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タグとしては、略称兼愛称の「円谷プロ」がよく使用される。


概要編集

特撮の神様と呼ばれた円谷英二1963年に創設した。優れた特撮技術を駆使したテレビ作品や映画作品を数多く制作しており、過去には映画会社・東宝とも結びつきも強かった。

かつては同族経営が続いていたが、諸事情(後述)で経営不振に陥り、現在では別の企業の傘下に入り、創業者一族は追放され親会社から経営者が入っている。

設立当初の名称は「円谷特技研究所」という個人的な組織名だったが、1963年に法人化し「円谷プロダクション」へと改名した。


マイティジャック 【ニコニコ動画用イラスト】【汎用メイン画像用】円谷プロ ロゴ

ロゴはマイティジャック隊のマークを使用しているが、これは元より円谷の社章としてデザインされており(『マイティジャック』の方が流用先)、円谷(ツブラヤ)の頭文字である「ツ」を意匠化したものである。(丸山浩)。同時に円谷英二の好きだった紙飛行機もイメージされている。


代表作は言わずと知れたウルトラシリーズ。他にも、ドラマや時代劇、アニメにも制作協力している(『仮面ライダーTHENEXT』などライバル企業の作品の制作協力を担う事もある)。

ちなみにゴジラは東宝制作なので、円谷とはあんまり関係ない(※東宝怪獣の着ぐるみを流用・改造した怪獣の登場や、ゴジラがジラースとなってウルトラマンとの友情出演に出張したことがある程度)。

会社敷地内の「怪獣倉庫」と呼ばれる施設には、歴代の怪獣達の着ぐるみ等のプロップが今も眠っており、リアル怪獣墓場として伝説になっている。

今は無くなっているがかつてはアニメ制作部門があり、テレビアニメ等の製作協力をすることもあった。


現在は音沙汰が絶えて久しいが、毎年4月1日ネット上で手の込んだネタを大々的に発表していたことでも知られている。twitterでは「円谷ッター」を、ニコニコ動画では「シュワシュワ動画」の生放送が実施されている。

しかし、エイプリルフールに限らず、たまに公式が盛大にやらかすことでも有名で、戦闘シーンだけ流すプロレス風番組『ウルトラファイト』や、戦国鍋TVのスタッフと組んでカルトネタ満載のコメディ『ウルトラゾーン』と言ったイロモノを作ったり、あのスキャットマン・ジョンコラボレーション楽曲を出したりもしている。

最近では、女子中学生がウルトラ戦士に変身するライトノベルを刊行したりウルトラシリーズに登場した怪獣たちを美少女化するといった、誰もが予想だにしなかった珍企画まで展開している。

2010年代後半以降はこういったイロモノ企画は鳴りをひそめ、TVシリーズおよび劇場作品等の本筋の設定を軸にしたスピンオフや、カードゲームやビデオゲーム、オリジナルアニメをメディアミックス形式で数多く展開している。


また、近年の作品に特撮業界外で活躍した知る人ぞ知るライターをシリーズ構成に任命するようになった。

ウルトラマンジード』では切なさとグロテスクさに定評のある小説家の乙一氏、『ウルトラマントリガー』ではかつて泣きゲーライターとして名を馳せたハヤシナオキが、『ウルトラマンブレーザー』では軍事考証に定評のある小柳啓伍(『ウルトラマンZ』にも軍事考証で参加)がそれぞれ起用されている。


経営難編集

円谷英二はもともと経営者ではなく、特撮技術を開発して世に広めた技術者だったということもあって、設立当初から予算や経営の先行きを考えず、採算を無視した制作費で完成度の高い作品を作ろうとする傾向があった。その結果が功を奏したのかそれ以外の部分が評価されたのか定かではないが『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』は今尚高い評価を得るほどの傑作となったが、後半以降は時間と予算の制約が露呈している回もある(特にセブンに顕著)。


こういった「採算を度外視してでも高品質の作品を作る」という伝統は英二氏死去後も受け継がれ、結果として超赤字体質ということでも有名となった。経営陣も円谷家の人間が世襲していったことも関係している。これは経営に長けた人間、収支を管理する人間やそれに耳を傾ける経営者がいなかったこと、その能力を持った人を雇おうとすらしなかったことで見事なまでの家族経営、同族経営の悪しき典型に陥った。

加えて初期は著作権管理すらしっかりしていなかった(そのため、ウルトラマンをあからさまにネタにした漫画が勝手に作られたり、後にタイチャイヨー・プロダクションとの訴訟沙汰に繋がったりした)が、キャラクタービジネスの重要性を理解した70年代に入ってからは、採算を度外視した制作費で高いクオリティの特撮映像を作り、玩具売り上げやソフト売り上げでその元を取るという強引すぎるパワープレイで乗り切ってきた。なお御大は1970年に死去、長男の円谷一が二代目社長に就任するが、1973年に急死している。


また、前述のように「ウルトラマンならしょうがない」という暗黙の了解の下、昭和・平成問わず予算オーバーが慣例化しており、例えば平成3部作の平均制作予算は1回約4000万円以上であり、10代目社長の大岡新一が言うには画面に映ることのない、映っても一瞬だけの無駄遣いにしかならない画面外のミニチュアも制作していた。今になれば、作品そのものというよりもこの画面外への無駄遣いとそれに対する反対意見とストッパーの無さが倒産危機につながったといえる。

特に『ガイア』の第1話などは、一説では1億円を超える制作費がかけられたとさえ言われていた。

(2018年のイベントにて、単純な予算は『ダイナ』の方が多く使ったと当時のスタッフがコメントしているが、いずれにせよかなりの製作費がかけられたことに違いはない。)

参考までに、2010年代のゴールデンタイムの番組制作費の相場は1回60分で3000万円程度が天井。アニメは1話30分1000万円程度。最も制作費が高いといわれるNHK大河ドラマで1話45分6000万〜8000万かかっていると言われている。時代の違いや番組の性質の違いもあり単純な比較は難しいが、いち制作プロの30分の番組で、制作費を受信料で賄っていたり、あるいは60分だったり、より広告出稿料の高い時間帯に放送されたりする番組並の額を投じていること、大手制作会社である東宝と喧嘩別れしたのちの中小企業であったこと、アニメはこの制作費でソフトや関連グッズを販売することにより何とか回収可能と考えると経済的に危ういことが理解できるだろう。


そのため何度も経営危機に陥っているが、その度に苦し紛れの再放送や低予算の再編集番組が好成績を上げて、結果として何とか復活する、というチキンレースを繰り広げていた。そしてそれによって復活してきたこともあって、金銭感覚の停止どころか逆方向につながったのは言うまでもないだろう。

