概要
犯罪などの事件や人的事故の謎解きを追っていく形式の小説である。ミステリーともいう。
このジャンルは古くは「探偵小説」と呼ばれていたように、「探偵=事件の解決者」というイメージで結ばれてしまっている。世界的にはシャーロック・ホームズ、日本では明智小五郎が代表的な探偵として挙げられることが多い。
漫画だが『名探偵コナン』ではコミックス10巻で初登場した服部平次との推理合戦(アニメ:「外交官殺人事件」)に勝利した工藤新一が服部からの称賛に対しコミックス10巻File.6「東の名探偵現る!?」で下記発言の通り服部を諫めている。
推理に 勝った 負けた、 上も下も ねーよ |
もっとも後に続く台詞は『コナン』名台詞ともなっている「真実はいつもひとつ」であり、正解者を作らない・圧力を掛ける平等ではなく、謎解きに参加した関係者一同に各自視点から正解者になる事自体には何の意味もないと釘を刺す平等である点に注意が必要である。
歴史
謎解きの趣向はギリシャ神話や旧約聖書にもある。推理小説のスタイルを確立したのは、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』(1841年発表)と言われている。
日本においては明治時代にデビューした黒岩涙香や谷崎潤一郎らが先駆けで、大正末期の1923年にデビューした江戸川乱歩が我が国におけるこのスタイルを確立した。
ただ当初の名称は上記したように「探偵小説」で、「推理小説」と呼ばれるようになったのは第二次世界大戦後になってから。昭和21年11月に政府告示公布された当用漢字表に「偵」の文字が含まれず、新聞や雑誌等では「探てい小説」「たんてい小説」と表記せざるを得なくなったのがその大きな理由とされる(「偵」は昭和29年3月の補正案で復活)。「推理小説」名称を最初に提唱したのは、1936年に『人生の阿呆』でこのジャンル作品初の直木賞を受賞した作家木々高太郎(以上中島河太郎著『推理小説通史』より)。
最近では『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』といった高校生を主人公としたミステリー漫画のヒット以降、現役学生が主人公となって事件を追っていくパターンも増えている。
趣向
「探偵小説」とは言うが、謎解き役が探偵や刑事である必然性は特になく、弁護士や会計士、大学教授と言った職業もしばしば引っ張り出されている。また、『ミス・マープル』のように主婦などの素人が探偵役となる作品もある。
現在では推理小説の在り方は実に多様化しているが、推理小説家の一人、S.S.ヴァン・ダインはヴァン・ダインの二十則で、推理小説とは下記の特徴を持つとしている。推理小説を書く上での1つの指標となっているが、このヴァン・ダインの二十則を意図的に破った作品も数多く存在する。
- 事前に説明された作中の世界観や登場人物から読者が納得出来る論理的な方法で実現されなければならない
- 唐突に登場した別人が犯人だったり超人によるテレポートや呪術のような超常現象による犯行の実行や解決は推理小説として反則と説いている。
よって探偵、犯人、トリックに制限はない一方、読者は物語の第三者として位置し、探偵が犯人を特定できた道筋を確認できなければならないとしており、これが推理小説を書く上での1つの指標となっていると言えるだろう。
サブジャンル
大手・王道
準大手
新興・試行錯誤
作中に推理小説的要素を持ち、当該部のみに限れば推理小説扱いされている非推理小説
列挙内では、本格推理と、その次代の形とした新本格が主要を占め、ハードボイルド、トラベルミステリー、新本格北村薫の『空飛ぶ馬』を基準とした日常の謎が一大勢力を築いている他は、作家各自の創作自慢・手段の試行に留まり、読者や次代の作家への既存ジャンル選択肢地位には至ってはいない。
既存ジャンルにミステリー要素を付加するも、正はあくまで既存ジャンルというミステリーに「SFミステリー」(SF小説+ミステリー)や「青春ミステリー」(青春小説+ミステリー)等が存在する。
コージー・ミステリーは、日常の謎における海外版とも言える事実上の日常の謎で、本場海外の作品において称されているジャンルである。舞台は狭い代わりに殺人はありの為、むしろライトミステリーの方が近い。
