『これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間の中に入って行くのです』
CV:石坂浩二
概要
1966年(昭和41年)1月2日から7月3日まで放送された、上記の印象的なナレーションで始まるSF特撮テレビドラマ。ウルトラシリーズ(空想特撮シリーズ)の記念すべき第1作。「テレビで怪獣映画が見られる」という立ち位置から平均視聴率32.4%の人気番組であった。
主人公である万城目、一平、由利子の3人が遭遇する不可思議な事件を描く。
タイトルの由来は東京オリンピックで披露された体操技「ウルトラC」にquestionの『Q』を足したもの。
それまでの単純に町を破壊する怪獣だけではなく、毒花粉をまき散らすジュランや、エネルギーを吸い取って無限に巨大化するバルンガなど、新たな怪獣像も創出している。
また、怪獣などが一切登場しない「1/8計画」や「あけてくれ!」といったエピソードも見られたが、これはもともと海外ドラマ『トワイライトゾーン(オンエア時の邦題:ミステリーゾーン)』『アウターリミッツ』を意識し、様々な怪奇現象を特撮を駆使して描く『アンバランス』という企画名でスタートしたからである。(いつ、どの時間で放送するかも決定されていない段階でとにかく作り始めたという)
この『アンバランス』というタイトルはのちに『恐怖劇場アンバランス』へ受け継がれた他、怪獣以外の存在も登場する怪奇譚という要素は『Dark Fantasy』に受け継がれた。
マーブル模様がぐるぐる回りながらタイトルの書かれたフォントが出来上がっていくというタイトル映像も有名で、後発の『ウルトラマン』でもOPの前にカラー化されたものが流され、『ウルトラセブン』のタイトル画面でも同様の演出が取られている。
平成に入ってからも『ウルトラマンガイア』、『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』のタイトルシーンが『ウルトラマン』のもののオマージュになっていたり、ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオンの変身バンクの冒頭で、(一瞬ではあるが)回転するマーブル模様を思わせるシーンが挿入されていたりと、後年の各作品に対して大きな影響を残した。
巨大ヒーローが登場しない作品ではあるが、一応『ウルトラマン』以降の昭和ウルトラシリーズ(世界観の異なる『ザ☆ウルトラマン』を除く)及び『ウルトラマンメビウス』とは世界観がつながっている。一部の登場怪獣が後のシリーズ(特に平成シリーズ以降)で登場していることもあり、最近では昭和ウルトラシリーズの一作品として扱われるケースが多い。
『メビウス』中盤の小説化作品アンデレスホリゾントによれば、万城目達が出会った怪事件を小説として纏めた物のタイトルとされている。実際にGUYSのアーカイブ「アウト・オブ・ドキュメント」にも残っている怪獣が登場する話はともかく、怪獣が全く登場しない話は万城目の創作なのではないかと疑われている。
※万城目はSF作家を志すという設定を持つ。
また令和に放送された円谷プロダクションの最新作品、『ウルトラマンZ』でもこの作品から地続きの世界だとこの作品に登場したある宇宙人の登場によって明言されている。このため、(グルマン博士の存在から、M78ワールドの存在だと思われる『ウルトラマンX』のM1号等も含めて)様々な世界でも『ウルトラQ』で語られた出来事とほぼ同じ出来事が起こっているといえるのかもしれない。
ウルトラシリーズでは唯一のモノクロ作品だが、近年になってカラーライズも行われており、「総天然色ウルトラQ」としてソフト化されている。「新ウルトラマン列伝」などで本作が紹介される際は、この総天然色版の映像が用いられている。
本作の奇怪な事件が頻発する世界観のことを「アンバランスゾーン」と呼ぶ。
自然界のバランスが崩れて怪奇現象が起こった事を表し、『ウルトラQ倶楽部』のような続編や『ウルトラマンネオス』でも引用されているワードである。
主な登場人物
本作の登場人物は全員が民間企業の会社員である。そのこともあって「一般人が毎回事件を解決するのはいかがなものか? 警察なり自衛隊なり、当局の専門家に通報すべきなのでは?」という疑問が発端となり、後番組において怪獣専門の警察…というイメージを基にした科学特捜隊という設定が作られるきっかけとなった。
放映リストとウルトラQに登場する怪獣、怪人
→Q怪獣を参照。
テーマ曲
宮内圀郎の作曲したOPが有名。
次作ではケムラー出現の際にも使用された。