特に3代目社長で、20年以上経営トップの座にあった円谷皐(英二氏の次男)の時代は、キャラクタービジネスの成功による経営状態の改善の一方で、

  • 作品至上主義と独立志向の暴走から、有力なサポーターであった東宝やTBSに無礼の限りを尽くした末のケンカ別れ
  • パワード』の予想以上の臨時収入が、幹部のラスベガスハワイでの遊興費に費やされるなどの放漫経営(平成シリーズの正確な収益すら把握できない有様だった)
  • 円谷エンタープライズ名義によるさらなる借金。その金は藤沢市にプール付きの豪邸を購入する他、愛人を侍らせ、豪華マンションやゴルフ場の会員権を買い込むために使われた。もっとも、これは会社の資産確保の面もあったと言われており、第二次怪獣ブーム終焉とともに資金繰りとして豪邸は買値の倍以上で売れたという
  • チャイヨー・プロダクションとの海外版権問題(後述)

など、後々まで深い爪痕を残す様々な問題が生じていた(この辺りの事情と経緯は、ノンフィクションライターの安藤健二氏や、英二の孫で6代目社長の円谷英明氏の著書に詳しい)。


皐の死後は長男の円谷一夫が後を継ぐが、テレビシリーズの再開後に制作費が増加した上にその作品がある程度ヒットしたにもかかわらずそれで得た収益を制作に費やして結局赤字になったこと、東宝からの離反に伴い、かつての後ろ盾であった三和銀行が抜けたため、経営基盤が弱体化してTBSとの関係が悪化し、その影響があったのかは不明だが『コスモス』は歴代で唯一となる前年にも翌年にも作品がない完全単発(総集編などすらもない)となり、『ティガ』~『ガイア』までの作品とともに赤字であったため数年後の作品も毎日放送制作から中部日本放送制作へのローカル落ちと資金繰りの悪化が発生した。


そこでウルトラシリーズの玩具を販売するバンダイから融資を受けることとなったのだが、この時バンダイは融資の条件として経営改善を突きつけた。その一環で、社長が円谷一夫から従兄にあたる昌弘に交代。その時にお家騒動に見られるとまずいと判断した当時の専務取締役・高野宏一を中心とした役員たちの提案で、一夫は会長へと退き、昌弘が社長へと就任するとした。

ところが2003年、円谷一族は高野氏をはじめとした社長交代を提案した役員全員に辞表を出すよう迫った。円谷一族からはバンダイの要求を呑んで社長を交代させ、そこからバンダイの役員を出向させてバンダイに会社を明け渡す、つまりクーデターを画策したと受け取られてしまった。経営改善を要求されていたにもかかわらずである。

これに関しては双方で主張が食い違っている。


  • 円谷一族側:円谷プロの議事録にバンダイに売り渡す株式の価格は5億円と具体的な数値が記録されており、また辞表は社長交代の責任の所在をはっきりさせるために出させたもので、外部に頼らず自分たちで立て直す旨を伝えたが、賛同してもらえず、やむなく受領した。
  • 高野側:社長交代に関しては、一夫・昌弘双方の了承を受けており、にもかかわらず年明けの臨時取締役会で辞表提出を要求した。バンダイには円谷プロを乗っ取る理由が無いし、自分が協力しているというのは事実無根。敵を作らなければ会社をまとめられないだけ

両者の主張はどこまでも平行線をたどり、ついには高野氏側が円谷プロを訴え裁判沙汰にまで発展したが、2008年に高野氏が急逝したことで有耶無耶となった。

高野氏らを追放同然に解任したことや、さらには昌弘の女性社員に対するセクハラ問題でも訴訟を起こされ、連日連夜押し寄せるマスコミや世間からの批判を食い止めるためにも昌弘は社長を辞任し、英明が後任の社長に就くなど、混迷を極めていく。

また、2003年には財産管理をエクセルも使わずに手書き集計をしており、銀行に融資を依頼する際に提出する経営計画書まで、手書きで行っていた事も発覚した。

そして、2004年に数年ぶりに再開したシリーズは、『ウルトラマンネクサス』をはじめとする一大企画「ULTRA N PROJECT」の大コケにより未曾有の大ダメージを被ったことで、事態は急展開を迎える。


お家騒動と倒産の危機編集

視聴率の伸び悩んでいた『ネクサス』は、1クール分の放送短縮(事実上の打ち切り)と劇場版製作中止が決定する。しかし、この一件が引き金となり、かねてから様々な火種を抱えていた会長の一夫と社長である英明との関係が悪化。(ただし『ネクサス』の打ち切りを主導した直接の原因はプロデューサーの渋谷浩康であり、一夫が不服としたのは劇場版の制作中止の方とされている)

元々父の皐から遺言として英明を経営から追放するように言われていた事や、大株主だったが、決算書が自分の下に回ってこないことに不満をもっていた一夫は、劇場版制作中止の原因である英明に対し表向きは同意しつつも、本心ではそれを望んでいなかったことから全ての作業が終わってから態度を変え、周辺人物に制作中止は不本意だったと洩らす等不服を訴えていた。さらに当時の円谷プロは重要な役員が円谷一族で固められていたことに不満を抱く役員が数多くおり、社長への「もっとウルトラマンを上手く使え」「自分の方が上手くやれる」といった誹謗中傷や陰口が横行していた。また、英明の決定を批判して社長の座から引きずり下ろし自分の出世に結び付けようと目論む役員も多く、そういった役員たちを味方につけた一夫はついにクーデターを決行。『ネクサス』放送中の2005年4月(29話から名前が消えているため、おそらく4月23日から30日までの間)、突如英明に対し「役員会を軽視し、権力を自分に集中させようとしている」というワンマン経営を理由に緊急解任動議を出し、過半数の株を持つ会長の一夫が動議に同意したことで社長職から追放した。

さらには後任で、取締役会で大幅なリストラを主張していた大山茂樹(経営立て直しのため、東宝不動産から招致されていた)すら解任し、2年後の2007年に社長に戻り、わずか数年で経営者が次々と変わるなど経営上の混乱を見せることとなった。


この時には倒産を危惧した役員達によって昌弘を社長に返り咲かせる形で一夫を社長職から下ろそうとする動きもあったが、結局実現しなかった。なお、英明はその後に日中合作の特撮ドラマ『五龍奇剣士メタルカイザー』の製作を始めるが、諸事情により頓挫してしまっている。


その後、『マックス』『メビウス』で従来路線に戻したものの時すでに遅し。この2作は作品の評価こそ高かったもののネクサスよりもさらに売上が右肩下がりとなった。そうでなくても少子化やローカル落ちなどによる影響も大きく2007年2月の期決算では約56億円もの売上に対し純利益は4400万円と制作費を回収することもできず、積もり積もった30億円もの累積赤字と、ただでさえ赤字体質なのに周囲から見ればどう見てもお家騒動にしか見えない一連の社長交代劇によって統率力すらない円谷プロへの不信感は高まり、とうとう銀行からも融資を打ち切られた。というか社長交代の時点で「円谷はまたお家騒動か」と呆れられたらしい。


