概要
綾辻行人氏のデビュー作にして代表作、『館』シリーズの第一作品にも当たる。
日本のミステリー界に大きな影響を与え、新本格ブームを巻き起こしたとされる。
この小説の登場を期に、本格ミステリ界では「綾辻以降」という言葉が使われるようになった。
1987年に初版が講談社ノベルスから出版し、1992年に文庫化。その後2007年に全面的な加筆修正を行った《新装改訂版》として再発行。
2008年には『YA!ENTERTAINMENT』からヤングアダルト向けとして発行された。(此方の図丁は作者の妻である作家の小野不由美氏)。
表紙イラストは『天才柳沢教授の生活』で知られる山下和美氏が担当。島に集まった推理小説研究会のメンバーが描かれており、ある意味公式での映像化をコミカライズ版に先駆けて行われている。見比べてみるのも一興であろう。
あらすじ
「お前たちが殺した千織は、
私の娘だった。」
1986年3月26日。大分県K××大学・推理小説研究会の一行は角島(つのじま)と呼ばれる無人の孤島を訪れた。彼らの目当ては半年前に凄惨な四重殺人事件が発生した通称『青屋敷跡』と、島に唯一残る『十角館』と呼ばれる建物である。彼らはそんな島で1週間過ごそうというのだ。
一方その頃、本土では研究会のメンバーに宛てて、かつて会員であった中村千織の事故死について告発する怪文書が、半年前の四重殺人で死んだはずの中村青司の名義で送りつけられていた。怪文書を受け取った一人である江南孝明は、中村千織の唯一の肉親である中村紅次郎を訪ねるが……
登場人物紹介
キャストは実写ドラマ版より。
本土側
- 島田潔(しまだ きよし)
(演:青木崇高)
寺の三男で中村紅次郎の友人。現在は無職で実家を手伝いながら、読んでいる推理小説で人が死ぬ度に経を上げるとか。次兄は大分県警警部。浅黒い肌と鷲鼻、長身痩躯が特徴。
かつてはヘビースモーカーだったが、肺病を患ったため現在は1日1本の節煙中。
- 江南孝明(かわみなみ たかあき)
(演:奥智哉)
研究会の元会員。名前の読みは「かわみなみ」だが、島田はコナン・ドイルにちなんで「こなん」君と呼んでいる。
漫画版ではまさかの美少女キャラ化。ただし汚部屋系。名前は孝明から「あきら」になっている。あだ名で呼ばれるのは恥ずかしがるものの、「221B」と記されている衣服を身につけるシャーロキアン。
- 守須恭一(もりす きょういち)
研究会会員で江南の友人。「中村青司からの手紙」を受け取った江南から相談され、「安楽椅子探偵」を買って出て2人に助言をする。
十角館にやって来た人々
推理小説研究会の仲間。主要メンバーはそれぞれ、海外の有名推理作家にちなんだニックネームで呼ばれている。
- ポウ
医学部四回生。口髭をたくわえた大柄な男。オルツィとは幼馴染。由来はエドガー・アラン・ポウ
- カー
法学部三回生。三白眼と青髭の目立つしゃくれ気味の顎が特徴の捻くれ者。なにかにつけて他のメンバーに噛み付くことが多い。由来はジョン・ディクスン・カー。
漫画版ではエラリイとは幼なじみとなった。また、背部に「the three coffins」「the devil in velvet」と、カーの作品名(邦題『三つの棺』『ビロードの悪魔』)の書かれたジャケットを羽織っている。
- エラリイ
法学部三回生。背が高く色白で、マジックを趣味とする博識な男。本作で探偵役を買って出るが……。由来はエラリイ・クイーン。
ちなみに、手品を披露した際に「ハートの4」に意味深な反応を示したのは、同名のクイーン作品があるため。
- ヴァン
理学部三回生。痩せ気味の青年。とあるつてで角島での合宿を可能にする。由来はS・S・ヴァン・ダイン。
- アガサ
(演:長濱ねる)
薬学部三回生。長い髪をソフトソバージュにした「女王」の貫禄のある美女。由来はアガサ・クリスティ。
- オルツィ
文学部二回生。頬のそばかすが目立つショートヘアの小柄な女性。ポウとは幼馴染。引っ込み思案な性格だが古文などの知識には長けている。由来はバロネス・オルツィ。
- ルルウ
文学部二回生。今期の会誌の編集長。円眼鏡をかけた童顔の小男。由来はガストン・ルルウ。
青屋敷・十角館関係者
- 中村青司(なかむら せいじ)
(演:仲村トオル)
建築家。十角館、並びに青屋敷の設計者。それらの館には
奇妙な仕掛けが施されたからくり趣味があったと言う。半年前の事件で死亡している……はずだが、娘の死を「殺された」と告発する手紙が彼の名で送られている。(あらすじ冒頭の文面。実際の作中では太字部分は傍点)
実写版では新聞記事や十角館館内に青屋敷を描いた絵が登場するが、それは彼の筆によるもの。
