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侵略者を撃て

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しんりゃくしゃをうて

円谷プロの特撮テレビドラマ『ウルトラマン』の第2話のサブタイトル。制作第1話。脚本第1話。 ウルトラ戦士の因縁のライバル・バルタン星人。すべての戦いの始まり。

概要

1966年7月24日放送。

監督:飯島敏宏

脚本:千束北男(飯島敏宏のペンネーム)

特技監督:的場徹

制作No.1

脚本No.1

ウルトラ怪獣(宇宙人)でトップクラスの知名度を誇る宇宙忍者バルタン星人が初登場した回。

STORY

ある日の科学特捜隊本部。イデ隊員は右目に大きなアザを作ったまま勤務していた。

一体彼の身に何が起こったのか。すべては38時間前の真夜中にさかのぼる。

平和な夜だった気温も快適湿度も快適さすが夜ふかしな東京もすやすやと眠っている夜だった

だがここに不幸な男が一人いた。」〈ナレーション〉

夜の科学特捜隊本部。

大きなイビキをかいて眠るアラシ隊員のせいで、眠れずにひたすら羊の数を数えるイデ隊員。

そんな時、緊急警報が鳴り響いたため、アラシとイデは作戦室へ急行。

ブリーフィングを行うムラマツ隊長。防衛基地から東京上空に強烈な電波を発する物体が飛来し、突然途絶えたとの連絡があったという。

防衛基地で調査しているハヤタの報告とパリ本部からの連携で、科学センターの御殿山が怪電波消滅地点と判明。

早速、アラシが調査へ出動しようとするが、スリッパを履きっぱなしだったため、そのことをムラマツに指摘される。

早朝。

科学センターに到着したアラシは、科特隊専用車にこっそり乗っていたホシノ君に本部への通信係を任せてセンターに入ると、センターの職員がまるで時間ごと静止したかのように硬直しているのを発見する。

