ウルトラマンゼアス
うるとらまんぜあす
「TVじゃ見れない、新しいウルトラマン!」(『1』より)
「最強の敵は、ウルトラマンだ。」(『2』より)
元々は出光興産のCMキャラクターとして生まれたウルトラマンである。
2作にわたる劇場版作品のみで構成されるシリーズであり、テレビシリーズは制作されていない。
劇場版のみで進行したウルトラマンシリーズは、ほとんどゼアスが唯一といってよい(『ウルトラマンUSA』は海外ではテレビシリーズ作品として放映された為)。
第1作は『ウルトラマンシリーズ 30周年記念映画 ウルトラマン ワンダフルワールド』の一編として1996年公開され、『甦れ!ウルトラマン』とアニメ作品『ウルトラマンカンパニー』が同時上映された。
なお、当作はCMでのみ「蒼き星永遠なれ」という副題が付いていた。
第1作の制作には出光興産に加えてフジテレビが深くかかわっており、とんねるずの2人を防衛チーム・Mydoの幹部に起用したり、さらには主人公にとんねるずの当時のマネージャー、つまり全くの素人である関口正晴氏を起用するなど、お祭り・コメディ的様相が強かった。
1997年には続編『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』が公開。同時上映は『ウルトラニャン 星空から舞い降りたふしぎネコ』。
『2』は半人前で臆病な若者であったゼアスが一人前の戦士へと近づいていく、正統派の成長物語となった。
90年代当時の格闘ブームを反映し、K-1創立者である石井和義氏(当時は正道会館の館長であった)協力の元、『1』と比べてシリアスな物語に仕上がった。さらに角田信朗氏やアンディ・フグ氏も出演しているのが特徴である(デアゴスティーニ/2009〜2011)『トピックインフォメーション SERIESEX6「ウルトラマンゼアス」SHEET02』より)。
どこか『ウルトラマンレオ』を彷彿とさせる作風であり、同作には森次晃嗣氏もMydoの隊長役で出演しているが、師匠役ではない(ここ重要)。
上述の制作経緯からか、夜間上映では同時上映作品がウルトラニャンではなく『最強への道〜WELCOME TO THE K zone』となっている。
出光興産との関わりは根強く、Mydoの本部は『出光リテール販売(株)神奈川カンパニー セルフ東百合ヶ丘SS』にてロケが行われ(Mydoの隊員達も表向きはガソスタ店員である)、出光興産のCMでは往年のウルトラ怪獣とゼアスが激闘を繰り広げ、主題歌CD「ウルトラまいどCD」は出光興産のガソリンスタンドでの給油やmydoカードへの入会で入手できた。後年には初代ウルトラマンがCM出演したり、2007年頃に後述する『ウルトラ出光人』なるキャラクターが制作されるなど出光と円谷のタイアップは続いた。
とんねるず側もタイアップを積極的に行なっており、『とんねるずのみなさんのおかげです』では『仮面ノリダー』のノリでパロディコントも行われた。そちらでは木梨憲武氏と関口正晴氏の役割が逆転している他、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウまでのウルトラ兄弟が客演しているなど見所も盛り沢山であった。本家から高岡由香氏も星見透隊員役で登場。
また、『ノリダー』とも世界観が繋がっており、立花藤兵衛がゲスト出演している。
映像面では、デジタル編集の導入でウルトラマンや戦闘機の飛行シーンの大部分がCGになり、光線も従来のオプチカル合成ではなくデジタル合成で処理された。
1998年公開予定で『ウルトラマンゼアス3』も企画されていたが、企画書提出時点で『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』の製作がすでに決定していたため、お蔵入りとなった。この為、ベンゼン星人側との明確な決着が描かれないまま現在に至る未完のシリーズとなった(レディベンゼン星人のその後と思われる姿が『大怪獣バトルウルトラアドベンチャーNEO』に登場する形で補完は行われている)。
ゼアスはこの他に出光のCMや円谷プロ主催のキャラクターショーには出演しているものの、制作経緯の都合上権利が複雑に絡み合っているため、フィギュアなどの制作回数は少ない。映像ソフト化も独特でビデオが独立してリリースされたが、DVDとBlu-rayは2作同時収録となっている(Blu-rayの発売は2016年12月22日)。
