誰も知らない新しいウルトラマンがやって来た!
概要
日豪合作によるウルトラシリーズの1作で、平成最初のウルトラマンでもある。
オーストラリアで撮影され、日本では1990年にビデオ発売、再編集した劇場版として展開された。全13話。
当初は全6話のオリジナルビデオ作品として予定されていたが、海外での展開を考慮し、7話追加となった。そのため、邪悪生命体ゴーデスと戦う前半と、さまざまな怪獣と戦う後半に分かれている。テーマとしては、環境問題への意識が強く取り入れられている。
後にアメリカのケーブルテレビにて好評を博し、『ウルトラマンパワード』へとつながっていくことになる。
元々はOVとして展開されたが、1991年にNHK-BS2にて初めてテレビ放送され、1995年にTBSで地上波放映される。なお、TBSでの前番組はこの作品から見ての次回作である『ウルトラマンパワード』である。つまり、1996年放送の『ウルトラマンティガ』から見て直近に当たるTBS放映作品は『ウルトラマン80』ではなく、この作品という事になる。
また、原語版と吹き替え版では効果音や諸設定に差異が見られるので、視聴の際には注意が必要である(例:原語版ではグレートはゴーデスに故郷を滅ぼされたとなっているなど)。
技術・演出
オーストラリアの地の利を生かしたオープンセットの多用、キャラクターの巨大感を表す為に、あえてビルの高さより低い身長にされている、戦い終わったグレートが飛び去る場面を真下から映すなど、今までとは少し違った切り口の特撮場面が見られる。初めて人々の前に登場した際に新たな敵と間違われて一度は攻撃されるなど、「人類とウルトラマンとのファーストコンタクト」を改めて捉えなおしている描写が多い。
オーストラリアの伝統技術であるパペットも多用され、新たな個性を持った怪獣たちが生まれた。何気に120m越えの超巨大怪獣が5体も登場しており、従来のシリーズより重厚感溢れた戦いが見所。
あらすじ
太陽系の第4惑星、火星…ここで、まだ誰も見たことの無い戦いが、静かに幕を開けた…。
邪悪生命体ゴーデスが襲来し、地球の火星探査船を襲う。
M78星雲からゴーデスを追ってやってきたウルトラマングレートは、何とかこれを倒すも、
ゴーデスは自らの体を細胞に分解、太陽系第3惑星、地球へと逃亡する。
ゴーデスによって破壊させられた火星探査船の生き残り、ジャック・シンドーはウルトラマングレートと一体化。
地球へ帰還し、国際軍事組織「UMA」の南太平洋支部に着任する。
その頃、地球へとたどり着いたゴーデス細胞は、他の生物に感染し、邪悪大怪獣を生み出して破壊を始める。
放映リストと登場怪獣・宇宙人
⇒グレート怪獣を参照。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え |
---|---|---|
ジャック・シンドー隊員 | ドーレ・クラウス | 京本政樹 |
アーサー・グラント隊長 | ラルフ・コトリール | 小林昭二 |
ロイド・ワイルダー隊員 | リック・アダムス | 山寺宏一 |
チャールズ・モルガン隊員 | ロイド・モーリス | 柳沢慎吾 |
キム・シャオミン隊員 | グレース・パー | 平野文 |
ジーン・エコー隊員 | ジーヤ・カリディス | 榊原良子 |
スタンレー・ハガード | ジェイ・ハケット | 津田英三 |
ブリューワー将軍 | ピーター・レイモンド・ロウェル | 飯塚昭三 |
ウルトラマングレート(声) | マシュー・オサリヴァン | 岡部政明 |
ナレーター | ジョン・ボネー | 藤岡弘(第1~6話)/内海賢二(第7~13話)/玄田哲章(次回予告) |
字幕版では、ウルトラマンの掛け声やカラータイマーのSEの違いが挙げられるが、セリフが回しが大きく異なりストーリーが違うエピソードもあるため、もう一つのウルトラマングレートともいえる内容になっている。
主題歌
言語版は洋画のように壮大なオーケストラ曲が使われているのに対し、日本語版では王道なテーマソングが使われている。
作詞:山川啓介/作曲・編曲:風戸慎介/歌:京本政樹/コーラス:森の木児童合唱団
日本語版のOPソング。歌詞中にはウルトラ兄弟が登場するが、本編では絡みが全くない。
作詞:山川啓介、作曲・編曲:風戸慎介、歌:京本政樹、森の木児童合唱団
日本語版のEDソング。
- ULTRAMAN(日本語:未来へ向かって)
作詞:奈良橋陽子/作曲/編曲:風戸慎介/歌:JAY HACKETT
メディア展開
ソフト化
海外制作ということもあり、版権が複雑で、VHS、LDが発売された後、長い間DVD以降のメディア化はされてこなかった。しかし2017年2月27日に待望のBlu-ray BOXが発売された。
VHS版では第8話~最終話までは『新ウルトラマンG 必殺!怪獣大決戦』と改題されていたが、Blu-ray版では全て『ウルトラマンG』に統一されている。
コミカライズ
『テレビマガジン』コミカライズ版
放映当時、講談社の児童誌『テレビマガジン』にて島本和彦による漫画版が掲載されていた。
児童向けということもあって、「30分の内容を決まったページ数で収めるのは不可能」と判断した島本により、Bパートのみがコミカライズされ、Aパートはあらすじだけで紹介されていた。
作品はそこまで本編から乖離してはいないものの、戦いの最中ウルトラマンゼアスのようにグレートが大きく口を開けるなどのオリジナル演出が挟まれており、リュグロー戦ではグレートが肩口を切り裂かれる、シラリーが首を斬り落とされてもなお襲い掛かって来るなど、児童向けだからと妥協しない描写も特徴である。
