「貴様のような宇宙の掟を乱す奴と戦うために生まれてきたのだ」
演:黒部進
概要
年齢25歳。漢字表記は早田進(フルネームは映画『甦れ!ウルトラマン』で判明)。
ウルトラマンと一心同体となり、ベーターカプセルを点火させて変身。科学特捜隊のエースパイロットにして実質的な副隊長であり、ムラマツキャップの不在時に指揮をとるが、他の隊員たちからは同格扱いされ、「ハヤタ(隊員)」と呼び捨てにされる。
命令違反とはいえ、子供達を助けようとしてピンチに陥った自分を助けてくれたアラシ隊員がザラガスとの再戦でピンチに陥った際には恩に報いようとする友情に厚い一面も。
アラシ隊員が一度落ちたとされる卒業試験を一位の成績で合格し、週刊少年マガジン掲載の裏設定によれば根性を鍛えるために昼夜ジェットコースターに乗り続けたり、暗所で1か月暮らしたりする試験にも合格したとされる。
主な武器はスーパーガンだが、スペシウム光線と同格の威力を持つ「マルス133」で戦う事も。しかしよくよく考えるとスペシウム光線を出せるウルトラマンの変身者がこのような武器を使うのはなかなかに奇妙な光景である。
後々の主人公たちのほとんどが防衛チームでは新人隊員であるのとは対照的に生粋のエリートである。
竜ヶ森上空をビートルでパトロール中に、ベムラーを追っていた赤い玉と衝突。命を落とすも、その贖罪として地球平和のために尽くしたいと申し出たウルトラマンと一心同体となって復活した。
しかし、そのわりには変身アイテムのベーターカプセルを落としてしまったり(なのでビルから飛び降りてキャッチした瞬間に変身している)、自室に忘れてしまったり、子供が届けてくれたり(第27話ではウルトラマンの大事なものだと見破られている。さすがに正体までバレなかったが)と、変身間際に落とすのはまだしもぞんざいに扱っている節がある。
ウルトラマンと意識がどうなっているかは不明。
ゆえに、変身しようとしてスプーンを掲げる、インド支部から来たパティ隊員の同行者を決めるくじ引きに細工をする、今まで倒してきた怪獣に詫びるためだけにウルトラマンへと変身する、メフィラス星人から地球人なのか宇宙人なのか聞かれて答えとして上記の台詞を口に出すなど様々な一面を見せたが、ハヤタ本人の意思なのかウルトラマンの意思なのかは不明。ただし金城哲夫氏が手掛けた小説版ではハヤタがウルトラマンの力に一喜一憂するシーンがある。
第37話でイデ隊員に「ウルトラマンは我々が力いっぱい戦ったときだけ力を貸してくれるんだ」「ピグモンでさえ、我々人類の平和のために命を投げ出して戦ってくれたんだぞ!!科特隊の一員として、お前は恥ずかしいと思わんのか!!」という台詞を投げかけたが、それらはハヤタからの叱責かそれともウルトラマン本人からの叱責かと解釈するかによって、言葉の意味もまた違ったものに感じられるだろう。
第1話でのウルトラマンの発言通りに一心同体(ハヤタとウルトラマンの意識が混じっている)ということも考えられるし、ウルトラマンがハヤタの人格をエミュレートしていたとも様々に解釈できてしまう(余談だが、地底人に洗脳された際にはウルトラマン側の意識までは洗脳することができず、見事に脱出に成功している)。
なお、「ウルトラマン」の名付け親は他ならぬ彼なのだが(イデ隊員からも「ウルトラにいいでしょう」と好評だった)、これも『彼』(=ウルトラマンと名付けられる前のM78星雲人を指した呼称)が便宜的に自称したのか、ハヤタ本人のネーミングによるのかも謎に包まれている。
ウルトラマンがゼットンとの戦いで戦死すると、ウルトラマンの意思によりゾフィーから新しい命を与えられて復活。しかし、ウルトラマンと一体化していたころの記憶をすべて忘れ去っていた(邂逅の際のやり取りや自分がウルトラマンと名付けたことすらも忘れ去っている)。
「キャップ、あれですよ! あの赤い球ですよ! 僕は竜ヶ森湖で衝突して…衝突して今までどうしてたのかな…」
基本的には無言でベーターカプセルを点火してウルトラマンに変身するが、『タロウ』第33話・第34話にゲスト出演した際には叫んで変身をしていた。
その後の「ハヤタ」
その後のシリーズでも黒部進氏が演じる、ウルトラマンに変身する「ハヤタ」という人物が登場している。
