容疑者は犯行が可能であったのかどうか。手段を巡ってもミステリー作者たちはトリックに知恵を絞ることになる。
アリバイ
たとえ被害者を憎んでいて十分な動機がある人間であっても、被害者の死亡推定時刻に犯行を行う方法がなければ、犯人にはできない。これがアリバイである。複数の第三者から死亡推定時刻より前も後も一緒にいたと言われる容疑者は犯人にはできないであろう。アリバイが成立している容疑者が真犯人であることを証明するには、通常はアリバイを崩さななければならない。
密室
被害者が外部から出入りしようのない場所で死亡していたのならば、容疑者全員にアリバイが成立する。被害者と容疑者の一人だけが外部から出入りしようのない場所にいて被害者が死亡したのならば、犯行手段のある容疑者は一人だけである。これが密室での事件である。探偵が密室外の容疑者を告発したいのならば、まずは密室を破らないといけないであろう。
約束事
ミステリーは謎解きを趣旨としていることから、いかに読者に理解しやすい、または受け入れられやすい物語にするかが創作にあたっての課題となっている。
その為、よりよいミステリー作品を作るために様々な約束事が生み出された。
また逆に、これら約束事を意図的に無視した『アンチミステリー』という作品群もある。
推理作家ロナルド・ノックスが制作した、ミステリー制作への十のルール。
同じく推理作家であるウィラード・ハンティトン・ライト(ペンネームS・S・ヴァン・ダイン)が制作した二十のルール。
上に同じ推理作家レイモンド・ソーントン・チャンドラーが制作した九のルール。
ファンタジーとの相性
ミステリーはその性質上、現実的・合理的な世界観を求める傾向が強い。
故に魔法や空想科学などの非現実的な展開に長けているファンタジーとは相性が悪いとされている。
が、現実的には以下のような方法をとることで、ファンタジー要素をミステリー作品に登場させることが可能であり、実際にそのような推理モノも多く制作されている。
また逆に、ミステリー要素を組み込んだファンタジー作品なども登場している。
・ファンタジー要素を『実はトリックで作られた偽物』として登場させる(『うみねこのなく頃に』など)。
・ファンタジー要素の仕組みをあらかじめ読者に明かして理解させ、その仕組みの範囲内でミステリーを進める(『新本格魔法少女りすか』『空の境界』など)。