そもそも『ネクサス』では各種経費削減によって経理改善を図ることも可能な制作コンセプトを目指したのに、結局スペースビーストのスーツ作成に従来のシリーズの倍以上の費用をかけるなど、相変わらず経理面を考慮しきれていない杜撰な姿勢が目立っていた。この結果もたらされた『ネクサス』の打ち切りに伴い、40周年記念作品『メビウス』までの事実上の繋ぎとして『マックス』が製作される形となったものの、同作は『メビウス』の分も含めた2作分の制作予算をこれ一作で使い切ってしまった。『メビウス』制作のために新たな借金が必要となったことで、『メビウス』ともども経営状況の更なる悪化を招いた。

さらに、『ネクサス』では路線変更を拒否する=製作費回収を拒否する(路線変更したとしても回収できたかは不明だが)ことであるにもかかわらず、代替案を準備しないどころか予算のかかる市街地特撮を復活させる、『マックス』と『メビウス』ではこれまでの販促不足のツケが回っているにもかかわらず相変わらずの販促度外視(特にメビウスは光の国系であるにもかかわらずパワーアップで新規のアイテムの使用無しで既存のもので済ませるという設定的にも疑問視する声がある)であったりと、危機的状態でもそれを改善する意思を感じ取れないような状態でもあった。


円谷プロ買収と円谷一族追放編集

そんな中、円谷プロに救いの手を差し伸べる企業があった。それが非常勤取締役である森島恒行に紹介された広告制作会社TYOである。

無論、こんな潰れかけのオンボロ会社にタダで融資する会社などあるはずもなく、円谷プロはTYOからの融資を得るために関連企業円谷エンタープライズの株式の過半数を担保として融資を得た。当然期限まで返しきることはできず、TYOは担保となった円谷エンタープライズの株を取得し、子会社とした。

だが、すべてはTYOが円谷プロを手に入れるための布石に過ぎなかった。


当時円谷エンタープライズは円谷プロの株の40%を取得しており、そのうえでTYO側は円谷一夫が持っていた円谷プロの株式約20%を円谷エンタープライズに譲渡し、株保有率を45.5%から68%に引き上げた。そのため円谷エンタープライズが円谷プロの株の過半数を取得したこととなる。

かくしてTYOは子会社にした円谷エンタープライズの更なる子会社とする形で、円谷プロを手中に収めた。そのうえで円谷プロ、円谷エンタープライズ、TYO傘下の映像会社ビルドアップを吸収合併し円谷プロ一つにまとめた。

こうして円谷プロは完全にTYOの子会社となったのである。


買収に当たってTYOが最初に行ったことは、円谷一家をはじめとした現取締役全員の解任とぬるま湯につかっていたスタッフへの意識改革であった。80人以上いた社員を約半分にまで削減し、分散していたスタジオや倉庫、オフィスなどを一つに集約して年間4000万円超のコスト削減に成功。わずか1年で黒字転換を果たした。TYOが買収に際して投じた金額はわずか8000万円であったという。この手の企業立て直しには普通は億単位の金が動くところがそれ以下の額で立て直すことが出来たというわけである。

買収直後、当時のTYOの吉田会長は「円谷一夫氏の判断で会社は救われました」と便宜を図ったものの、一夫は取締役会長から経営権がない名誉会長という名前だけの地位に退き、各種会議に参加することも許されず、それも2009年に退任。これで円谷家は円谷プロの経営から一切排除され、買収前の円谷プロを知る人間は生え抜きという形で10代目社長となった大岡新一のみとなった。

※厳密にいえば円谷一の孫(英明の子)である円谷洋平がサイバーエデン社(円谷プロダクションの公式サイト「円谷ステーション」を運営している会社)に2012年まで所属していたが自己都合で退職している。


その後はTYOの組織改革と並行し、古くから縁のあったバンダイナムコグループが資本参加。発行株式の49%を保有している為、バンダイナムコグループの関連会社でもある。


2010年4月、円谷プロ株式はTYOからパチンコ会社フィールズに売却。わずか2年足らずで経営母体を変更することになった。これはTYOの業績悪化が原因であり、メインである広告制作に力を入れるためである。TYO倒産の危機を救ったのもフィールズである。


クオリティと採算度外視を履き違え、本来不可欠なことを軽蔑し続けた結果編集

  • 職人」として作品に取り組む、監督達のマーケティングを考えない内容へのこだわり
  • ブームが終焉するにあたって赤字が累積し生存するための長期的ビジョンがなかった
  • 相次ぐシリーズの断絶によって継続的なファンとのつながりを構築できなかった
  • 昭和のテレビ屋の気質を時代が変わっても変えなかった
  • 作品の質と採算度外視を履き違え警告を無視し続けた

こういった生存するためのビジネス感覚が家族経営では育たなかったことで商業的失敗につながり、結果的に長らく続いてきた放漫経営が、商業的失敗をきっかけに噴出してしまった。

また、そもそもの問題として当時の円谷プロが創業者一族である円谷一族と、その取り巻きであるイエスマン達によるワンマン経営状態で誰も異を唱えられず、誰もその状況を疑問に思わなかったという、会社そのものの腐敗とも言うべき深刻な組織事情があった。2003年頃には、社員たちも何もしない日も珍しくなく、午後3時には帰宅していたという社内ニート給料泥棒状態だった。しかもそれが、社長らトップの態度が原因でそれに異を唱えられないのだからなおさらである。

「国民的ヒーローの為なら予算オーバーも仕方ない」「ヒーローの金字塔なんだからピンチでも何とかなる」といった見通しの甘さが一族とイエスマン達に浸透しすぎて、採算度外視=質の高い作品と履き違え、制作費を回収するために不可欠な商業的側面を作品の質を下げると勘違いして軽蔑したこと、失敗した後を充分に考えなかったため本当の失敗時に対処できず、それまでのツケをまとめて払わねばならなくなった。

それでも東宝やバンダイも円谷プロに何度も助け船を出し続けてきたが、それを無視してきたための当然の結果でもある。


さらにファンとしては、このような事態をファン自身の姿勢が助長した可能性も考えなくてはならない。

実際、後述の買収騒動の際、買収先企業が「予算を守った作品作りをする」など健全経営に切り替えようとしたときにファンから「採算度外視のミニチュア特撮がウルトラの美点だ!」と反発の声が上がり、企業として至極真っ当なことを言っているはずの関係者のSNSを炎上させるという忌々しき事態に発展している。