しかしテレビシリーズ最終回でウルトラマンはハヤタと分離しているため、以後の作品に登場するハヤタは厳密には本人ではなくハヤタの姿に変身したウルトラマンである。つまり、本編終了後のウルトラマンの人間態は、セブンと同様に擬態タイプとなっている。
このため、上記では変身と書いたが、実際に行っているのは「ハヤタからの変身解除」である。
ウルトラマンと分離した後のハヤタ本人が登場した作品は『ULTRAMAN』や『ウルトラマン怪獣伝説40年目の真実』など極少数であり、正史には登場していない。
実際ウルトラマンはハヤタの姿に愛着があるようで、何らかの理由がない限り基本的にハヤタの姿になっている。
なお、映画『甦れ!ウルトラマン』では第39話からの分岐でウルトラマンとは分離していない。
第38話「ウルトラの星光る時」に登場。
ウルトラセブン=モロボシ・ダンと握手を交わし、ウルトラの星作戦への協力を要請した。
劇中では郷秀樹とは対面していないが、ダンと共に3人で映ったスチール写真が存在する。
第33話「ウルトラの国大爆発5秒前!」、第34話「ウルトラ6兄弟最後の日!」に登場。東光太郎=タロウに招待され、他のウルトラ兄弟とともに地球に来た。自分たちを追ってきたテンペラー星人からタロウを陰から助けるために、ZATの荒垣副隊長に憑依。血気に逸る北斗星司を冷静になだめるなど、リーダーシップは健在。
劇場版の冒頭=本編の20年前、他の兄弟たちとともに、変身能力と引き換えにUキラーザウルス=ヤプールを封印。ヤプールを監視しながら神戸空港・空港長として生活する。
「地球での名はハヤタだ」と名乗り、「ハヤタ・シン」名義での身分証を作っている描写もある。
ヒビノ・ミライに「ウルトラマンは神ではない」と諭した。変身したら命が危かったが、宇宙人連合に捕われたメビウスを救うために意を決して変身。その際にメビウスに対して放った「どんな困難にも決して諦めず、不可能を可能にする…それがウルトラマンだ!」というセリフは、本作を代表する名言として知られる。
第47話ではメフィラス星人の動きを察知するも、メフィラス星人が子供たちの命を奪い兼ねない発言をしたため、傍観を余儀なくされた。だが、最終的には変身してメフィラス星人と戦った。
パラレルワールドを舞台にした本作では、なんとフジ・アキコと結婚しており、自転車屋を経営する(※1)おじさんとしてハヤタが登場した。
レナ(※2)という娘がおり、彼女は後にティガとして目覚める横浜市役所職員のマドカ・ダイゴと恋仲になっている。本作では他の登場人物と同様にただの地球の民間人だが、怪獣との戦いの中で並行世界の記憶を思い出していく。
(※1)『ウルトラマンレオ』第30話にて、黒部進が自転車屋の店長を演じていたことから。ちなみに同作では、フジ・アキコを演じていた桜井浩子が店長と恋仲になるローランの人間体を演じていた。
(※2)レナ役を演じる吉本多香美は黒部進の実娘であり、実の親子共演ということになる。また、『ウルトラマンティガ』ではヒロインのヤナセ・レナ隊員役を演じていた。
『ウルトラ銀河伝説』
ベリアルによって光の国が壊滅状態となり、なんとかウルトラセブンとともに生還するが、巨大な姿を維持できなくなった為、ハヤタの姿でダンと活動しており、ベリアル配下の宇宙人から調達した銃器を武器に戦った。
変身前の姿でフューチャーアースを来訪し、レジェンド5としてバット星人の怪獣兵器軍団と戦った。
その他の作品
『スーパー特撮大戦2001』
原作同様に竜ヶ森湖上空で赤い球と衝突してウルトラマンと一体化する流れは原作と同じ(ちなみに、その脇では渡五郎がトゲバンバラと戦っており、ベムラーとウルトラマンの戦いを特に気にする事もなく、戦闘が続く)。
『ウルトラマン怪獣伝説 40年目の真実』
『ウルトラセブン』以降のウルトラ世界とはパラレルワールドに当たる作品。
科特隊が地球防衛軍に統合されてからはそちらに所属している。
分離の影響で記憶を失っているが、こちらではハヤタとして戦った記憶は朧げに残っているという解釈である。
やがて自分を呼んでいた声の主である初代ウルトラマンと再会し、記憶を取り戻している。