また、最終章である「永久なる勇者」のみ前後編になっており、最終回ではTV版とは異なる終わり方を見せている。
また講談社『ヒーローマガジン』1991年1月号に森藤よしひろによる読切漫画が掲載された。
『Ultracomics』&『Nemesis Comics』コミカライズ版
Ultracomics版(1993年にHarvey Comicsにより全3巻が刊行)とNemesis Comics版(1994年にHarvey Comicsにより全5巻が刊行)があり、Ultracomics版では原作1話と似た流れに始まったが、UMAの規模やゴーデスと決着を付ける場所が月面になっていたりと全くのオリジナル展開となっている。
ワニのような謎の水棲怪獣や巨大鮫などオリジナルの怪獣もそれなりに登場している。
Nemesis Comics版では以下の新展開が組み込まれた。
- 第1話でジャック・シンドーが死んでしまい、日系アメリカ人の元格闘家エース・キムラ(実は大石内蔵助の子孫)と一体化。『Perfect amalgam of both』なる新形態を披露。
- ゴーデス細胞に感染し、付着したキムラの血液の影響で殺人犯のRaptorがブルーウルトラマンというカオスウルトラマンの先駆けのような存在に変化する(見た目は青いグレート)。
- 舞台が日本であり、オリキャラとしてUMAのAyumi隊員が登場したり、日本神話にウルトラマンらしき存在が関わっているらしい事が示唆される。
- ジャックが死ぬ原因となった「Daemon」、惑星Shima12で反乱を起こしたロボット軍団「ROBEX」などオリジナルの敵勢力が登場。
- 何故かハヤタ・シンの名前が登場する、等。
劇場版
『ウルトラマンG ゴーデスの逆襲』と『ウルトラマンG 怪獣撃滅作戦』の2作が1990年12月15日にて公開。
前者は第1話・第5話・第6話の再編集版(一部2話の映像を使用し、完全版では4話を除いた序盤の6話の再編集となった)、後者は第7話・第10話・第12話・第13話の再編集版であり、完全版では4話を加えたバージョンとなっている。一部、未公開シーンを使用しているのが見所であるが、再編集の影響で第4話の内容に矛盾が起こってしまっている。なお、完全版の吹き替え版は日本未発売である…。
CS放送
2020年7月25日から、海外ドラマ専門チャンネル「スーパー!ドラマTV」で吹替版が放送された。
公式配信
2020年9月4日から、グレート生誕30周年および『ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀』登場を記念してYoutubeのウルトラチャンネルで字幕版が配信されている。
小ネタ
オーストラリア版ウルトラマンの新ウルトラマンや怪獣のデザインには初期のウルトラシリーズのデザイナーでもあった成田亨がオーストラリア版ウルトラマンのために金色と黒ラインの「ウルトラマン神変」を描き上げたものの、円谷プロとのトラブル事情もあり、成田亨登版には至らなかった。
特撮ファンとして知られる俳優の京本政樹が深くかかわっており、主人公の日本語吹き替えや主題歌を務めている。「グレート」という名も、オーストラリアの世界遺産・グレートバリアリーフに由来し、京本が名づけた。また、グレートのNG版の着ぐるみを使用し京本自身が監督・主演の『ウルトラマンマサキ』という短編映像作品も作った。
チャールズ・モーガンの吹き替えを担当した柳沢慎吾は、およそ四半世紀後に製作された『ウルトラマンオーブ』で主要キャラクターの1人である渋川一徹役を演じた(渋川の役どころがビートル隊の「隊長」であるため、結果論ではあるが、アーサーを吹き替えた小林氏がムラマツ隊長と相まって「かつてのキャップと未来のキャップ」の構図となった)。ロイド・ワイルダーの吹き替えを担当した山寺宏一も、同作の劇場版にてガピヤ星人サデスの声を担当している。
ナレーションを担当した内海賢二氏がウルトラシリーズに出演するのは実にウルトラQ以来の出来事であった(それ以前にも『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』や『ウルトラマン怪獣大決戦』で予告を務めていた)。しかし、今回はナレーションとしての出演であり、作中の人物としての出演は次回作でのラッセル・エドランド隊長役まで待たねばならない。
また、何気に仮面ライダーキャストが二人も関わっている作品であり、小林昭二は過去にウルトラマンにレギュラー出演した後に仮面ライダーにも立花藤兵衛レギュラーで出演しているのは言うまでもないが、仮面ライダー1号その人を演じた藤岡弘、がナレーターとして参加した事は特筆すべき点であろう。ただし、藤岡氏が作中の人物としてウルトラシリーズに出演した事は2022年現在ない。
ゲスト声優陣も小林清志(サイクス役)、中尾隆聖(アボリジニのムジャリ役)、潘恵子(ベロニカ役)、浪川大輔(ジミー・マーチン少年役)、他にも梅津秀行、永井一郎、中田和宏…とこのように声優陣に大御所声優やタレントを起用している豪華な作品でもあるのだ。
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ウルトラマングレート:表記ゆれ。こちらはキャラクター。