ファンの一部も、思考停止による採算度外視の姿勢への無批判に陥っていた可能性がある。ファンもスタッフも作品を愛するが故に、趣味の延長のような製作姿勢や時代錯誤な職人気質をありがたがる空気を生み出し、それこそが愛するウルトラシリーズのブランドイメージを落とし、存在そのものを滅ぼしかねない事態を招いたと言える。何とも皮肉な話ではあるが。

というかそもそも、Nプロジェクトの成功の是非を問わず、この体制のままではこのタイミングでなかったとしても遅かれ早かれ経営破綻は到来したのではないかという意見もある。当時の大人だけでもNプロジェクトに注目してさえいれば違った道が開けたかもしれないだろうが。

TYOの吉田会長も「一つ作るごとに会社の首を絞めるような経営は間違っている」「新しいものを取り入れるためには古いものを捨てないといけない。その覚悟はついていますか?」と語っている。(上述の動画も参照)

他会社にはなるが、これ以降以前に起きた仮面ライダー響鬼製作スタッフ交代騒動の影響もあり、シリーズを継続する為には単なる作品の出来の良さのみでなく予算管理やスタッフ、スポンサーへの対応、独自の道を進むとしても時代の流れを取り入れることも不可欠と再評価がされるなど特撮界隈内のスタッフ評価でも少なからず影響を与えた。

さらにすでに人気がピークを過ぎていたとはいえ2004年にはゴジラシリーズが『ゴジラ FINAL WARS』をもって終了、2006年にはガメラシリーズ最新作小さき勇者たち〜ガメラ〜もヒットに恵まれないなど巨大特撮に対する世間の目は冷たくなっていき、00年代後半はほぼ完全に断絶状態になっていた。


そんなこんなで、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』以降は、長らく新作TVシリーズが作れないままでいた。



フィールズ体制以降と現状編集

2011年7月6日に『ウルトラマン列伝』を放送開始。同作で過去作への注目・再評価が高まったこと、フィールズの経営陣の入れ替えによって商業戦略が変わり、バンダイとの連携を強化したこと、ウルフェスをはじめとする各種イベントを積極的に開催したことなどによって、赤字体質は一応解消された(ここ数年は黒字経営が続いており、新しい経営方針が完全に軌道に乗ったものと思われる)。

特撮面でも使える予算が徐々に増え、その甲斐あって番組内番組『ウルトラゼロファイト』が放映され、ついには新作『ウルトラマンギンガ』が(不定期とはいえ)放送されるなど、復活の兆しを見せ始めた。そしてその続編である『ギンガS』の放送年である2014年には債務超過が終了した旨が発表された。

また、『ギンガS』では坂本浩一監督が製作にも関与している『パワーレンジャー』で培った製作方法を使ったことによって余分な予算をかけずに作品を生み出せることが証明され、以降の作品でも影響を及ぼすこととなった。


そうした努力の甲斐あって、2015年7月14日からは『新ウルトラマン列伝』内でおよそ十年ぶりにクール分割無しの新シリーズ『ウルトラマンX』が放送された。国内での評価は上々で、海外のサイマル配信も約4億視聴を突破する等、作品評価・商業実績ともに成功を収めることとなった。


そして、2016年7月9日からは『新ウルトラマン列伝』から完全に独立した番組として、『ウルトラマン』放送50周年記念作でもある『ウルトラマンオーブ』が放送された。2017年以降も、完全独立番組として『ジード』から毎年新作が放送され続けており、初めて5年以上連続でTVシリーズが放送される快挙を成し遂げられ、長期的ビジョンで連作を続けることに成功、さらにそれにより継続的なファンとのつながりを構築することが出来、上述した「生存するためのビジネス感覚」が新しい経営陣によって作られていった。

2018年、10代目社長の大岡新一氏が退任。これによって買収前の円谷プロを知る人間は一部のスーツアクターを除いて一人もいなくなり、新元号を前に完全新生が果たされることとなった(ちなみに次に社長となった塚越隆行氏は、某夢の国の日本支社の前社長である)。


円谷の債務超過が終了し経営も安定するようになったが、親会社のフィールズは規制強化やソーシャルゲームの台頭によるパチンコ業界の低迷に加え、ヒット商品にも恵まれなかった為に「Z」の頃まで赤字が続き苦しい状況が続いていた。


しかし、「トリガー」の頃にアジア方面のウルトラシリーズの好調とそれによるコロナ禍での巣ごもり需要の高まり、中国圏でのTCG人気の爆発によりようやく黒字に転換することに成功し、「円谷フィールズホールディングス株式会社」として持株会社体制に移行。2022年10月3日にはフィールズの社名が上記の物になるなど現状のフィールズにとってウルトラシリーズが重要なコンテンツになった。


海外版権問題編集

詳細はウルトラマン訴訟参照。


現在の円谷プロ編集

かくして、現在ではお茶の間のヒーローとしての威信を取り戻すことに成功したウルトラシリーズだが、4クールでの連続放送が未だに行わない登場する怪獣は過去作品のものが大半で着ぐるみもほとんど既存の改造や使い回し過去作の戦士の力をよく使う等々、一部を除いてこれまでと異なる事は多く、この点でシリーズ初期からの古参のファンと、近年のシリーズから参入した新規のファンとの間で賛否が分かれている。


  • 過去作要素について

既存の着ぐるみの使い回しや改造は今に始まったことではない上、他社の作品でも予算を節約するために普通に行われていることではあるのだが、製作に携わっている田口清隆氏でさえ『“使える怪獣リスト”を見たときに、「またこの怪獣かよ!」ってなる(笑)』とぶっちゃけており、ゼットンについては『オーブ』であまりにも派生怪獣の登場が多かったことから、ファンから「使いすぎ」と苦情が寄せられたことを語っている。一方で「マックスで遺産掘り起こした時点でもうこの路線になるのは確定した」「オリジナルにこだわってもネクサスの二の舞」という意見もある。実際にネクサスは1体の怪獣を数話かけて倒すというテンポの悪さをファンにすら指摘されており、逆にマックスは視聴者から好評を得たりと、オリジナル怪獣に限っても良い作品ができるとは限らないことを忘れてはならない。

もっとも、過去作からの怪獣が一切登場しないのはマックス以前でも上記のネクサスと、『ダイナ』を除く『ティガ』~『コスモス』までのMBS作品程度しかない(ただしオマージュは存在する)ため、長い歴史で見ればむしろその頃の方が例外的である。