ウルトラマンの心の一部がハヤタ側に残っていたらしく、「同窓会」と称して科特隊メンバーを集めていたのだ。
ウルトラマンの頼みでベーターカプセルを握りしめ、自分の力を受け継ぐに足る平和と正義を愛する若者を探すべく何処へともなく去っていった。
おそらくこの世界線では『平成ウルトラセブン』のような『ウルトラマン』の直接の続編が始まるのだろうが、この先の未来は映像化されていない。
なお、このやり取りは『ザ☆ウルトラマン』第50話「ウルトラの星へ!!完結編 平和への勝利」におけるヒカリ超一郎とウルトラマンジョーニアスの掛け合いによく似たものとなっている。
『ウルトラマンプレミアステージ2』
アーマードダークネスが宇宙人軍団たちの手に渡ることを防ぎ、物語の鍵を握る宇宙人少年ニコの心を救うべく、高山我夢や春野ムサシをM78スペースに呼び寄せた。
実はフロス星の人々をフロスエナジーを狙う宇宙人たちの魔の手から守った2人の勇者の1人である(もう一人はウルトラセブンである)。
原作同様にベーターカプセルを別のものと取り違えてしまうなどのコミカルなシーンも見られた。
『ULTRAMAN』のハヤタ
『ウルトラセブン』以降のウルトラ世界とはパラレルワールドに当たる本作では、ハヤタは記憶を失ったまま科特隊に在籍した後に由利子という女性と結婚し、早田進次郎という息子を授かる。やがて現役を退き、防衛大臣に就任する。
しかし、ウルトラマンと一体化していたころの名残(=「ウルトラマンの因子」)で強化された肉体は多少なりとも残っており、素手で鉄柱を曲げるほどの身体能力を持っていた。かつての同僚にして親友である井出光弘に見せられたある映像が原因で自分がウルトラマンだったことを思い出し、ウルトラマンスーツを着て悪の宇宙人と戦っていたが、肉体の衰えなどもあり、ベムラーとの闘いを契機に成長した進次郎にその職を譲り渡すこととなる。
その後は、基本的に進次郎たちの戦いを見守る立場にあるが、エースキラーの一件では、改良されたプロトスーツを身に纏い、息子とともに前線で侵略者たちと戦いを繰り広げた。アニメ版では復帰せず、指令室から進次郎たちの戦いを見守る側となっている。
ちなみに、「ウルトラマンと一体化している(していた)人間は身体能力が強化される」というのは『帰ってきたウルトラマン』の設定の流用もしくはオマージュと思われる。
声は黒部進本人ではないが、外見については老年期の黒部をモデルにしている。
アニメ版によると、ウルトラマンとして戦っていた当時、ウルトラマンと怪獣の戦いに巻き込まれ街を壊されたことを恨む被害者の存在を知るたびに、仲間たちの反対を押し切って幾度も彼らへの面会に向かっていたとアラシ元隊員から語られている。
『ウルトラマンF』
第39話の後日談であるため、記憶を失っている。
自身がウルトラマンであった事を証明する事も兼ねて人体実験に参加している。
『ウルトラ怪獣かっとび!ランド』
何故か好戦的な性格で「どこかに怪獣いないかな?いたらぶっとばしてやるのに」と口にして「わざわざ探さなくてもいいのに」とイデに呆れられたり、かっとびランドの怪獣たちに囲まれ萎縮するも、ウルトラマンの姿を認めるとコチラのもんだとばかりに態度をデカくしたりしていた。(なお、この時のウルトラマンは怪獣ゴッコでカネゴンになりきっていたため頼りにならなかった)
海外作品では
ウルトラマンG(Nemesis Comics版)
ハヤタの名前が言及されている。
ザ・ライズ・オブ・ウルトラマン
USP(統合科学特捜隊)所属のフジ・キキ隊員の親友である青年として登場。
余談
企画段階での名前がサコミズだったことはよく知られているが、改名を決断したのは飯島敏宏監督である。飯島監督は「サコミズという名前に違和感があったから変えさせてもらいました」と語っている。
当初は『ウルトラQ』にゲスト出演した久保明や黒沢年男も候補に挙がっていた。黒沢を推薦したのは円谷プロで演技事務・営業を担当していた津田彰だが、最終的に東宝が推薦した黒部に決まった。黒沢は後年「映画を優先したかった藤本真澄プロデューサーが断ったのではないか」と語っている。
久保も後年「ブームになってからはやっておけばよかったとも思ったが、当時は怪獣もの専門と思われたくなかった」といった主旨のコメントをしている。