- 中村和恵(なかむら かずえ)
(演:河井青葉)
青司の妻。半年前の事件で死亡。その左手首は切り落とされ、未だに発見されていない。
- 北村夫妻
住み込みの使用人夫婦。半年前の事件で死亡している。
- 吉川誠一(よしかわ せいいち)
(演:前川泰之)
行方不明の庭師。事件の犯人と目されているが……。
- 中村千織(なかむら ちおり)
中村青司の娘。1年前に起きた『ある事故』で急死している。
- 中村紅次郎(なかむら こうじろう)
(演:角田晃広)
高校教師。中村青司の弟。島田は同じ大学の後輩。
他メディア化
漫画版
2019年8月25日からは月刊アフタヌーンにて、『Another』のコミカライズを手がけた清原紘氏による青年漫画が連載開始。同氏のTwitterではそれに先駆け、登場人物であるエラリイとアガサのイラストが宣伝記事と共に公開されている。
こちらでは年代が現代に変更されている他、前述したように江南の性別が変更されている。
『Another』のコミカライズを担当したことに絡めてか、作中でエラリイが見崎鳴のセリフ「気をつけて―…もう始まってるかもしれない」を引用している。
なお、単行本巻末では「4コマ十角館の殺人」としてカオスなギャグが繰り広げられている。
その内、3巻収録の「女子会しよう!②」のオルツィの四暗刻は、和了形から牌の並び方、向きに至るまですべて、2011年の麻雀最強戦著名人大会で綾辻氏があがった四暗刻が再現されたものとなっている。
実写版
2023年12月21日、まさかの実写化の発表。
Huluにて2024年3月22日より配信予定。
午前十時より全五話一挙配信。
監督は内片輝氏。綾辻氏と有栖川有栖氏がコンビを組んだ犯人当てドラマ『安楽椅子探偵』でも監督を務めていた縁から映像化を打診し、20年間夢見たという映像化プロジェクトの実現を果たした。
脚本は八津弘幸氏、早野円氏、藤井香織氏が手掛ける。
テーマ曲はずっと真夜中でいいのに。の『低血ボルト』。
下記の特報動画はこれまで幾度となくかわされてきたであろう、「どうやって実写化するの?できるの?」という当然の疑問の言葉から始まる。
また、これに合わせて新装改訂版文庫に実写映像化を宣伝するフル帯が施された。
前述したように江南の性別は漫画版では女性に変更されているが、実写ドラマ版と漫画版のコラボメインビジュアルでは原作準拠の男性の姿で描かれている。
守須含めたシリーズゲストにして犠牲者7人は一律「ミステリ研究会」で括られ、望月歩、長濱ねる、今井悠貴、鈴木康介、小林大斗、米倉れいあ、瑠己也、菊池和澄と、キャストのみが挙げられている。長濱ねるは、一役者としてのインタビューにてアガサ役が明かされた
オリジナルキャラとして江南の下宿先のアパートの大家・松本邦子(演:濱田マリ)が登場する。
ゲーム
「館シリーズ」名義として原作、『ナイトメア・プロジェクトYAKATA』題で発売されたRPGでは、他の4つの館・水車館・迷路館・人形館・時計館への通路となるワープゾーンが繋がっている。
BGMは10拍子だが、1箇所ドラムだけになる部分だけ11拍子になる。
このゲームでは青屋敷も焼失していない状態で探索できる。
千織の手により、原作同様にかつて焼失していたものが再建され、現実を侵食しつつある「悪夢」を止める為に集められた主人公たちの拠点となる。
BGMに使用されたドラムの低音は心臓の鼓動が使用され、物語の進行に合わせて段々と大きくなっていく。また、音楽室のピアノの音も進行するにつれて異様な変化をする。
綾辻氏によるとこの青屋敷はゲーム用の青屋敷で、小説の青屋敷とは異なるとの事。
また、青屋敷の「青」は青司の「青」。同時に海の底の青い色をイメージしていると言う。
バグ
水車館へ続く扉の鍵を開けても入らず、そのまま迷路館へ続く扉を調べると何故か「入りますか?」という選択肢が現れ、そのまま「はい」を選択すると迷路館へと進むことができてしまう。
まだ仲間になっていないキャラが会話に入ってくるなど、おかしな挙動を示し、正しいフラグを経ていないため、当然ながら途中までしか進むことができない。
関連動画
関連タグ
そして誰もいなくなった:作中でも名前があげられている他、会誌の「死人島」の名はこの作品の最初の邦題から取られている。
外部リンク
十角館の殺人:旧版(講談社ノベルス版)
十角館の殺人:旧版(文庫版)
十角館の殺人:新装改訂版
十角館の殺人:児童書(YA! ENTERTAINMENT)版
十角館の殺人:漫画版第1巻
十角館の殺人:漫画版第2巻
十角館の殺人:漫画版第3巻
十角館の殺人:漫画版第4巻
十角館の殺人:漫画版第5巻
十角館の殺人:実写版公式サイト