「これこそは紛れもないパターン・ウルトラ!!」
地球を愛し戦う"彼女"の伝説
地球を守るため彼女はウルトラマンになる
概要
早川書房の雑誌『SFマガジン』にて2015年12月号から2016年6月号まで連載されていた小説。作者は小林泰三。
初代ウルトラマンが地球を去った後の世界を舞台に、その後も出現する怪獣やウルトラマンの技術を狙う某国の陰謀、別宇宙からやってくる侵略者達と戦う科学特捜隊の活躍を描く。
世界観は『ウルトラマン』最終回から『ウルトラセブン』開始までの間の物語だが、分岐したいくつものパラレルワールドの一つである可能性が高い。
スペースビーストやウルティノイドの登場、メテオール技術、異なる世界から地球を狙う敵達など平成ウルトラマンの要素や、他のシリーズからの小ネタがこれでもかと仕込まれており、平成シリーズを知るファンならばニヤリとすること請け合いである。
2016年7月7日に単行本が発売されたが、大幅な加筆が行われ、連載時よりも1話分ほど長い。
2017年星雲賞日本長編部門受賞。
2019年には文庫版も発売された。
主要人物
元主人公。かつてウルトラマンと融合していた科特隊隊員。
融合していた一年間の記憶を失っているため「自分は本当にヒーロー=ウルトラマンだったのか」という疑問を抱き続けており、ウルトラマンの痕跡を探る人体実験に自ら志願して参加している。
主人公。地の文ではフジ隊員と並び下の名前で呼ばれる。
ウルトラマンが地球を去った後、メテオールを利用しウルトラアーマーを開発した。地球防衛のために様々な兵器を開発するが、非人道的な研究を行うインペイシャントとは対立する。
もう一人の主人公。早田の人体実験に一人だけ反対していた。
実験中に起こったアクシデントによって再び巨大フジ隊員になってしまい、ウルトラアーマーを装着し「巨人兵士F」として外敵に立ち向かうことになるが、闇の巨人との戦いの中で光の戦士へと覚醒する。
実は双子の姉がいる事が明かされ、その存在が後の彼女の運命を大きく左右することになる。
科特隊隊員。ビートルの操縦と攻撃を一手に担うスナイパー。
その腕は健在で、ザ・ワンから分離した烏をマルス133で一匹残らず撃ち落とすなど朝飯前。
ご存じムラマツキャップ。隊員達と科特隊上層部、国連の間で板挟みになる中間管理職。
有事の際には自ら前線に赴いて部下たちを指揮し、隊員達の能力を最大限に発揮させる。
彼が三面怪人ダダと戦った際の経験から、科特隊隊員は格闘技を習得するようになった。
インペイシャント
天才を自称する某国の科学者。自らの研究のためならどんな犠牲も厭わない冷酷な性格。
国連から与えられた権限を利用(読み手によっては濫用とも悪用ともとれる)し、非人道的な兵器開発計画「巨人兵士計画」を推し進める。
イデを自らと同じ「天才」と評し、巨人兵士計画に引き込もうとする。
躁躁(そうそう)
アジア某国の天才少年。名前のとおり常に躁状態だが、妹と自分以外すべてを見下す悪辣な性格。
国から予算を貰って怪獣のクローン培養と兵器化を行っている。
実は異星人と一体化する適性と、成人前に全身の細胞が壊死する疾患を抱えている。
鬱鬱(うつうつ)
躁躁の妹である天才少女。名前の通り常に泣きながら悲観的な言葉を吐いている。
兄と同様に他者を見下しており、同様の適性と疾患も併せ持つ。
元帥
躁躁と鬱鬱を拾い、怪獣兵器を開発させようとしている某国の要人。
躁躁の策略によりジャミラにされてしまう。
後のGUYS総監。ヤプール襲来とイフ出現時に実戦に赴いた。
冥王星近辺でゾフィーと出逢う前の彼。
かつてこの地球を守っていた光の巨人。現在は光の国に帰還している。
その力を手に入れようと世界中が躍起になっており、科特隊はその秘密を探るためハヤタを研究している。
また、顔がAタイプ~Cタイプの三つに変わった事に関して井出隊員はAタイプは格闘戦、Bタイプは特殊能力、Cタイプは強力光線と状況に応じて変化させているという論文を発表したが、インペイシャントからは「人間だって日によって顔つきが変わるだろう」と切り捨てられている。
登場怪獣
躁躁が作ったクローンの小さな個体が登場。超振動波を操る。
光弘と躁躁の分析によると、超振動波は破壊光線ではなく(初出の映像作品での演出上光線に見えなくもないが)、鼻角からの振動と音波を利用した一種の掘削道具であり、この能力の存在が、地中を掘り進むゴモラの角と爪が地面を掘るのに適していないことの所以であるという見解もある。これを戦力に転化すればウルトラマンにも勝てたかもしれないという。
オリジナルの死体の骨格を基に人工細胞と金属材料で作った人工皮膚を被せたサイボーグ。見かけはそっくりだが、実力は本物の足元にも及ばない。ゴメスに至ってはまだ発育途上の10m級である。
躁躁が作ったクローン個体が登場。彼に頭の触角を奪われる。