とはいえ、改造などで新規の怪獣にもできない場合はレッドキングなどを仕方なく選んだりするほか、ゼットンやゴモラといった人気怪獣のスーツはイベントなどで使う機会も多いため、普段からメンテナンスされており、スーツもしっかりしているため番組でよく登場するという。なお、2021年現在、シリーズを通して再登場する確率が高いのは『ザ☆』以外の昭和作品とメビウスのM78スペースウルトラマンゼロシリーズニュージェネシリーズに登場した怪獣に偏っており、MBS作品などの怪獣はあまり再登場しない傾向にある。特にメビウス以外の平成初期の怪獣の中で一時期は結構登場していたゴルザスペースビーストすらもほとんど登場しなくなった。


こうした背景には、いざ使おうと思ったらスーツが劣化して使い物にならなくなっていたというパターンや、ウルトラマンをあまり知らない層には昭和怪獣の方が敷居が低いという事情も関係しているようだ(ちなみに、チョイ役が多い等身大キャラやミニチュアで登場できるキャラに関してはその限りではなく、深夜番組を含めたマイナーな作品からも拾ってきたりする)。

現在は各監督の証言で「使える怪獣リスト」の中からスーツが現存していて撮影に使えるかどうかという点が一番重要視されているのが明白となっている。


ただし、最近ではやや事情が変わってきており、『ウルトラマンタイガ』以降は新怪獣の登場する機会が以前と比べて増えつつある。特に『ウルトラマンブレーザー』は完全オリジナルの新規怪獣の登場がこれまで以上に多くなっており、現在判明しているだけでもおよそ10体以上になることは確実という快挙を成し遂げているため、徐々に脱却の兆しが見え始めている。また、再登場怪獣に関しても、人気怪獣だけでなくこれまであまり登場の機会に恵まれてこなかったレアなキャラクターをあえてチョイスすることで、視聴者を飽きさせないよう工夫を凝らしている。『ウルトラマンアーク』でも引き続きそのコンセプトで行われている。


ただ、『ブレーザー』『アーク』に関しては「タイプチェンジをやらない代わりに新規怪獣を沢山出す」(とはいえ、それに相当する「ファードランアーマー」や「アークアーマー」等の拡張武装形態はある。)という方針であったことが語られており、『ティガ』や『コスモス』までの平成シリーズのようにウルトラマンの戦闘タイプを多数出しつつそれを重ねて使うこと、新規怪獣も潤沢に用意するということは様々の面から難しいらしいことがうかがえる(もっとも、タイプ数の減少や未実施は『ハイコンセプト・ウルトラマン』でも同じことが起こっている)。

ちなみに、現在では既存のスーツを改造するよりも新造した方が早く安す済むらしいとのことで、これも新怪獣の割合が増加している一因になっているものと考えられる。

さらには、時代の変化によって怪獣の着ぐるみの制作者が減っていることもある。当たり前だがいくら金があったとしてもそれを制作する人材がいなければそれは作れないし、予算面抜きの課題も大きい(コロナ禍にあった2019~2020年代は密集する作業がある都合上新規での製作も難しかったらしい)。

また円谷プロ内では「過去に登場した怪獣を現代の技術で再登場させる」という内容のコンペが毎年行われているらしく、何らかの形で過去作の怪獣を再登場させている(トリガーのキリエロイドやデッカーのモンスアーガー、ブレーザーのガヴァドンAがそのコンペで作られたものである)


タイガ以降導入されるようになったボイスドラマでは、スーツの制約がほとんどないためマイナー怪獣と出身地や勢力を同じくする新規怪獣が登場したりと、何かとファンを湧かせており、特に2020年に『ウルトラマンZ』が放送開始されて以降話題になることが増えている。そして、『大いなる陰謀』では版権問題で登場できなかった海外ウルトラマンの参戦などにより、勢いはより加速傾向にある。

さらに『トリガー』では登場したキャラクターがその日のうちに買えるように、積極的にソフビの新規・再販が行われている。

宇宙細菌ダリー等中には使える怪獣リストには乗ってない怪獣が使えることを後から知ることがあるようである。(主に海外のステージやTHE LIVEと言ったヒーローショーで使うアトラク用に新造された怪獣達)

なお、「売上のために過去作に縋っているのではないか」、「商業主義が作品の質を落としている」といった声も数多く存在するが、「ネクサス」での商業的失敗後、「マックス」と「メビウス」で過去作要素を売上のために復活させてもシリーズの復権どころかむしろ売上は下がってしまったことからもわかるように必ずしも過去作要素があれば売れるとは限らないし、商業主義がなくても質のいい作品ができるとも限らないため、現状多く見られる批判のほとんどは的外れであるということは忘れてはならない

そもそも現行以前の作品も玩具メーカーの意向が示されている部分もあり、さらには制作陣が勘違いしていたが、販促とクオリティは本来別物で、どちらかを軽んじることでしかもう片方に力を入れることができないという認識も上記にある通り誤りであり、両立できるものである

さらには、上記にある通り過去作からの怪獣や宇宙人の登場がないのが『ガイア』、『コスモス』(劇場版にバルタン星人が出てくるが)、『ネクサス』と片手で数えられるほどしかなく、さらにはこれらの作品以前にもウルトラの作品は多いこと、さらには現行作品への批判は主に昭和作品に該当することも多いため、懐古厨に対しても「昭和の積み重ねがあってできた平成初期を基準にしている時点でナンセンス」との指摘もある。


さらに、子供向けになったという指摘もあるが、本来ウルトラシリーズは子どもに向けて作られたものであり、極論、もちろんウルトラシリーズに限った話ではないが玩具メーカーとタイアップしたホビードラマでもあるため、そもそも大人たちへ向けたものではないということ、それゆえにわざわざ休日の朝に放送させていただいているということ、円谷一族の経営時代にも今ほど充実していなかったにせよ玩具らしきものはあったこと、子ども受けを狙って路線変更を行ったこと完全新規の予定が前作の人気と売上にあやかって作られた作品があることも忘れてはならない。


  • 放送期間、形式について

現在のウルトラシリーズは、テレビ東京系列9時の上半期に『〇〇クロニクル』と題した総集編を放送し、下半期からそれと連動した新シリーズ作品を放送するというスタイルを取っており、今のところ3クール以上の作品は製作されていない。

これに関して、往年のファン(おそらく昭和2期からコスモスまでとメビウス)からは「物足りない」という意見もある。また現在の放送クールだと商業的に書き入れ時の(トリガーまでの作品で)クリスマス前後に番組が終了してしまうため商業的な観念で支障が出ていると、現行作品を応援しているからこそ指摘するファンもいる。(一方で翌年からクロニクルシリーズが始まり、そちらも売上を出している為商業的には特に問題ないという指摘もある)


ただ、等身大ヒーローより遥かに手間も人員もかかる巨大ヒーローでは、効率や採算の面を考えると2クールまでが限界であり、かつてのような4クール放送を行うのは難しいのではないかと考えられる。

