「怪獣」出現!
地球を守れるのは彼だけだ!
キャラクターとしてのウルトラマンパワード→ウルトラマンパワード(キャラクター)
概要
原題は『Ultraman The Ultimate Hero』。
『ウルトラマンG』がアメリカのケーブルテレビで放送されて好評だったことを受け、海外販売を前提にハリウッドの技術と独自の設定を組み込んで作られた、いわばアメリカ製ウルトラマン。
円谷プロと、現地のスタジオ「Major Havoc Entertainment」の協業で制作された。
『ウルトラマン』のリメイク作品で、出現する怪獣・ストーリーは『ウルトラマン』のそれをアメリカナイズしたものとなっている。ただしパワードと初代ウルトラマンは、故郷を同じくするもののあくまで別人である。
概ね怪獣の基礎設定も元ネタをなぞったものが多いが、宇宙人はM78星雲人とバルタン星人しか登場しない為、ダダは宇宙人ではなく電子生命体という大幅な設定変更をされている。
防衛隊方面も同様で、隊長のエドランドを除けば、メンバーの男女比率が等しい人数になっている。女性隊員の役割もオペレーターではなく、隊員ナンバーも『帰ってきたウルトラマン』のMATや『ウルトラマンレオ』のMACと異なり、2番や3番といった若い番号が与えられるなど、男性隊員と同格(もしくはレディーファースト)の扱いがなされている。
版権が複雑で、VHS、LD以降の映像ソフト化はなされていなかったが、2017年3月22日に遂にBlu-ray BOXの発売が決定、20年以上の歳月を経て、再び映像を楽しむことが可能となった。
2020年9月からは『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』との連動も兼ねての円谷プロのYouTube公式チャンネルで『ウルトラマンG』の配信が行われており、同じ海外製作作品である本作にも同様の措置が取られることを期待する声もある(ちなみに、パワードもグレートと共に『UGF』に登場している)。
日本国内での展開は当初OVのみの予定だったが、1995年4月8日から7月1日までTBSで放映されている。『パワード』の製作当時、円谷プロとTBSは『ウルトラマン80』における対立がもとで冷戦状態にあったが、日本でのビデオ制作およびテレビ放送に当たり、プロジェクトに参加していたバンダイ(当時)や読売広告が放送枠の獲得に協力し、TBSでの放送へと漕ぎつけた。これはのちの『ウルトラマンティガ』に始まる新世代ウルトラマンへ至る起爆剤となった。
アメリカ本国での展開について
ハリウッド製ウルトラマンということで、当然アメリカで放送された……と扱われることの多い本作だが、実はアメリカでいつどのように放送されたのか不明である。というか日本国内で情報を集める限りでは、まったく放送されていない可能性が高い。
とにかくこの作品は、アメリカのどの局でいつ頃放送されたかといった具体的な記録が全く確認されていない。英語圏のwikiやファンサイトにも、それらの記載はなく、むしろ「アメリカでは放送されなかった」と断じているものが複数ある有様である。
大小合わせて1700局以上あるアメリカのテレビ局のうち、非常に小規模な、ネット上でも放送記録を容易に確認できないほどマイナーな局のみでの放送だった……というパターンも考えられるが、少なくとも全国的な放送が行われなかったのは確かである。
アメリカで放送されたことがあるという明確な情報ソースの一つは、円谷プロの社長を務めた円谷英明氏の著書『ウルトラマンが泣いている』の「アメリカで放送されたが人気を得られなかった」という記述だが、やはり具体的な放送期間や放送局が付記されていない上、同書にはかつての自社商品にもかかわらずウルトラシリーズへの事実誤認がかなり含まれていることから(「余談」の項にて後述)、ソースとしては心もとないというのが実情である。
せっかく海外展開を見据えてハリウッドで制作したにもかかわらずなぜこうなったのかは不明であるが、メイン監督のキング・ワイルダーは、作品の二次使用料が影響していると推測している。すなわち、制作を担ったのがアメリカのスタッフであっても主導はあくまで日本であることから日本の労働組合規定が適用され、日本国外での放送やソフト化には使用料が発生してしまい、採算が合わなかったというものである。また全13話という話数の少なさについても言及している(アメリカでテレビ放送にかけるには話数が少なすぎる)。これについては、当初日本側からは全26話にしてほしいと頼まれていたものの、予算的に厳しく、断らざるを得なかったのだという。