日本では同傾向の作品を北村薫『空飛ぶ馬』をもって「日常の謎」と称する傾向が浸透している事情もあり、むしろ日常の謎に一家言持っている近藤史恵等、一部作家が、あえて「コージー・ミステリー」と称してみせる逆転劇が発生している。
マーダーミステリーは、TRPGから派生したミステリージャンルで、完成済のシナリオ(プロット)や画像等、作品素材一式をもって参加者を集い、同参加者がシナリオ(プロット)に沿ってゲームマスター(内輪間では「GM」と略する)といった監督職管理の下、シナリオの隙間を、各自の見解を展開していく体で補間していき、参加者全員で一つの推理劇を完成させる趣旨のミステリーである。その性質上、個別展開は参加者分だけ存在するものの、大筋の展開は原シナリオ世界観遵守の制約がある。
日本では古くから時代小説との融合も試みられ、江戸時代を舞台にし、犯人取り締まり劇を描いた「捕物帖」の中から、今日の推理小説に相当する寓話を集めて「推理小説」と成した例も存在する。推理小説のスタイルが確立した現在は時代小説の一、推理小説の一ジャンルに甘んずる形で残存、今日に至っている。
書き手では、宮部みゆきのように推理小説が先にあり、時代小説に推理小説のノウハウを含ませられる作家が時代小説として手掛けている例も存在する。
北村薫は、岡本綺堂の『半七捕物帳』にて「シャアロック・ホームズ」の文言を突いた。
超常現象を取り扱ったミステリーには、いずれも、推理もの的には荒唐無稽な非現実的世界観を、好意的解釈かつ分類が曖昧(不要ともいう)を前提として、超常現象の使い手を主人公一行に置いた「特殊設定ミステリー」、犯人サイドに置いた「ホラーミステリー」などが存在する。
「特殊設定ミステリー」は、『心霊探偵八雲』といった、主人公の超能力をもって至難を腕ずくで排除し苦難を(強行)突破するミステリージャンルである。既存ではSFミステリー(むしろSFそのもの)に近い分類となっている。
一方「ホラーミステリー」は『ぼぎわんが、来る』といった、生身人間である主人公一行が、心霊現象といった太刀打ち不可能なホラー現象に対し、ミステリー的叡智をもって、対する心霊現象の一時を凌ぎ切る(例:地縛霊は範囲外に逃げ切れれば追って来られない、等)ミステリージャンルである。脱出劇だけにサバイバル劇に近いスタンスとなっていて「特殊設定ミステリー」より、より知的志向にしてクローズドサークルといった既存のメジャーミステリージャンルの延長に相当するミステリーとなっている。
推理小説に区分される作品
あ
- 明智小五郎シリーズ(怪人二十面相)
- 浅見光彦シリーズ
- 「天久鷹央」シリーズ
- アリスシリーズ(学生アリス / 作家アリス)
- アルセーヌ・ルパンシリーズ
- 烏賊川市シリーズ
- インシテミル
- 右門捕物帖
- エルキュール・ポワロシリーズ
- 鬼平犯科帳
- オーギュスト・デュパンシリーズ
か
- 加賀恭一郎シリーズ
- 鍵のかかった部屋
- 風浜電子探偵団事件ノート
- 仮面病棟
- ガリレオシリーズ
- 金田一耕助シリーズ
- 京極堂(百鬼夜行シリーズ)
- 京都寺町三条のホームズ
- 虚構推理
- 虹北恭助シリーズ
- 薬屋のひとりごと
- 剣崎比留子シリーズ(屍人荘の殺人、魔眼の匣の殺人)
- 告白
- 〈古典部〉シリーズ(氷菓)
- 孤島の鬼
- 珈琲店タレーランの事件簿
さ
- 櫻子さんの足下には死体が埋まっている
- シャーロック・ホームズシリーズ
- ジュール・メグレシリーズ
- 十二人の死にたい子供たち
- 准教授・高槻彰良の推察
- 小市民シリーズ
- 女王蜂
- 城塚翡翠シリーズ
- 女学生探偵シリーズ
- 人格転移の殺人
- 心霊探偵八雲
- セーラー服と機関銃
- 銭形平次シリーズ
- そして誰もいなくなった
- そろばん侍シリーズ
た
な
は
- バチカン奇跡調査官
- 浜村渚の計算ノート
- ハルチカ
- 半七捕物帳
- 万能鑑定士Qの事件簿
- ひきこもり探偵シリーズ
- ひぐらしのなく頃に
- 美少年シリーズ
- ビブリア古書堂の事件手帖
- 黒後家蜘蛛の会
- ブラウン神父シリーズ
- プラチナデータ
ま
や・ら・わ
英字
※追加があればお願いします
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