概要
新本格派ミステリー作家の一人とされる。本格ミステリ作家クラブ現執行会議。日本推理作家協会現会員。
京都大学教育学部卒業。在学中は京大推理小説研究会というサークルに所属しており、同サークルにはのちの妻となる小野不由美や、我孫子武丸、法月綸太郎らプロ作家としてデビューした面々がいる。
ペンネームの正式な表記は綾辻行人(「辻」のしんにょうの点が二つ)である。
推理作家の島田荘司をこよなく尊敬しており、自身が生みだした探偵・島田潔の名は、島田の名字と作品に登場する探偵『御手洗潔』から取ったものである。
また「綾辻行人」というペンネームも、デビュー作の推薦文を執筆した島田によって命名されたものである。なお、島田が名付けた時点では「辻」のしんにょうの点が一つのもの(「辻󠄀」)であったが、綾辻によって点が二つのものに変えられている。
『十角館の殺人』を始めとする『館』シリーズや、サスペンスが色濃い『緋色の囁き』を始めとする『囁き』シリーズが有名。
近年では『Another』も人気作品の一つ。
ストーリーの構図をどんでん返しによって転換させる、パズラー的ストーリー構成が特徴。
物理トリックの構成よりも叙述トリックを得意とし心象描写が非常に多く、叙情的な風韻を色濃くもった幻想文学的な文体を用いる。
これは本人の愛好するエラリー・クイーンらの精巧かつ緻密な本格推理の文体とは趣を異にするもので、幻想小説やホラーなどの傍流にもおいても作品を著したほか、それらの意匠を本領のミステリにおいても好んで用いる。
竹本健治の疑似推理小説(ミステロイド)『ウロボロスの偽書』では、作中に本人として登場。ある秘密を持っている。
その後も『ウロボロスの基礎論』『ウロボロスの純正音律』にも顔を出している。
また『文豪ストレイドッグス』とのコラボでキャラクター化したイラストが公開され、のちに同じくキャラ化された京極夏彦、辻村深月とともに外伝小説に登場している。
人物像
『館』シリーズなど、作中に間取り図が登場する場合、綾辻が仮の図面を作り、小野が正式な図面を引いているという(※小野は父が設計士である影響から、建築図面の制作に明るいため)。
「ウルトラQ」「楳図かずお」「江戸川乱歩」を人生に大きな影響を与えたものとして挙げている。
ゲーマーとして知られる小説家の宮部みゆきをゲーム沼に落とした張本人。
宮部とは生年月日とデビュー年が同じ(1960年12月23日生まれ・1987年デビュー)で、夫婦揃って交友がある。
執筆のプレッシャーから体調不良に陥った宮部に、綾辻が気分転換にと「トルネコの大冒険」を勧めたところ宮部がドはまりし、ゲームが趣味となった事で身心の健康を取り戻したという。
綾辻自身は『wizardry』のような古典的なRPGを好んでいるとのこと。
『館シリーズ』をゲーム化した『ナイトメア・プロジェクトYAKATA』がサウンドノベルではなく剣と魔法のRPGとなったのもその為。
麻雀も好きで上述のゲームでは麻雀牌がモンスターとして登場する他、ミニゲームとして麻雀を組み込む案もあったのだとか。
ただ好きなだけでなくその腕前も高く、1999年には第30期麻雀名人戦(プロアマ混合のビッグタイトル戦)にて優勝し、名人となっている。
夫婦揃って『PUIPUIモルカー』のファンであり、そのハマりっぷりは本人のTwitterのアカウントが実質モルカーアカウントと化すほど。
ちなみに、頻繁に写真が投稿されるモルカーたちのマスコットは妻のお手製らしい。