これとは別にイベントなどで使用されたかテーマ曲がいくつか存在する。いずれも、番組の人気が出たために急遽作成されたものであり、劇中では使用されていない。
ウルトラマーチ
また、「ウルトラエース」という言葉も出てくるものの、あのギロチン王子とは無関係。曲の直前の流れから、万城目淳、戸川一平、江戸川由利子の3名のことを指しているのだと思われる。
大怪獣のうた
「ウルトラQ」という言葉が出てくるため、本作のテーマ曲であることが明確にわかる一曲。
タイトル通り怪獣たちの行動にスポットが当てられた曲になっており、怪獣の鳴き声も挿入されている。
リメイク作品
その後、何度かリメイクされている。
ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説(劇場作品)
ウルトラQ倶楽部(ラジオドラマ)
ウルトラQ dark fantasy
ウルトラQ怪獣伝説万城目淳の告白(オリジナルビデオ)
発売日 | 2005年12月22日 |
---|---|
話数 | 全1話 |
発売 | ジェネオンエンタテインメント |
監督 | 金子修介 |
脚本・構成 | 秋廣泰生 |
ネオ・ウルトラQ
この作品の放送開始に合わせて、WOWOWでは本作が再放送され、冒頭には『Q-異次元への扉』というミニドラマが新撮映像が挟まれている。なお、このミニドラマに登場するバー『トビラ』は『ネオ』でも登場。マスターは主要人物の白山正平が務めている。
余談
スポンサーとの関係
スポンサーが製薬会社という事で、ゴローやモングラーの巨大化の原因=怪獣の誕生に関わる物はイメージが悪いということで名称などが変更されている。唯一、「ペギミンH」だけは怪獣を倒す薬品ということでそのままになったとか。
ボツになったシナリオ
ウルトラQはその企画経緯から怪獣もののみならず、妖怪や幽霊が登場する怪奇もの、純粋なSFなど様々な作品が構想されており、そのいくつかは内容の一部や名称が公開されている。また、この作品や構想はその後の円谷作品で映像化され世に出たものも少なくはない。
タイトル | 作者 | 内容等 |
---|---|---|
幽霊自動車 | 半村良、金城哲夫 | 国道にヘッドライトだけの幽霊自動車が出現し、事故が頻発する内容で、「あけてくれ!」同時期に制作される予定だったが、路線変更に伴い未制作となった。 |
突然変異 | 不明 | 『UNBALANCE』の企画書に添付されていたプロットの1つ。突然変異した吸血植物が人間を襲撃するという内容。 |
霊界放送局 | 大伴昌司 | 同上。テレビに登場した謎の女による死亡宣告が現実のものになるという内容。 |
女王蜂の恐怖 | 金城哲夫 | 同上。蜂の大群が人々を襲うといった内容で、恐らく「甘い蜜の恐怖」の原型と思われる。 |
魔の一夜 | 金城哲夫 | 同上。東京で眠っていた古代怪獣達が一斉に復活。恐らくウルトラゾーンで「東京ジュラ紀」として映像化されたと思われる。 |
宇宙新婚旅行 | 金城哲夫 | 同上。宇宙に新婚旅行に出た万城目達の冒険譚。 |
マグマ | 福島正実 | 同上。地底にマグマという怪獣が出現。妖星ゴラスは関係ない。 |
宇宙バクテリア | 福島正実 | 同上。人々を宇宙人化するバクテリアが繁殖するという内容。後に人間が宇宙人化するという内容自体は楳図かずお版ウルトラマンや、『ウルトラマンティガ』第41話で実現。 |
魔のグランプリ | 光瀬龍 | 同上。国際オートレースで謎の事故が発生するという内容。 |
怪しき隣人 | 北沢杏子 | 詳細不明。64年10月時点では「206便消滅す」と同時期に制作される予定だった模様。なお『ウルトラセブン』に「怪しい隣人という酷似したサブタイトルがあるが、関連は不明。 |
豪華船SOS | 山田正弘 | 詳細は不明。 |
河童襲来 | 不明 | 2クール目制作に辺り用意されたプロット群の1つ。内容不明。ちなみに河童の怪獣は後のウルトラシリーズにいくつか登場している。 |
スペースマーチ | 不明 | 同上。内容は不明 |
羅生門の鬼 | 不明 | 同上。内容は不明 |
宇宙細菌作戦 | 不明 | 同上。内容は不明 |
ゲロンガ出現す | 不明 | 同上。後述の「ゲロンガ対山椒ラウスとの関係は不明。 |
クラプトン襲来す | 不明 | 同上。後述の「Oil S.O.S」との関係は不明。 |
地震源ナマラー | 不明 | 同上。詳細は不明。 |
エイ旋風東京を襲う | 不明 | 同上。内容不明。 |
ヒトデーの夜と霧 | 不明 | 同上。内容は不明。 |