技術・演出
着ぐるみの水冷装置や怪獣の造形など、キャラクターのデザインに関しては非常にレベルが高いものになっている反面、その造形が仇となり動きが悪く、殺陣や巨大特撮のノウハウもない中撮影が続行されたため、過去のウルトラシリーズに比べて、アクションの迫力に欠ける面がある(パワードゼットンやパワードドラコに関しては反って圧倒的な強さの演出になっていた)。また、アメリカのコミックス・コードの影響もある(アメリカの子供番組では殴ったりする格闘めいた動きは放送コードを通らないため)。
そのため、特に第3話まで、戦闘の大半は押したり引いたりする、穏やかなものであるが、演じ方のために重厚感がある。
ただし第4話からはスタッフの変更もあって、パワードテレスドンの頭をグーでぶん殴ったり、パワードバニラとパワードアボラスに立て続けに蹴りを打ち込んだりと、本格的なアクションも混ぜるようになった。パワードダダ戦のように光線を連射するものもある。
また終盤の作品であるパワードドラコ、パワードゼットン(前後編二作で最終回を描いた)の評価は今なお高い。
そのほか、変身シーンのスパークする効果音が毎度のように変わる、シーンによってカラータイマーが赤だったり青だったりするなど、徹底されていない部分が多々ある。
ミニチュアについても、お蔵入りになった映画のセットを安価で流用できた『G』の特撮シーンとは逆に、『パワード』第1話のビル街は予算面と現地スタッフの技術面、両方の問題で、簡素なものになってしまった。これを問題視した日本側が、追加の予算を提示した上で日本からスタッフを呼び寄せ、徹底的にミニチュアを改修した件は、スタッフのインタビューで語り草になっている。改修後のセットを写真に撮り、現地スタッフに見せたところ、「よく撮れてるね。どこの街で撮ってきたの?」という返答が返ってきたほど。
ちなみに、円谷プロと共に本作の制作に携わったMajor Havoc Entertainment社は、特撮のノウハウを持たないどころか、そもそも本作以外の制作実績がろくに確認できない謎の会社である。本作が制作された1994年に設立されたばかりで、その後ほかの作品を手掛けた様子はない。
日本側からは、創設して間もないGONZOのスタッフが多数参加している。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え |
---|---|---|
ケンイチ・カイ隊員 | ケイン・コスギ | 森川智之 |
ラッセル・エドランド隊長 | ハリソン・ペイジ | 内海賢二 |
テレサ・ベック隊員 | サンドラ・ギィバード | 戸田恵子 |
ジュリー・ヤング隊員 | ロビン・ブライリー | 久川綾 |
リック・サンダース隊員 | ロブ・ロイ・フィッツジェラルド | 江原正士 |
ウルトラマンパワード(声) | ショー・コスギ | ショー・コスギ(第1話)、大塚明夫(第13話) |
放映リストと登場怪獣・宇宙人
パワード怪獣を参照。
主題歌
作詞:松井五郎/作曲:鈴木キサブロー/編曲:矢野立美/歌:前田達也
「デーン!デーデデデデーデデデーン!」というイントロが印象的なOP。原語版ではメロオケ版が使用され、特徴的なタイトル表示や怪獣達の影絵による映像など、初代ウルトラマンをオマージュした演出がなされている。
「COLUMBIA Cover Version」ではボーカルを石原慎一を担当した。
作詞:松井五郎/作曲:鈴木キサブロー/編曲:矢野立美/歌:前田達也
ビデオ版でのED。「COLUMBIA Cover Version」ではボーカルを石原慎一を担当した。
作詞:森雪之丞/作曲:良実明宏/編曲:Y2/歌:須藤ひとみ
テレビ版ED。バンダイから販売された再編集ビデオのEDとしても採用された。
余談
あまりソフト化の機会に見舞われなかった作品ではあるものの、TDG三部作が制作される頃まで展開していた再編集ビデオシリーズ「ウルトラマンワールド」では、『ザ☆ウルトラマン』や『80』と並び、この作品の劇伴音楽が使われる事が非常に多かった。
特に使用されたのは「ウルトラマンパワード メインテーマ」、「戦闘母艦スカイハンター」の2曲。パワード本編はよく見た事ないが、ビデオで聞いた事があるというファンも多いのではないだろうか?