2022年に新作である『人間じゃない』が発売された際には、なんとモルカーとプチコラボした宣伝用POPと動画が発表された。
綾辻によると、「(新作の小説は)モルカーが読んだら泣くかも。モルカー好きの良い子にはお勧めできないので注意してください。」とのこと。
ALIPROJECTと親交があり、『Another』アニメ化の際「主題歌はALI PROJECTに担当してほしい」というのが綾辻側からの唯一のリクエストであったとのこと。リクエストは無事実現しており、主題歌の『凶夢伝染』発売記念ライブ『凶夢伝染カルナバル』にもゲスト出演している。
作品一覧
『館』シリーズ
推理作家の鹿谷門実(ししやかどみ)こと島田潔が、友人にして担当編集の江南孝明と共に今は亡き建築家・中村青司が建てた建物を訪ねていき、その館で発生した奇怪な事件に巻き込まれていく。
「十角館の殺人」
「水車館の殺人」
「迷路館の殺人」
「人形館の殺人」
「時計館の殺人」
「黒猫館の殺人」
「暗黒館の殺人」
「びっくり館の殺人」
「奇面館の殺人」
「双子館の殺人」
『囁き』シリーズ
各作品は独立しているが、共通するキーワードは「過去に体験した事件、忘れてしまった真実」。サスペンス・ホラーとしての描写が強い。
「緋色の囁き」
「暗闇の囁き」
「黄昏の囁き」
「殺人方程式」シリーズ
『完璧過ぎる殺人事件』に、刑事と大学生の飛鳥井叶と響の双子の兄弟が挑む。
「殺人方程式 切断された死体の問題」
「鳴風荘事件 殺人方程式Ⅱ」
「殺人鬼」シリーズ
「双葉山の殺人鬼」を題材としたスプラッター・ホラー。グロ描写がものすごい事になっている一方、謎解き要素もしっかり存在する。ちなみに殺人鬼氏のデヴュー作は『暗闇の囁き』。
「殺人鬼」……後に「覚醒篇」の副題がつけられる。
「殺人鬼Ⅱ 逆襲篇」
『深泥丘』シリーズ
深泥丘に住む小説家の「私」が体験した、恐ろしくも不思議な物語をエッセイ風に綴る。
「深泥丘奇談」
「深泥丘奇談・続」
「深泥丘奇談・続々」
『Another』シリーズ
夜見山市に訪れる「災厄」に、『死の色』が見える少女・見崎鳴を中心とした中学生達が立ち向かっていく。
「Another」
「Another エピソードS」
「Another 2001」
その他
「眼球綺譚」
「フリークス」
「どんどん橋、落ちた」
「霧越邸殺人事件」……実は『館シリーズ』と同一時空の物語。
「最後の記憶」
「くうきにんげん」…『怪談えほん』の一冊。
「人間じゃない」…収録作『赤いマント』は『人形館の殺人』の後日談。
「月館の殺人」…漫画原作。作画は佐々木倫子。読みは「つきだて」で地名および人名であり、「館シリーズ」ではない。ただし「鉄道館」と呼ばれるキテレツな館は登場する。この館の設計に中村青司が関与していたかは定かではない。
メディアミックスなど
安楽椅子探偵シリーズ(テレビ朝日)…有栖川有栖と共同でシナリオを担当。
黒ノ十三(トンキンハウス)…監修を担当。『眼球綺譚』の一編『鉄橋』が収録。ただし、後年になってほとんど製作には関与していないと明かしている。
ナイトメア・プロジェクト YAKATA(アスク)…『館』シリーズを下敷きにしたRPG。脚本・監修・主題歌・殺人鬼の声を担当。
『忘却の夜』『飛べない瞳』…前者は上記のメインテーマに作詞・歌唱したもの。後者は学生時代のバンドの楽曲で、同作のサントラのボーナス・トラックに収録。
『時計館の殺人』、『気づかれてはいけない』…綾辻作詞、谷山浩子作曲・歌唱の楽曲。アルバム『歪んだ王国』にはこの2曲の他にサイドボーカルを務めた「王国」も収録。