海から来た友達 | 不明 | 同上。海藻が変異した吸血植物・コンブランが窒素を求めて人間を襲う。 |
ゲロンガ対山椒ラウス | 不明 | 同上。クロレラの廃液により変異した怪獣が登場。なお『ウルトラマンマックス』に登場する怪獣・ゲロンガの名前このプロットから摂られている。 |
甲虫EX号を撃滅せよ | 不明 | 同上。宇宙甲虫が飛来。 |
奇怪島探検 | 不明 | 同上。多角獣サイゴラが登場する。 |
さまよえる蝎欠 | 不明 | 同上。巨大なサソリが噴火口から現れ、麓の村人を襲う。 |
ミミモンズ撃滅作戦 | 不明 | 同上。化学薬品の廃液により巨大化したミミズの怪獣・ミミモンズが東京の地下鉄やビルを破壊。 |
ケムラーの逆襲 | 山浦弘靖 | 同上。巨大な毛虫の怪獣・ケムラーが東京タワーで蛹となり、巨大な鳥に変身する。 |
蝶になった少女 | 不明 | 同上。詳細は不明。 |
ゴロー対スペースモンスター | 金城哲夫 | 同上。「五郎とゴロー」続編で、調査隊により金星から地球により持ち帰られた卵から孵化したスペース・モンスターに対抗する為、イーリヤン島からゴローが呼び寄せられスペースモンスターと対決するといった内容だった。 |
M87星雲より! | 不明 | 同上。地球とは何もかもが違う反世界から中性子怪獣ミクラーが現れ、地球が大混乱に陥る話。実はこれがM78星雲の設定の原型であるとか(当初はM87だったのが誤植でM78に)。またM87はウルトラマンゾフィーの必殺光線の名称になっている。 |
パゴス対ギョオ | 不明 | パゴスと魚型怪獣が戦うという内容。ギョオはスダールの初期案で、後に楳図かずおが同名のゲスラに似た怪獣が登場する怪奇漫画を発表した。また、パゴスの相手がケムール人とガラモンという「東京大津波」というシナリオも考えられていた。 |
火星のバラ | 金城哲夫 | 火星から持ち帰られたバラの種が地球で突然変異を起こし人々を襲う。当時から漫画版は存在。後に同氏によって書かれた小説『怪獣絵物語ウルトラマン』では火星に自生している様子が描写されている。 |
Oil S.O.S | 上原正三 | クラプトン参照。製油会社がイメージダウンに繋がるとして制作が頓挫した。タイトルは次作に使われているようで、コチラは金城哲夫が担当。 |
キリがない | 万福寺百合 | 水を吸って無限に大きくなる海綿状の怪獣が登場。特撮が困難であることからNGに。ちなみに万福寺百合とは実相寺昭雄のペンネームの一つである。次作の未制作エピソードに同コンセプトの吸水怪獣ウェットンがいるが、こちらの原型は『リプロスが狙っている』(脚本:田中美樹) |
バクたる | 万福寺百合 | 夢を食べる怪獣が登場。『ウルトラマン』第15話、ウルトラマンティガ第40話の原案。 |
紀元前二十世紀の恋人 | 山浦弘靖 | 近年発掘されたプロットの1つ。展示された古代エジプト王・カルメーンの立像が深夜に動き出し、由利子を攫う。 |
題未定 | 山浦弘靖 | 同上。地下鉄工事で棲家を荒された地底獣マウザーが人を襲い、由利子の同窓生さゆりを気に入り連れ去ろうとする。 |
関連タグ
恐怖劇場アンバランス:『ウルトラQ』企画時のタイトル『アンバランス』を改めて用いた円谷プロ作品。
ムーンスパイラル:「'90年代版ウルトラQ」というキャッチコピーを用いた円谷プロ作品。
ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!:ゲーム作品。『ウルトラマン』の前日譚であると同時に『ウルトラQ』の後日譚としての要素もあり、『Q』の一部登場人物が再登場している他、ケムール人による再侵略も描かれている。
ウルトラマンネオス:ダークマターの影響で地球がアンバランス現象に見舞われたというストーリー。
ウルトラマンオーブ:防衛チームではなく民間人が怪獣災害の調査にあたるという展開が共通する。なお、この流れは以降の新世代ヒーローズの作品にも踏襲されていくことになる。
ウルトラマンZ:過去作からの再登場怪獣のうち『Q』が初出の怪獣の比率が多く、話題となった。「2020年の挑戦」の続編的な位置付けの回もある。
ウルトラマンブレーザー:9月9日朝9時放送の第9話「オトノホシ」は、劇中で『Q』のメインテーマが新たな編曲の下で演奏されたり、エンディングもモノクロ映像の中で同テーマが流れるなど、『Q』へのオマージュに満ちた回だった。
シン・ウルトラマン:『ウルトラマン』のリブート作品だが、冒頭のダイジェストシーンにおいて、Q怪獣の一部が物語開始以前に登場した禍威獣として紹介されている(BGMも『ウルトラQ』のオープニングが使用されているという徹底ぶり)。