アラシはホシノ君に本部へ連絡するよう指示し、警戒しつつセンターの奥へと進んでいく。

すると階段の上から奇怪な姿をした宇宙人が出現。応戦を試みるが両手のハサミから放たれた光線を受けてアラシも固まってしまった。

センター内部に、分身能力で暗躍する宇宙人の不気味な笑い声が響く。

フォッフォッフォフォッフォッフォフォッ・・・」

到着したハヤタは防衛隊員とともにセンターの中へ入るが、再び奇怪な宇宙人が襲い掛かる。

ハヤタはスーパーガンで応戦するが、宇宙人は姿を消してしまう。

その後、科特隊と防衛軍による謎の宇宙人対策の防衛会議が召集された。

防衛軍の幹部は最新の核ミサイル「はげたか」を使用し撃破することを提案するが、ムラマツは宇宙人との対話を提案。

防衛軍側からは反対の声が上がったが、他に妙案は浮かばずムラマツの案が採用されることとなった。

その夜。宇宙人の交渉役としてイデが選ばれ、ハヤタと共に科学センターへ向かう。

そして万が一に備えて、最新兵器「はげたか」の発射準備が進められた。

科学センターに到着したイデとハヤタ。

未知の宇宙人の襲来に怯えるイデはハヤタに何度も確認を取りながら内部へ潜入する。

イデ「あの、話がこじれたら頼みますよ」

ハヤタ「こじれるほど通じたら大したものだ」

ハヤタと分かれたイデは、スパイダーを手に恐る恐る奥へ進むと、奇怪な宇宙人が現れた。

緊張するイデは覚えたての宇宙語でキエテコシキレキレテ(僕・君・友達)と語り掛け対話を試みるが、宇宙人は高速で分身しながらイデを取り囲む。

パニックになり訳の分からない宇宙語を連発するイデ。宇宙人は怯えるイデを科学センターの屋上へ誘導させた。

屋上に連れてこられたイデの前にアラシが現れた。しかし何か様子がおかしい。

宇宙人は「イデの宇宙語が分かりにくい」としてアラシの頭脳を借りて地球の言語で対話を試みるという。

そこへハヤタが駆けつけ、イデの代わりに宇宙人と交渉を試みることとなった。

奇怪な宇宙人の正体は、バルタン星人だった。

彼らの故郷・バルタン星は、ある発狂した科学者の核実験が原因で爆発してしまった。

たまたま宇宙旅行中だった彼らは難を逃れたが、帰る場所を失ったことから生存できる天体を求め彷徨っていた。

しかしその道中で宇宙船が故障。修理のために立ち寄ったのがM240惑星、すなわち地球だった。

透明になった宇宙船の中には、代表以外のおよそ20億3千万人のバルタンがバクテリアの大きさになって眠っているという。

地球の風俗・習慣になじみ、法律を守るならば移住も不可能ではないと語るハヤタだが、受け入れるにはあまりにも人数が多すぎる。

そこでハヤタは火星へ移住を勧めるが、

「火星には我々の嫌いな……」

アラシの口を借りたバルタン星人はそこで突然口をつぐむ。

直後に「地球をもらう」とバルタン星人は一方的に話を打ち切り、交渉は決裂。アラシを解放したバルタン星人は赤い閃光と共に巨大化し、地球侵略を開始した。

本部ではハヤタの通信バッジを通して、ムラマツ隊長らがそのやり取りを聴いていた。

バルタン星人が苦手とする火星にあるもの。それは「スペシウム」の事ではないかとムラマツは推測する。地球にはもちろん存在しない。

「だが、あるいはならば……」

「彼? 誰の事ですか?」

アラシとイデを逃がしたハヤタだったが、バルタン星人に吹き飛ばされ、ベーターカプセルを科学センターの窓の庇に落としてしまう。

交渉決裂と判断した防衛軍は巨大化したバルタン星人めがけて「はげたか」を撃ち込む。

一度は倒れたと思われたが、すぐに脱皮して再生・復活してしまう。

夜空に飛び立ったバルタン星人は腕のハサミから白色破壊光弾を発射して、ビル街と工業地帯を次々破壊し始めた。

ハヤタは意を決して科学センター屋上から飛び降りる。そして窓の庇にあったベーターカプセルを拾い上げ、ウルトラマンに変身する。

すぐさまウルトラマンは空を飛び、バルタン星人と激しい空中戦を繰り広げる。

地上に降りたウルトラマンは飛行中のバルタン星人に向け、腕を十字に組んで光線を発射。

火星の物質「スペシウム」の光線を浴びたバルタン星人は墜落炎上。

科特隊本部のモニターを見ていたムラマツの予想通り、彼=ウルトラマンはスペシウムを有していた。

一連の様子をモニターしていたフジ隊員はバルタン星人を倒したウルトラマンの必殺技を「スペシウム光線」と称する。

ウルトラマンは目より発した透視光線でバルタン星人の宇宙船を発見し、宇宙空間へ運び去る。

白み始めた空の彼方で起きる爆発。

宇宙忍者バルタン星人の地球侵略はここに潰えたのであった。

それではイデの右目のアザはなんだったのだろうか?

最後にイデは画面の前の視聴者にアザができた理由を話す。

事件が解決した夜。

今度は逆に、大きなイビキをかいて眠るイデ隊員のせいで、眠れずにひたすら羊の数を数えるアラシ隊員。

イデはベットの上から転落してしまい顔面を強打、右目に大きなアザを作ってしまった。

!」と爆笑するイデとアラシで幕を閉じる。

だが、そう簡単にあきらめるバルタン星人ではなかった……。

余談

制作第1話

前述のように『ウルトラマン』で脚本の執筆、そして撮影が最初に行われたのがこの「侵略者を撃て」である。

そのためかメインメカのはずのジェットビートルが一切登場しなかったりホシノ少年が専用車に潜んでいた理由について「いいってこと」とはぐらかすなど設定が固まっていない部分が見受けられる。

飯島監督は『ウルトラQ』で最後に撮影された「地底超特急西へ」の検定を終えた直後の1966年2月10日に脚本の実質的な締め切りがあったと語っている。

脚本執筆にあたってTBSの栫井巍プロデューサーから「キャラクターだけはハッキリ作ってくれ」と注文を受けたという。

台本のタイトルは単に「バルタン星人」。完成作品との大きな差異はないが、ヒーローの名前が「レッドマン」、変身アイテムの名前が「ガンマー発光器」となっている。

そのほか巨大化したバルタン星人の右肩にハヤタが掌剣を投げつけた際にできた傷跡が確認できるという描写があった。

ハヤタがガンマー発光器を窓の庇に落としてしまう描写は同じだが、台本では飛び降りるのではなく手すりと足をハンカチで結び逆さ吊りになって拾うという描写になっていた。

追加撮影

戦闘シーンの撮影中にバルタン星人の左のハサミが折れてしまうというアクシデントが発生。

急遽ウルトラマンとバルタン星人が空中で格闘するシーンを追加し、その中で左のハサミをへし折っている。

1979年7月21日に劇場公開された「ウルトラマン怪獣大決戦」では、本編の空中戦の途中に、東京・聖徳記念絵画館前での地上戦(下記の動画の44秒〜2分38秒)が新規撮影された。

この追加撮影用に新規造形されたバルタン星人は『ウルトラマン80』のバルタン星人に改造された。

宇宙語

本話でイデ隊員が使用した宇宙語は、後年の『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラマンZ』でも使用されている。

金城哲夫のノベライズでは「でたらめな宇宙語」とされておりイデ隊員がでっち上げたものである可能性も示唆されていたが、バルタン星人には「君の宇宙語は分かりにくい」つまり宇宙語であること自体は伝わっていたことから、文法がデタラメでも宇宙語であることは確か、という設定になった様子。

防衛軍

ムラマツキャップと防衛軍の会議シーンは正体不明の宇宙人について話しているはずなのだが、黒板をよく見ると「バルタン星人」と書かれている。

また、強硬策を取ろうとするガヤの中にはハヤタを演じる黒部進氏の声も混ざっている。

防衛軍の長官役はウルトラシリーズで防衛軍長官を数多く演じている藤田進氏だが、当初は準レギュラー出演する構想もあった。その構想には参謀の構想もあり、参謀役には本編では岩本博士を演じる平田昭彦氏のほか、戦争映画でもおなじみの田崎潤氏や中丸忠雄氏が候補に挙がっていた。

変身妨害

劇中で巨大化したバルタン星人がベーターカプセルを手にしたハヤタを攻撃する場面は一種の変身妨害とする声もある。

変身妨害は後々の特撮ヒーローのお約束となっていく展開であるが、放送第2話、脚本と制作で言えば第1話にして既にそれが描かれているのは、以後50年以上の長きに渡って愛されるシリーズとなるこの作品にスタッフが真摯に向き合っていた証左なのかもしれない。

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