とはいえキャラクターの露出自体はそれなりに多く、単独でゲーム化もされた他、イベントでは同じく外部媒体で活躍したウルトラマンナイスとコメディリリーフとしてコンビを組んでいる。
現在の出光のイメージキャラクターの役割は、ウルトラ出光人こと、ウルトラマンHotto・ウルトラマンMotto・ウルトラマンKittoの3人が受け継いでいる(一部の出光のスタンドでは今でもゼアスの垂れ幕や旗を使っている所もまだある)。
本作に登場するウルトラマン(ゼアスとシャドー)のデザインは杉浦千里氏が担当している。
また、女性ウルトラマンが登場する案も存在していたという(出典:『ウルトラマンオフィシャルデータファイル』(デアゴスティーニ/2009〜2011)『トピックインフォメーション SERIESEX6「ウルトラマンゼアス」SHEET02』より)。
ゼアスの出身がM78星雲・光の国ではなくZ95星雲・ピカリの国であったり、必殺技がスペシウム光線ではなく「スペシュッシュラ光線」だったりと初代『ウルトラマン』のパロディ的側面が強い作風だが、黄金のウルトラマン像が作られたり、ゼットンファイナルビーム(ゼットンブレイカー)を元にゼットン光線砲が作られるなど初代ウルトラマンが認知されている世界が舞台である事は確か(『2』では前隊長・副隊長らがセブンのモノマネをやっている他、第一作の冒頭で子供たちが持っていた玩具からセブン、エース、タロウ、パワード辺りは認知されていると思われる)。
ゼアス自身も初代ウルトラマンとは遠い親戚関係にあるという設定である。
しかしながら、世界観の詳細は依然として不明な点が多く、『ウルトラマン全戦士超ファイル』(小学館、2020、P8)によればゼアスの出身はM78スペースとも受け取れる記載がなされている(無論、本作の世界=M78スペースというわけではないので注意)。
時代設定に関してだが、ウルトラマン地球来訪30周年を記念して黄金像が建立されている辺り、1996年ではないかと推測される(同年放送の『ウルトラマンティガ』は30周年記念作品である他、作中の新聞記事の画像にもしっかり『ウルトラマンワンダフルワールド』の文字がある)。
ただし、Mydo設立の切っ掛けとなった事件が20世紀末に頻発したりと設定と噛み合わない所がある。
余談だが、作中で登場する新聞はそれぞれ毎日新聞、朝日新聞のパロディである。
ウルトラマンゼアス
地球上からあらゆる紛争が消え、人類の敵が自ら引き起こした環境汚染と地球外からの侵略者のみとなった時代。
Z95星雲・ピカリの国からやってきた若者・ウルトラマンゼアスは、朝日勝人という青年となって超宇宙防衛機構Mydoの見習いになった。
しかし気が弱くてどんくさく、さらに重度の潔癖症である彼は、ゼアスに変身する前も後もいまいち活躍できないままであった。
そこへある日、地球を木端微塵に破壊しようと企むベンゼン星人が襲来する。
ゼアスは、心優しい同僚・透や、自分に憧れる少年たちのために、潔癖症を克服してベンゼン星人を倒そうと奮闘する。
超宇宙防衛機構Mydo
“Mysterious Yonder Defense Organization”。その名前の由来は、出光のmydoカード。
高度な科学技術と強力な武装を持った防衛隊だが、人類同士の紛争がなくなった社会においては露骨に基地を構えられないため、出光のガソリンスタンドに偽装している。というか普段は隊員皆、ガソリンスタンドの店員として働いている(はっきり言ってメカの発進の際に目立ちすぎて基地の存在はバレバレであるが)。
技術力は他のウルトラシリーズの防衛チームと比べてもかなり高いが、劇中では一度も勝てていない。
また、基地や隊員のユニフォームは赤を基調としたシンプルなデザインだが、戦闘機スカイフィッシュのデザインがかなり奇抜(作中ではリポーターに「品のねぇ色」と言われている)である。
本作品の主人公でウルトラマンゼアスの人間形態。心優しいが気が弱く、潔癖症の青年。
第1作ではMydoの見習い隊員で、隊長や先輩に呆れられつつもしごかれていたが、ベンゼン星人との戦いの中で潔癖症を克服する。