実際、各監督の証言によると、現在のクオリティを維持するには人手不足のせいで2クールまでが限界なのだという。しかも、その2クール体制でも、物語の流れに大きく影響しない総集編が3~4回も挟まれる流れが毎年恒例となっていることから、実質的な制作話数は20~21話程度と見る向きもあり、ここからも現場の制作体制がかなり厳しい状況に置かれているであろうことがうかがえる。

加えて、2クール放送の『ジード』では過酷な労働が報告されており、それ以上の作品を作ろうとなれば人手を増やすなどの対策をしない限りさらなる過労にもつながりかねないし、最悪の場合、作品にダメージを与えてしまえばそれこそシリーズの消滅危機を招きかねない(なお、同様の問題は東映仮面ライダーの制作現場でも起きている。また、現在とどれくらいの差があるのかは不明だが、昭和作品ではスタッフはおろか役者の扱いですら雑な時期があったため、現在に限った問題ではなく、昭和から続く特撮業界全体の課題と言えるのかもしれない)。

さらには、昭和時代から解決されていない問題として、制作スケジュールの厳しさも上げられる。実際に初代ウルトラマンはそれによって打ち切りになったし、それ以外にも没になったアイデアは多い。この課題を乗り越えたとき、シリーズも大きな改革を迎えるかもしれない。


加えて、インターネット配信もあるとはいえ、現在放送を行っているテレビ東京が、かつての放送局であるTBS系列よりも小規模な企業で全国放送ではなく、これに伴い得られるスポンサーの数も限られていること、テレビ東京自体がそもそも特撮作品にあまり力を入れていない局であり、巨大もの特撮で4クールを確保するのは難しい等の事情もある。

またウルトラを放送しているテレ東の朝時間のアニメ枠は2022年以降大幅な枠改変とシリーズ物の休止が相次ぎ15分アニメや2クール物増加、4クール率も大幅に減少するなどウルトラの個々の事情を抜きにしてもかつてのTBS系列同様に放送枠の環境そのものが厳しくなっている。


以上のことから、現状では4クールはおろか2クール以上の拡大は不可能(そもそも今後2クール自体を維持できるかも微妙なライン)とみるのが正しい。


現在ではテレビ業界全体を見ても1年を通して放送しているドラマはスーパー戦隊シリーズ仮面ライダーシリーズNHK大河ドラマ等ごく少数。大半のドラマやアニメは1~2クールの間で放送されているものがほとんどであり、中には10話もいかないものすらある。

放送期間を長くするとそれだけ骨太な作品が作れる一方、別になくても問題の無い回(所謂“捨て回”)が横行したり、途中で視聴者が見飽きて視聴率の低下を招いたり、逆に途中から改めて視聴しようとする動きを妨げたりと言った弊害も生じてくると言われている。実際、昭和2期以降は『帰マン』、『A』、『レオ』、『80』は路線変更をすることとなった結果、『帰マン』以外は「一貫性がない」と指摘されることになったし、『80』は学園編やらSF編やら子供中心編やらと迷走する結果となり、全65話ある『コスモス』は一年通して一つの流れを作る大河ドラマ形式と一つ一つの話が独立している一話完結形式がかみ合わずに話の流れがつかみにくかったり、連続ドラマ構成の『ネクサス』は放送短縮の影響で逆にテンポがよくなり、整合性を無視した『マックス』が「1話1話の出来の差が激しい」「悪い意味で文明批判の繰り返し」と指摘されることもあり、長ければいい作品が出来るというわけではない。一方で、ビデオ作品とはいえ12話構成の『G』も人類批判が多いという声もあり、短くても捨て回が出てしまう可能性がある。

要するに、ドラマと言うのは長すぎても短すぎても作品の質に悪影響を与えかねず、それを踏まえると半年再放送からの新作2クール放送というのは、視聴率維持の面でも妥当な路線と言える。


同時にこれもウルトラシリーズだけの話ではなく、映像業界全体に言えることであるが、現在は少子化や娯楽の多様化などにより、テレビでの視聴率をかつてほど伸ばすことはできないということにも留意すべきだろう。昭和から平成前期にかけて、4クール放送を無理にでも維持できたのは、視聴率やスポンサーからの融資からだけでなく、玩具等の関連商品の売り上げを出してもそれを無駄遣いしていたという側面も大きかったのである。そして売上面で回復したとしても、一度失った信頼を取り戻すことも簡単ではなく、それに何年もかかっていることも忘れてはならない。

当時の無理がたたって長くても4年でシリーズが途絶えたり、無理して4クール放送を行った上での赤字体質が結果的に会社の身売りへとつながったのは疑いようのない事実である。

また、作品作りも所詮はビジネスであるため、一族時代には作品に拘りすぎて他者に迷惑をかけまくっていたという作品の質以前の問題があったことも忘れてはならない。他者に迷惑をかけ続けて信頼を失った結果、新作を作れなくなった時代があるのは明らかなのだから。


加えて、現行の作品が過去作と違う路線であったとしても、それは予算不足ではなく現代に合うものを作っているということは忘れてはならない。

ウルトラに限らず、過去に作られた作品はたとえ高評価を得ていても、時代が変われば後々になって要所要所で問題点が指摘されることになるだろうし、平成三部作も画面外の特撮という作る必要のないものにすら金をかけたことが原因であり、また予算不足と言われる『ネクサス』も現在では高評価を経ているため、予算がある=いい作品が作れるとは限らないことも忘れてはならない。

また、例に挙げるのが該当するのかは不明だがアイスラッガーエースの切断技のように予算や時間、人手に関係ないところでも現代では描写を映像規制によって変えなければならないものも出てきており、「やりたくてもできない」ことも増えている。現在の作品や体制が過去作と違うのは、予算面ではなく、社会の変化によるものが大きいのだ。そして時流に乗らなければ生き残れないのは、円谷一族のやらかした件からもわかることである。


実際、ファンの中にはこの2クール放送を評価する声もあり、「気軽に見られる」「むしろ1年も追いかけるのは大変だった」と言った肯定的な意見も少なくないので、2クール放送が必ずしもマイナスであるとは限らないだろう(そもそもウルトラシリーズ最初の作品も(長期化の構想もあったとはいえ)2クール番組であり、40話を超えて放送された作品も『セブン』~『コスモス』までと『メビウス』くらいしかない)。というよりも、上記の通り、売上、予算面抜きに4クール放送には「メリットが少ない」という点は忘れないでおこう。仮に人手不足の状態で無理やり4クール制作をしても、骨太どころか生地を薄く延ばして味気のない薄っぺらいだけの作品になりかねないのだ。