……というかかなり多くの未使用曲が存在し、ここで初めて日の目を見た曲も多い。
作曲した佐橋俊彦氏が「想定していたのと違う使われ方がされている」とコメントしているほど。
だが一番意外な使われ方は、このメインテーマが「開運!なんでも鑑定団」のアイキャッチやメインテーマになっていたことだろう
前述の「メインテーマ」でさえ原語版最終話のオープニングで使われた程度であり、「戦闘母艦スカイハンター」も転調パートをカットした上で怪獣の進撃シーンで使われることがほとんど。「W.I.N.R.出撃せよ」も同様に、大抵転調パートをカットされていた。
一方で、前奏をカットされつつも、いくつかのパートがブリッジ音楽として多用された「咆哮する破壊者」など、印象に残る使われ方がなされた曲も存在する。
TDG三部作以前に幼少期を過ごした世代は『G』や本作が原体験という人も多く、のちにシリーズ作品に出演することになる福田沙紀や高橋一生は本作を特に好きな作品と挙げている。
VHS、LDでは『G』と異なり吹替版しか発売されず、ブルーレイ版も2017年にようやく発売されるなど不遇な扱いを受けたことは否めない。また、1995年のTV版は尺の都合で一部をカットした「不完全版」であり、作品の魅力を十分に伝えられるものではなかった。その後は再放送、ネット配信などが行われず、VHS、LDの衰退とともに視聴が困難になっていった。さらに不幸なことに、日本側の関係者によるネガティブな証言が活字になり残ってしまった。元々TV版(不完全版)しか見ていない上に、改めて映像を視聴したくともできないファンがネガティブな情報に影響され、『パワード』が実際よりも劣った作品であるかのような印象が広まっていた時期があった。
パワードの客演した『大いなる陰謀』で監督を務めた坂本監督は、かつて『Guyver: Dark Hero』のアクション監督として撮影に参加していた際に、たまたま近くで『パワード』の撮影を行われており、そのことを日本人スタッフから教えられたことがあったらしい。
3DO用として1994年3月20日にバンダイから格ゲー化もされた。原作映像を流用しつつ原作再現性を高めたVISUAL MODE(第1話から第3話までを追体験できる)、勝ち抜き式のBATTLE MODE(ここまでのモードにはシューティングゲームの要素がある)、2PやCPUと対決するVS MODE、図鑑枠のDATA BASEが実装されており、後続の『ウルトラマンファイティングエボリューション』を思わせる。
登場キャラはバルタン星人、ケムラー、レッドキング、テレスドン、ダダ、ジャミラ、ゴモラ、バルタン星人Ⅱとなっており、本作のパワードダダの頭の造形はこちらに登場したものに似通っているが、理由は不明である。
実はシンジョウ・テツオを演じた影丸茂樹氏の(声優としてだが)ウルトラシリーズ初出演作でもあったりする。
六代目社長の円谷英明(円谷一の次男)が出版した「ウルトラマンが泣いている」では怪獣デザインを「アメリカ人が自分好みに勝手にデザインを変えた」とあるが、これは誤りで実際は三池敏夫、前田真宏、樋口真嗣といった日本の名だたるクリエイターがデザインしている。ただ、実際に円谷プロ上層部にはデザインは不評だったらしい。
関連項目
ウルトラマントリガー:同じく過去作をベースに作られた作品。またパワードダダが登場。
平成ガメラ:本作で生まれたコネと(湯浅憲明も参加していた)『ウルトラマン80』のノウハウと『ウルトラQ』の未制作作品(『ウルトラQザ・ムービー星の伝説』の前身)のアイディアが活かされたとされている。他にもウルトラシリーズとガメラシリーズには製作面における様々な関係性がある(カプセル怪獣も参照)。
忍者戦隊カクレンジャー:同じくケイン・コスギが出演しており、語り草となっている。
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