第2作では冒頭でウルトラマンシャドーに完敗を喫したショックで一時はMydoからも逃げ出してしまうが、必死の特訓の末に本当の自信と強い心を手に入れる。
大河内神平
とんねるず石橋貴明が演じる、第1作でのMydoの隊長。エキセントリックで粗暴な振る舞いをするが、人望はある。第2作で昇格し隊を離れ、カメオ出演にとどまった。
小中井仏吉
とんねるず木梨憲武が演じる、第1作でのMydoの副隊長。ひょうきんな人物で大河内とは対照的に神経質で臆病だが、勝人に対しては強気に出られる。第2作で大河内と共に昇格した。
星見透
Mydoの紅一点。優秀な隊員で、フルートが得意な心優しい女性でもあり、勝人のことを誰よりも心配している。彼の正体にはおぼろげながら気付いている節があり、いつも彼の強さを信じている。
武村岩太
デーブこと大久保博元が演じる巨漢の隊員。射撃の名手にして発明の達人と、アラシ隊員とイデ隊員を合わせたような男。
ミドリ
Mydoの作戦参謀と、そのための高度演算処理を担当する超高性能AI。名前のとおり女性型の明るい人格の持ち主だが、ローポリの不気味な顔をしている。あと、よく目論見が外れる。第2作ではアバター・声・口調が変わった。数副隊長にプログラムをいじくり回されてしまう。
薩摩萬(さつまばん)
昇格した大河内隊長の代わりに着任した、第2作での新隊長。かつてのMAC隊長モロボシ・ダンを想起させる、というよりそのままモロボシ・ダンな男。聡明で厳格だが、まともすぎる上に数がやたら目立つため影が薄い。しかし悩む勝人に優しく接したり、レディベンゼン星人に臆することなく対峙したりと隊長らしさも発揮する。
カプセル怪獣を懐かしんでいる。また作品終盤、ゼアスの正体に完全に気付く。
数学(かずまなぶ)
昇格した小中井副隊長の代わりに着任した、第2作での新副隊長。理数系・オタクのステレオタイプを具現化したような奇妙な男で、隊長しかアクセスできないミドリに何の抵抗もなくハッキングしたりする。
その他の人々
ガードマン(東海林 雄司)
ハヤタ・シンにそっくりな、日本銀行の警備員。第1作は日銀が保管している金塊の警備をしていたが、異常を察知して懐中電灯を高く掲げてから照らすと、金塊が溶け出している様子を目撃し慌てふためく。
第2作では私服で登場し、シャドーに対し「もっと若ければあんな奴に負けないんだがな!」と言いながらスプーンをまるでベーターカプセルのように掲げるも睨みつけられて萎縮してしまい、マインドコントロールビームで洗脳され連れ去られてしまう。
釣り人
ムラマツキャップそっくりな老人。第1作でコッテンポッペの黄金吸収のとばっちりを受け、湖でボート釣りを楽しんでいたところで巨大な渦巻きに遭遇する。
第2作時点で故人であるかのような描き方がされた(中の人が亡くなったため)。
写真家
イデ隊員そっくりな男。第1作では金閣寺の金箔が溶け去る様子を目撃する。
Mydoが扮しているガソリンスタンドのすぐそばに住んでおり、第2作ではスカイシャークの出撃に慌てふためく。その際釣り人の写真に向かい「親父ぃ〜」と呼びかけ、2人が親子であったことが判明する。
アラシレポーター
アラシ隊員、あるいはフルハシ隊員に似た顔の、異常に口の悪い男。第1作ではスカイシャークを「相変わらず品のねぇ色だなぁ」とこき下ろすが、第2作ではスカイシャークで出撃したMydoを応援していた。
主婦(フジ子)
江戸川由利子、もしくはフジ隊員そっくりな女性。ガソリンスタンドの近隣住民なのか、スカイフィッシュやスカイシャークの出撃を頻繁に目撃する。その度に近くにいた主婦に呼びかけたり、主婦連中を集めて使い捨てカメラでその証拠を押さえようなどとするが、いつも失敗する。
正道会館師範
第2作に登場する、どこからどう見ても角田信朗な空手家。
勝人の訪問を突然受けるが、彼の中に眠る優れた素質・実力と、その発揮を阻害している弱い心を見抜き、彼の心を鍛えるための特訓法を伝授する。
師範代
第2作に登場する、どこからどう見てもアンディ・フグな空手家。
勝人の前で必殺のかかと落としを見せた。これが、ゼアスが後に新必殺技を編み出す手助けとなった。
アンディ・フグ氏は2001年に逝去し、最初で最後に出演した特撮作品となった。
星見勇気