「25話だけでも3~4回も総集編を挟むのに50話も増やしたらさらに総集編が増えるだけ」といった冷めた意見もみられる。


参考程度にだが、2024年に新世代ヒーローズで演出を担当している内田直之氏が自身のX(Twitter)にて「自分には放送期間を決める権限はない」と前置きしたうえで、現状の2クールのままでいいか、かつてのような4クール放送がいいかアンケートを取ったところ、現状維持が勝利を収めている(とはいえその差は本当に僅差であり、ファンの間では今でも意見が大きく分かれていることも浮き彫りとなっている)。


  • サブカルへの注力

近年では、特撮作品と並行してアニメ作品をはじめとするサブコンテンツの拡充にも再び力を入れるようになっており、平成時代の終了と前後する形で、多くのアニメ作品を世に送り出している


現在のサブカルチャー界隈は、特撮よりもアニメの方が主要なコンテンツと化していることを踏まえると、特撮にとどまらず、様々なメディア展開を駆使してシリーズやファンの裾野を広げようという円谷プロの試みは、時代の流れに沿った妥当な選択であると言える。

その影響は本家ウルトラシリーズにも間接的だが大きな影響を与えているのか定かではないが上記のアニメ作品が送り出され、アニメ作品に注目が集まった中で、唯一のアニメ作品で『ザ☆ウルトラマン』の設定を継承するヒーローが登場し、これまた人気を集めた。


こうした傾向は、円谷プロ作品の海外進出を標榜する塚越氏が2018年に社長に就任してからより一層強くなっており、2019年にはアニメ作品だけではなく、初の舞台化作品(所謂2.5次元ミュージカル)である『DARKNESSHEELS_THE_LIVE』が製作・上演され、大成功を収めた。また、同年年末には、ウルトラシリーズのみならず円谷プロ作品全般を対象とした大規模イベント『TSUBURAYA CONVENTION』を開催する等、年々そのスケールも大きくなってきている。


  • 現在の在り方

過去作は採算度外視、赤字体質で作られているのに対し、現在では採算を重視しているために、会社の利益自体はむしろ当時よりも大きいのではないか、という声もある。


実際、上記の通り追放後わずか1年で黒字転換を果たしたり、対応に追われたその後のスタッフの努力や手腕を評価する声も大きいため、あくまで結果論ではあるかもしれないが、現在では「円谷一族は追放されて当然だった」という見方が主流となっている。円谷一族を引き合いに現行批判の声もあるが、そもそも円谷プロが現行路線に走ったのも一族のやらかしたことのツケでしかないため、「原因となった側を持ち上げるのは論外」と、中にはまともな懐古厨にすら批判され返されるだけなので、どうしても批判するときは過去に捕らわれない批判にすることが必須である。


本来、同族経営時代のあり方は会社としてあってはならないものだし、何があっても正当化してはならないもの。一度は一族同士で団結しながら結果的に権力欲に負けて空中分解を起こし、円谷家は経営権を剝奪され会社からも追い出される結果となった。

今でこそ「時代遅れ」と言われがちな円谷英二氏の志は、その後の結果を見れば決して間違っていたとは言い切れない。もしも彼の強いプロ意識がなかったら、あるいは彼が妥協してばかりのいい加減な人間だったら、ウルトラシリーズは現在まで長く愛されるシリーズにはならなかっただろう。

しかし、一方でその高すぎる志が一種の呪いとなって後の時代に会社やシリーズを苦しめてしまったのもまた事実である。英二のやり方は「志や方向性はいいが、会社やシリーズ、現実面を見る目が圧倒的に足りなかった」という「間違い」ではないが、長期スパンで見れば「正しい」というには遠く及ばなかったと言わざるを得ないものである。


ましてや、英二のオプチカル・プリンターを『WOO』の企画が通ってもいないのに買って息子(円谷一)が立て替えただの、『ネクサス』の商業を捨て路線変更を拒否しただの、『Requiem』を製作中止したことで赤字を最小限に抑えられただのといった話なども現在でも美談や自慢話にされがちだが、これらはそもそも失敗時の後ろ盾がなければ絶対にやってはいけないことだし、そもそも美談にも自慢にもなっていないし、それによって会社を苦しめたこと、会社の人間だけでやるならともかく、そうではない状況で、多くのキャストやスタッフに迷惑をかけ金では買えない信用を失ったことは忘れてはならない。

一族時代の「利益に拘らず、とにかくいいものを作れ」ではなく「クオリティは維持しつつも無駄は省け」と、当初から多少変わりつつもその軸は今なお受け継ぎ、経営を絶対遵守しながらも当時にも劣らないほどの迫力ある映像を制作し、特に技術面はかつてよりも上昇している。

2020年代になってからはウルトラマンの海外権利問題もクリアし、自社コンテンツを積極的に世界へ配信している。自前の動画配信サイトであるTSUBURAYA IMAGINATIONも設立し、その知名度は日々拡大しつつある。放映期間は短いながらも、クオリティと採算を両立し、商業的側面もしっかり重視、展開し、さらには一族時代に喧嘩別れしてしまった東宝とTBSとも関係修復に成功し、共同作品が制作されることにもなった(前者はシン・ウルトラマングリッドマンユニバース(TOHOAnimation)、後者は現状は未定)。





歴代社長編集

  1. 円谷英二(1963年~1970年)…円谷プロ創業者。
  2. 円谷一(1970年~1973年)…英二の長男。
  3. 円谷皐(1973年~1995年)…英二の次男
  4. 円谷一夫(1995年~2003年)…皐の長男。バンダイからの経営改善要求により会長となる。
  5. 円谷昌弘(2003年~2004年)…一の長男。一夫から社長職を引き継ぐも、女性社員へのセクハラ問題で退任。
  6. 円谷英明(2004年~2005年)…一の次男。経営改善を目論むも『ネクサス』の打ち切りを不服とした一夫やスタッフ、役員らの社内クーデターにより解任。
  7. 大山茂樹(2005年~2007年)…英明が東宝不動産取締役から招致。初の円谷家以外の社長。大規模なリストラを主張するも一夫により解任。
  8. 円谷一夫(2007年)…大山氏を解任して会長職と兼任という形で復職。しかしこのころは円谷プロは限界を迎え、子会社化と共に名誉会長へと退き、それも後に退任。最期の円谷一族からの社長となる。
  9. 森島恒行(2007年~2008年)…非常勤取締役。円谷エンタープライズの設立に参加。TYOを紹介した。
  10. 大岡新一(2008年~2017年)…元カメラマン。生え抜きという形で10代目となる。現在は顧問を務める。
  11. 塚越隆行(2017年~2019年)…ウォルト・ディズニー・ジャパンでMovieNEXの仕掛け人。現在は会長を務める。
  12. 永竹正幸(2019年~)…タカラトミーの海外部門「トミーインターナショナル」で海外事業を経験