躁躁が作ったクローン個体が登場。異世界へのゲートとなる超次元微小経路(ワームホール)を開く。
ワームホールを通ってやってきた異形の怪物。
ベルゼブア・コローネの状態で東京上空に出現し、ウルトラアーマーをまとった巨人兵士と交戦する。
微小な細胞片の状態でM78スペースに侵入し、人間、トカゲ、ネズミ、鳥などの土着の生物の遺伝子情報を取りこんで有翼形態にまで成長したことが示唆されている(イドロビア、レプティリア、ベルゼブアの段階を踏んでいるかは不明)。
ジャミラⅡ
とある事情で人為的に変身させられた二代目。
ワームホールを通って別の宇宙に送られた躁躁の願いに応じ、大阪に出現した闇の巨人。
彼と鬱鬱の意志を酌んで二人に力の一部を分け与え、それぞれをダークメフィスト、ダークファウストへと変貌させた。
弱者との戦いに積極的ではなかったが、人類を奴隷にする価値もない非効率かつ非力な種族と判断して絶滅を決定し、メフィストとファウストを暴れさせる。
ウルトラマンとそれに近い者を激しく憎悪しており、ウルトラアーマーをまとった巨大フジ隊員に「にせウルトラマン」と呼ばれ、彼女が「ノアの神」の名を口にした際には激昂していた。
巨大フジ隊員を相手に手間取る双子に業を煮やし、ライトニングザギで一気に片付けようとするが、これが新たな光を目覚めさせる原因となってしまう。
ダークザギに付き従う闇の巨人。躁躁と鬱鬱がザギと取引した結果変身したウルティノイド。
単行本化にあたって加筆された第四章に登場。
空を割って出現し、都市をあらかた破壊した上で「ウルトラマンを差し出せ。さもないと人類を壊滅させる」と一方的に迫る。
イデによると、この空の亀裂はワームホールとは別の原理でヤプール次元と地球が接続されたことに起因するもので、接続の正しい構造を地球人の脳が正しく認識できず、空の亀裂として認識してしまうという。
自らがウルトラマンであったことを引き合いに自らウルトラアーマーに乗りこんで交渉に出向いたハヤタを人質にとり、遅れて現れたウルトラマンFと対峙する。
超獣に関しては、人工物と生体組織の明確な境目がなく、最初から超兵器として生み出されたとしか言いようのない、従来の怪獣兵器とは一線を画す存在であるとのことで、それこそが超獣と呼ばれる所以であることがうかがえる。
本編の黒幕。とある人物に化けている。
ゼットン星人がブルトンの作り出したワームホールを使って異世界から呼び寄せた怪獣。
受けた攻撃をコピーしてパワーアップする性質は原典と同様。
出現当初は無害な白い塊のような第一形態で、科特隊の攻撃を次々と吸収し、第二、第三形態へと変貌して身につけた火炎放射能力とミサイル発射能力をもって市街地を蹂躙する。最後の望みのマルス133の一斉掃射にも耐え抜いて第四形態まで成長し、スペシウム光線に似た破壊光線を乱射して被害を拡大する。
しかし所詮はハイパーゼットンのエサとして呼び出されたにすぎなかった。
ゼットン星人の生体兵器。コクーンの状態で送り込まれ、イフを取り込みギガントとなり科特隊の無重力弾を受けイマーゴへと変身した。
ガタノゾーア/グリーザ/ゴーデス/スフィア/カオスヘッダー/グラキエス/ダークルギエル/グリーザ
ウルトラマンが存在を語った、ワームホールを通ってM78スペースに押し寄せようとする侵略者たち。
用語
ウルトラアーマー
井出隊員にもほとんど解析ができない異星人の技術「メテオール」とルパーツ星人からの技術提供によって作り上げた対怪獣用パワードスーツ。
頭部にアイスラッガーを思わせる角、両腕に銃器、太腿部分にジェット噴射が取り付けられ、最大の武器としてマルス133を装備している。
メフィラスボット
メフィラス星人によってフジ隊員の体に埋め込まれていたナノマシン。
アキコの遺伝子に一つずつ纏わりつくように稼働しており、その数は約8京個あると言われている。
超次元微小経路
四次元怪獣ブルトンが時空を歪ませることで発生させた別の宇宙への入り口。要するにワームホールである。
ここを通って別の宇宙から様々な侵略者達が襲来する事となる。
巨人兵士
某国の技術によって人工的な巨人化に成功した生体兵器。詳細は巨人(ウルトラQ)参照。
ウルトラアーマーF
「巨人兵士F」となった富士隊員用に開発された新型アーマー。
フォルムが女性的になったほか、バルンガ構造体を利用したエネルギー吸収能力を持つ。
ウルトラマンF
巨人兵士Fと闇の巨人たちとの戦いの中で誕生した、まったく新しいウルトラマン。
変身者は富士明子。詳細はウルトラマンF(キャラクター)を参照
ウルトラ警備隊
科特隊に代わり来年に設立予定の防衛組織。母方の実家に養子に行った嵐の弟が配属されている。
関連タグ
ウルトラ作戦:ゲーム作品。『ウルトラQ』と『ウルトラマン』の間の物語が展開される。