1966年11月20放送。
監督:野長瀬三摩地
脚本:山田正弘、南川竜(野長瀬氏のペンネーム)
特技監督:高野宏一
STORY
東京のビル工事現場から不思議な金属でできたカプセルが発掘された。科学特捜隊も宇宙考古学の権威・福山博士と共に現場に調査へ赴いた。
福山博士の鑑定から3億5000年前のものと推定されたカプセルを開封すると、青い液体が入ったカプセルと金属板が出てきた。金属板は福山博士の研究所で、カプセルは石岡博士の鉱物試験場で調査されることになった。
イデ隊員はまだ何かあるんじゃないかと軽口をたたいたが、その背後で土砂を積んだダンプカーが走り出していった。
郊外の処理場に運び出された土砂。その中から青い液体が入ったカプセルと似た赤い液体のカプセルが転がり落ちる。
科特隊本部でカプセルの中身について隊員たちが雑談していると、福山博士より金属板に何かしらの文章が刻まれているらしいとの連絡が入り、ハヤタ・イデ隊員が警護のために赴くことになった。
イデ隊員が金属板を落とした弾みで光に透かせば金属板の文字が浮かび上がるということが判明。古代ミュー帝国の文字に似ているとして福山博士が解読を試みる。
一方東京北部に雷雲が発生、その雷が赤い液体が入ったカプセルに命中し、
赤い体の怪獣が出現したのだった。
怪獣出現の一報を受けた科特隊は、アラシ隊員が小型ビートルで出撃し、続けてムラマツキャップとイデ隊員がジェットビートルで出撃した。
一方鉱物試験場で刃物やバーナーでカプセルの開封を試みるが、強靭なカプセルには効果がない。とうとう雷撃を加えての開封が行われようとしていた。
赤い怪獣に猛攻を加える科学特捜隊。その頃ついに福山博士が金属板の解読に成功したが、そこには恐ろしいことが記されていた。
「我々はやっと悪魔の怪獣、赤い『バニラ』と青い『アボラス』を捕らえ、液体に変え、地中深く埋める。
決して開けてはならない。再びこの怪獣に生を与えたならば、人類は滅亡するであろう」
そう、あの金属板は後世の人類への警告だったのだ。
しかし時すでに遅し、鉱物試験場に連絡を試みるが通じない。
電撃のショックを浴びた青いカプセルからは、
青い体の怪獣が出現した。
鉱物試験場を破壊したアボラスは、溶解泡を吹きだしながら前進する。
一方バニラを攻撃していたビートル隊もロケット弾が弾切れ。防衛隊のF-4戦闘機に任せて撤退する。
対策を練る科特隊本部に、2体の怪獣がオリンピック競技場に向かっているとの連絡が入った。ムラマツ・ハヤタ・アラシ・イデ、さらに責任を感じた福山博士が同行を申し出て出撃する。
オリンピック競技場では、怪獣同士の一大決戦が行われていた。バニラの吐き出す火炎をアボラスの溶解泡が相殺するといったほぼ互角の戦いであったが、バニラが転倒したすきをついて、アラシが原子弾をバニラの眼に発射。視界を奪われたバニラはアボラスの溶解泡でドロドロに溶けてしまった。
あとはアボラスだけだが、ここで科学特捜隊の光線銃が全てエネルギー切れ。
ハヤタはウルトラマンに変身。アボラスの溶解泡はウルトラマンもカラータイマーが鳴るほどのダメージを受け苦戦を強いられる。
スペシウム光線を浴びせるウルトラマン。しかしアボラスはなおも立ち上がる。
ウルトラマンは向かってくるアボラスに再びスペシウム光線を叩きこむ。そして3度目のスペシウム光線でとうとうアボラスは力尽きた。
「わぁーいウルトラマンが勝ったぞぉー!」
オリンピック競技場にイデ隊員の叫びがこだました。
余談
二大怪獣因縁の激突
後年『ザ☆ウルトラマン』や『ウルトラマンパワード』、さらに『ウルトラマンX」』や『ウルトラマントリガー』に至るまでバニラとアボラスは2体そろって登場している。天敵同士で戦うのが基本だが、ここまでそろって登場するとお前ら本当は仲いいだろと言いたくなる。
池谷氏初登板
後に地底戦車ベルシダーや、『ウルトラセブン』の後期怪獣デザインを担当した池谷仙克氏が、美術スタッフとして初めて参加した回である。
このとき試しにバニラの着ぐるみに入ったことで、スーツアクターの苦労を知ったと語っている。
ゲスト出演
今回登場した福山博士は、第22話にも再登場している。ただし第22話の脚本上では岩本博士であり、演者が同じ福田善之氏になったことで福山博士に変更された可能性がある。
「三万五千(35,000)年」でも「三億五千万(350,000,000)年」でもなく「三億五千(300,005,000)年」という数値をどうやって特定したのかは謎。
ただし脚本上では「三億五千万年前」と記されており、完成台本で「万」が欠落してしまっただけという可能性も考えられる。
福山研究所の助手・木村を演じたのは丸山謙一郎氏。『ウルトラQ』の戸川一平役の候補だったと言われており、シリーズでもたびたびゲスト出演している。第22話にも別役で出演している。
前世紀からの使者
脚本の準備稿では「前世紀からの使者」というタイトルで大幅に異なるストーリー展開となっていた。
- カプセルが発掘される場所は鉱泉試験場。
- バニラは登場せず、代わりに古代人がカプセルから現れる。
- 福山研究所が古代人に襲撃され、博士と助手の記憶が奪われてしまう。
- イデ隊員と古代人が偶然ホテルのグリルで出会い、お互いの持っていたカプセルを取り違えてしまう。
- イデは取り違えたカプセルにアボラスが入っているのに気づくが、古代人に襲われ記憶を奪われてしまう。
- ムラマツキャップが博士と助手、イデを記憶探索装置にかけたところ古代人に奪われた記憶がよみがえり、古代人がアボラスを甦らせようとしていることを知る。
- 古代人が偶然取り違えたイデ隊員の発明品のおかげで古代人が現代文明を滅ぼそうとしていることが判明。代々木競技場で科学特捜隊と古代人が激突する。
- アラシ隊員が古代人をスパイダーショットで射殺するが、アボラスの泡を喰らって負傷。ウルトラマンがアボラスと戦う。
このほか「古代人がひったくりに襲われる」など本筋には関係ない無駄なシーンが多く、野長瀬監督による改稿の結果古代人は登場すらしなくなったという。
「悪魔はふたたび」に改題された決定稿では完成作品とほぼ同じ流れだが、ウルトラマンがアボラスを倒す場面でスパッと終わってしまいイデ隊員が大喜びでオリンピック競技場を走る場面は存在しない。
特撮演出
本話の特殊技術は高野宏一名義になっているが実際にはスケジュールの問題で円谷英二が直々に演出したことでも知られている。
この時期はジェットビートルの撮影用模型が全て破損するなど特撮班は大ピンチで、本話ではジェットビートルとバニラが交戦するシーンはよく見るとサイズの異なる小型ビートルがバニラの前を通過している。