第2作に登場。透の弟で、ゼアスに憧れる少年。正道会館で空手を習っている。
影美道場生となってしまった同級生からいじめられており、ゼアスに強い憧れと期待を抱く分、彼が負けたまま姿を消してからは自身の弱さも相まって強い怒りをぶつけるようになる。
彼のその姿勢が、勝人が必死の特訓を乗り越えシャドーへのリベンジへと挑むための強力な燃料となった。
演じたのはダイナにもゲスト出演した崎本大海(クレジットは崎元大海)氏。
ニュースキャスター
第2作にて、ゼアスの敗北やその復活をテレビで報じていたキャスター。郷秀樹によく似ており、ウルトラマンが帰ってきたことを嬉しそうに報じたが、直後に影美に電波ジャックされてしまった。
中年の男女
第2作にて、街頭の大型ビジョンに映し出されたゼアスとシャドーの戦いを見守る戸川一平と友里アンヌそっくりの男女(夫婦かどうかは不明)。光線対決が始まりそうになると女性が「ゼアス逃げてー!」と叫ぶが、そばにいた勇気がゼアスコールを始めるとそれに乗って一緒に応援していた。
慢性ガス過多症宇宙人 ベンゼン星人
第1作のボス。地球上では「悪神亜久馬」という記者を装った中年男性に変身している。車とヘリに変形可能な「ビーグル(JHビーグルとも)」というマシンに乗る。
“破壊”に異常な美学と執着を持っており、座右の銘は「破壊こそ芸術の極致」。ゼアスと地球を木端微塵に破壊することに心血を注ぐ。勝人の正体がゼアスであることを見破り、彼に執拗な嫌がらせを行い精神的に追い詰める。
演じる鹿賀丈史氏のはっちゃけっぷりと怪演は見物。
妖艶宇宙女王レディベンゼン星人
第2作のボスで、ベンゼン星人の妻。地球上では神田うの演じる「影美(悪神影美)」という妖艶な若い女性に変身している。
ゼアスの敗北を人類に見せつけ、極限まで絶望させて支配するという陰湿な侵略を行う。
絶望した人間をマインドコントロールし拉致する技術を持っており、影美道場なる施設で彼らを私兵へと育成している。
吸金爆獣 コッテンポッペ
ベンゼン星人が、持病のガス過多症の特効薬となる金を集めるために地球に連れてきた宇宙怪獣。
「コッテンポッペ」の名称はビードロの音に似た咆哮からMydoの星見隊員が名付けたもので、本来の名前は「ゴルドルボムルス」。
爆獣の名の通り体全体が強力な爆弾で、もし爆発すると地球すらももろとも消し飛ばしてしまうほどの威力。
宇宙戦闘ロボット ウルトラマンシャドー
ウルトラマンゼアスの前に現れた黒いウルトラマン。その正体はレディベンゼン星人が作り上げた対ゼアス用ロボット。
基本的な容姿はゼアスに似ているが、黒を基調とした体に黄色のラインが走っているという毒々しいデザイン。また、目や頭部の形状も刺々しい。
ゼアスが平手にしている部分(飛行時や、光線発射時)では拳を握っており、攻撃的な印象を見る者に与える。
必殺技は、赤い光が特徴的なシャドリウム光線と、拳のメリケンを相手に向かって飛ばすシャドーメリケンパンチ。
特に後者はゼアスの左目にクリーンヒットし、彼のトラウマとなってしまった。
シャドリウム光線は、影美がシャドーに送信しているエネルギーの量を増大することで、スペシュッシュラ光線を上回る威力にまでパワーアップできる。
第2作冒頭で圧倒的な戦闘力でゼアスを打ち倒す。後に希望を失った人々をマインドコントロールビーム(洗脳光線)で拉致した。
ゼアスとの再戦では、特訓を経たゼアスに圧倒される。
『ウルトラマンゼアス』
『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』
平成に公開された作品では初の純国産ウルトラマンだが、海外組と同様にいわゆる『平成ウルトラマン』にはカウントされる事は少なく、M78スペースの派生ではなくなった『ウルトラマンティガ』が第1号として扱われる事が多い。
『新世紀ウルトラマン伝説』でも特殊な立ち位置にあり、ダンスする際にはM78スペース&派生組に、タイトルロゴを紹介するシーンでは『ウルトラマンG』から『ウルトラマンコスモス』までの平成に制作された作品の括りに、冒頭や戦闘シーンでは他媒体組(ビデオ・CM・アニメ・劇場版限定で活躍したウルトラマン)に入れられていた。
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