意外に思われるかもしれないが、実はハヤタは劇中でウルトラマンの正体だとバレていない。『セブン』以降のウルトラシリーズの主人公は、所属する防衛チームや親しかった者に正体を明かすか、何かのきっかけでウルトラマンに変身して活動していたことがバレてしまう展開がお約束となっているが、正体を明かさなかった主人公はシリーズを通してもハヤタとヒルマ・ゲントのみである。
もっとも、バレる一歩手前の事態になったことはあり、イデ隊員が何度かハヤタがウルトラマンなのではと疑ったことがある(確証までには至らなかった)。一方、『ULTRAMAN』ではTV本編の最終回後なのか本編中の終盤近い時期なのか不明だが、ハヤタとウルトラマンの関係について知っていたことを、記憶を取り戻したハヤタに語っている。
第33話では、円盤内で対峙したメフィラス星人の目の前で変身しようとベーターカプセルを掲げたところをメフィラス星人によって動きを止められてしまい、あろうことかその状態のまま円盤に乗り込んできたムラマツキャップらに発見されてしまった。だが、すぐさま円盤内に捕らえられていたフジ隊員が助けを求めてきたことや、円盤が爆発寸前ですぐ脱出しなければいけない切羽詰まった状況だったこともあり、じっくり状態を確認する余裕がなく正体に気付かれることはなかった(余談だが、このときハヤタは助ける時間がないとして見捨てられたが、爆発の揺れで偶然倒れた衝撃でベーターカプセルが点火し、ウルトラマンに変身して脱出できている)。
ウルトラマンと分離する結末を迎えたのは、意外にも昭和だとハヤタとヒカリ超一郎のみであった(『タロウ』の東光太郎は詳細不明で、役者の意向で再登場の可能性が低く、明かされる可能性は限りなく低い)。
『ULTRAMAN』のアニメ版で声を担当する田中秀幸は、実写シリーズではウルトラマン・ザ・ネクストとゾフィーの声を担当していることで有名。
『ウルトラマングラフィティ』ではウルトラマンを担当していたため、ついに変身者であるハヤタも(両者とも本編とは別人だが)担当することになった。本作のハヤタは、初代ウルトラマンとは別にゾフィーとあるもので間接的に関わるので、その繋がりともとれるかもしれない。
また、モーションアクターを担当した小川輝晃は、後に『ウルトラギャラクシーファイト運命の衝突』でアブソリュートディアボロを演じることになる。
分離した後もM78星雲人の因子が体に残り、実子にもその因子が受け継がれるという事例は、後に別の作品においても確認されている。ただ、これがM78星雲人と一体化した人間に普遍的に起こっているものなのか、それとも彼らが特異な体質であったがために起きたものなのかは不明。
『ウルトラマンマックス』には黒部氏がトミオカ・ケンゾウ長官として登場している。ハヤタとは明確に別人であるものの、中の人ネタでハヤタを思わせる言動・行動をとる場面がある。
『有言実行三姉妹シュシュトリアン』第40話では黒部氏演じる怪獣おじさんが登場。他社作品なので当然正史ではないがその正体はウルトラマンという異例のコラボが実現した。
パロディ
- 『ひめチェン!おとぎちっくアイドル リルぷりっ』第5話「まいごで大さわぎ☆ぷりっ」に登場する少年、はやたの元ネタ。
- 『ニチアサ以外はやってます!』の登場キャラクター早田唯はハヤタ・シンの名前を捩ったものになっている。
- 『ポケモンだいすきクラブ』の企画「かいじゅうマニア倶楽部」のナビゲーター「かいじゅうマニアのハヤタ」の名前の由来になっており、相方の名前がリクとなっている。
- 『ギャラクシー街道』には「キャプテン・ソックス」というウルトラマンに似たヒーローが登場しており、それに変身する警備隊員の名前が「ハトヤ」というハヤタ・シンを捩ったものとなっている。
関連項目
黒松教授 - 演者繋がり。こっちは悪人である。
真木舜一 - 『ULTRAMAN』におけるハヤタに相当する人物。
神永新二 - 『シン・ウルトラマン』におけるハヤタに相当する人物。
アスカ・シン -『ウルトラマンダイナ』の主人公。第36話での立ち位置はハヤタのオマージュ。
歴代ウルトラマンの主人公系譜