制作作品一覧編集

製作作品編集


製作協力作品編集



企業CM編集

今でこそ全く見られなくなったが、円谷プロは1990年代中期には怪獣やヒーローが一堂に介し、日常を繰り広げる企業CMを放映していた事があった。その中には、当時は客演の機会に恵まれなかった怪獣がしれっと混じっていたこともある。

なお、このCMシリーズではどういうわけかダダがヒロイン的な役回りになっている事が多い。当時はダダを推さなきゃいけないノルマでもあったんだろうか。


作品リスト(タイトルは便宜上のもの)編集

  • ウルトラマンレーシング編

ウルトラマン達がピットクルーとして当時結成されたレーシングチームサポートするという内容。

ダダは何故かレースクイーン役である。

使用された楽曲はウルトラマンパワードでもEDを務めた須藤ひとみブラザーズ・ヒーロー


  • 恋ってなんだろう?編

焚き火を囲むナディア・ギフォードと円谷皐社長が「恋ってなんだろう?」を歌い、ウルトラヒーローと怪獣たちが仲良く踊るという内容。ウルトラマンのダンスパートナーはダダとなっている。よく見るとパワードバルタン星人も踊っており、結構目立つ。


  • ナディアのクリスマス編

ナディア・ギフォードが天使に扮し、「ラスト・クリスマス」を歌う。

怪獣やウルトラヒーローが仲間や恋人達と共にクリスマスを過ごすという内容。ダダはある人物をクリスマスツリーの近くで待っている様子。そこに現れたのは…

尚、クリスマスを共に過ごすパートナーの組み合わせはウルトラの父ウルトラの母などの公式カップリングの他、ゴモラエレキングパンドンジャミラレッドキングカネゴンメトロン星人ペガッサ星人など何をどうやったらそんな人選になるんだというカオスな組み合わせも散見される。と言っても一番カオスなのは、これまで無機質なキャラクターで通っていたキングジョーテンションが異常に高く生き生きしている事なのだが。


  • サッカー編

初代ウルトラマン〜ダイナまでの名だたるヒーローにブースカを加えたイレブンとメフィラス星人らを始めとするイレブンの対決を描く。宇宙人側のラフプレーに怒ったヒーローチームと乱闘になり、ケムール人審判イエローカードを下し、宇宙人側が嘲笑するが、ヒーロー達の思いを繋いだブースカのオーバーヘッドキックで逆転勝利。ヒーローチームはブースカに勝利ハグをするのであった。

ちなみにベンチをよく見るとチャメゴンがいる。


  • スノーボード編

ブースカとピグモンのコンビはある時、TVで見かけたスノーボードに興味を示すが、とても高くて手が出せず、購入を目指して各地でバイトを始めた。ようやく軍資金が溜まったという所でカネゴンお金を全部食べてしまい、努力水の泡と化すが、廃棄場にまだ使えるダダ柄のボードを発見。二人はついにスキー場へのツアーバスに乗り込むのだった。

使用楽曲はV6の「always」。


  • ブースカのクリスマス編

山田まりや(ミドリカワ・マイ隊員)推しドルヲタであるブースカ(ブースカ!ブースカ!!版)はある夜、彼女のクリスマスコンサートに参加し、彼女へプレゼントを渡そうとするが、つまづいた拍子にプレゼントを破損してしまい、悲嘆に暮れる。彼を哀れに思ったダダが手を差し伸べようとするが、サンタウルトラマンは彼女を引き止める。そこにはガールフレンドのブースコがブースカにプレゼントを渡す姿があった。

使用楽曲はV6の「MIRACLE STARTER〜未来でスノウ・フレークス〜」。


サウンドロゴ編集

円谷プロの許諾を得て販売されている映像ソフトには東映同様にサウンドロゴが挿入されるが、時代によって演出が異なるため、これでファンの世代を判別できてしまったりする。

  • オレンジ色のオーロラで構成されたマイティジャックのマークが画面奥へと消えて行き、TSUBURAYAという青い字を引き連れて画面中央に戻ってくる演出(90年代初期)
  • コミカルなBGMをバックに地球がグルグルと回る演出(2000年代初期)
  • 流星が集まって円谷プロのロゴを形成する演出(新世紀ウルトラマン伝説2003などで確認)
  • 竹林の中で次々と竹が伸びて行き、美しい月光をバックに銀色の円谷プロのロゴが現れる演出(2006年頃)
    • 2006年はウルトラマンシリーズ40周年だったのでシュワッチ!!という音声と共に記念ロゴが現れる。
  • 幾重ものマイティジャックのマークが重なって円谷プロのロゴが現れる演出(2010年代頃)
  • 画面中央で光の粒がぶわりと弾け、再び集まって円谷プロのロゴになる演出(2016年以降)
    • ウルトラシリーズのYoutube配信では、これに続いてウルトラマンの口元からカラータイマーまでを写し、フェードアウトすると共に「ULTRAMAN」の銀色のロゴが現れる演出が入る。
    • 2022年からは「ULTRAMAN」のロゴ演出も一新され、美しく煌めく赤いクリスタルが複雑に敷き詰められた景色から徐々にズームアウトし、宇宙空間のような背景に赤い「ULTRAMAN」のロゴが現れ、すぐに背景が白一色に変わる演出になった。

マスコットキャラクター編集

店長怪獣デパゴン編集

店長怪獣 デパゴン

身長50cm
体重380g

円谷公式オンラインショップ「怪獣デパート」のマスコット。

オレンジ色のパペットタイプの怪獣であり、デパートに引っ掛けたのか齧歯類のような出っ歯が特徴。

からはガマ口を提げており、カタツムリのようなからカネゴンの系譜にあたる怪獣である事が窺える。

に被ったプロペラは時々回転するらしく、店長という役職故か働きすぎでぶっ倒れたエピソードがある。

ライバルは同じく円谷プロのマスコットともいうべきブースカらしい(本人談)。


関連動画編集


関連タグ編集

円谷 会社 映画 特撮 ウルトラシリーズ 円谷ッター

円谷英二 成田亨 金城哲夫 実相寺昭雄 日本現代企画

祖師ヶ谷大蔵駅:かつての本拠地最寄り駅。現在は渋谷区にある神泉駅が最寄りになる。


日本サンライズ バンダイナムコピクチャーズ バンダイナムコフィルムワークス


ガイナックスウルトラマンをリスペクトした大ヒットアニメの製作会社だが、「作品至上主義をお題目に掲げた放漫経営」「重要な知的財産権の勝手な売却」など社風が悪い意味で共通してしまっており、2019年の庵野秀明の取材を見たファンの間でも「かつての円谷プロを連想させる腐敗ぶりだ」という意見が出た。彼方も一新した経営陣の元で会社の建て直しを図ったが、円谷プロの様な復活には至らず、2024年5月を以て破産という形で歴史に終止符を打った。


外部リンク編集


経営関連編集

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