概要
もともとはアメリカ海軍向けが「F4H」、アメリカ空軍向けが「F-110」という名称だった。
F4HはFが戦闘機、Hがマグドネル社、4が(マクドネル社の)4番目の機体を意味する。つまり「マクドネル社が開発した4番目の戦闘機」という意味である。
1962年のアメリカ軍軍用機の命名規則統一により「F-4」となった。
公式愛称はマクドネルが「PhantomⅡ」。マクドネルが過去に開発した「FH Phantom」に因んだものである。
非公式愛称としては開発関係者による「Ugly Ducking(みにくいアヒルの子)」というものが有名だが、他に運用現場での「Double Ugly(超ブサイク)」というド直球なものもある。
そもそもはアメリカ海軍が空母で運用する艦隊防空戦闘機として作られた機体だったが、コストの鬼として知られたロバート・マクナマラ国防長官(当時)がこれに目をつけ、海空両軍で同じ戦闘機を使わせる事で出費をケチるという思惑のもと、空軍も採用させられるハメに。
イヤイヤながらに押し付けられた形の空軍ではあったが、何だかんだと気に入ってしまい大量に発注することとなった。
ちなみに計画当初の型番(後述のF4H-1)と紛らわしいので、後の派生型ではH型は欠番になっている。
……つまりHが出てくるレベルで派生型が作られまくったということである。
開発経緯
ジェット技術が急速に発達しており、更には冷戦により米ソが激しく睨み合っていた1950年代から60年代はジェット戦闘機の開発ラッシュとなっており、各社は次々と新たな機体を開発していた。
1952年当時、ミサイル搭載の迎撃専門機F3Hデーモンの開発をしていたマクドネル・エアクラフト社(後のマクドネル・ダグラス)は、早くもF3Hを発展させた新たな開発計画をスタートさせていた。
当初はF3Hを双発の大型機として戦闘攻撃機にする予定であり、モックアップまで作成したが、海軍に持ち込んだところ、制空戦闘機としてはF8U、攻撃機としてはA4Dの採用が決まっていたので受け入れられなかった。
逆に海軍側から提案されたのが迎撃機である。
既にその用途ではF3Hがあったわけだが、F3Hはミサイル搭載数4発の亜音速機であり、ソ連の核撃機に対する海軍の恐怖を取り除くには不足しており、より高速で、より長距離での迎撃が可能な機体が求められることになる。
設計においてはレーダー性能とミサイル搭載能力が重視された一方、運動性能は空母艦載機としては最低限度である。
F8Uの迎撃機型と比較試験された結果でも、運動性能は劣るとされているが、複雑なレーダーとAIM-7を使用した戦闘には単座のF8Uは都合が悪いと判断され、制式採用となる。
機体
航空機は大気に身をゆだねて飛ぶ都合、機体外形が直接的に性能を左右する。
そして見た目が歪な本機の飛行性能は、見た目通り歪なものとなってしまった。
垂直尾翼の効果が足りないため方向安定性が不足しており、低速時、高迎角時にエルロンを使うとアドバース・ヨー(操縦桿とは逆方向に機首が振れる)が発生するようになった。
これと主翼の半端な角度が合わさることにより、場合によっては操縦桿を倒した向きとは真逆の反応をしてしまうことすらあり、低速飛行中のエルロンの使用がご法度となっている。
このような性質によりF-4パイロットはヨー(足下のペダル)の使用頻度が他機よりも高く、「ファントムライダーは足癖が悪い」とも言われる。
このような動かしにくさを持つ一方、操作に対する反応自体は機敏であるため、悪癖を掌握しきれれば大出力エンジンによる加速性能も合わせて高い運動性を発揮できる。
日本での採用に至る流れ
本機が最新鋭機であった頃、航空自衛隊は老朽化してきたF-86の後継機種を模索していた。だが、ここで一悶着が起こる。当時の防衛庁を牛切っていた元内務省出身の大物官僚(陸軍の輜重科の軍歴があるというだけで、防衛庁で成り上がったという)が『自衛隊なんて、戦争ごっこして金をもらう商売なんだから、第三国用に用意されたF-5でも与えておきゃいいんだ。ファントムは身の丈にあわんキャデラックだ!!』(意訳)と喚き散らし、F-4採用の話を潰そうとしたが、防衛庁長官に海軍主計科の将校の軍歴がある中曽根康弘氏が就任し、彼が軍備拡大を押し進めたことで、軽軍備派であった『大物』は失脚。本機は無事に採用された。だが、当時の日本社会党中心の圧力で爆撃用コンピュータを省かなくてはならず、全てが思惑通りではなかった。(後々に航空自衛隊は改修による爆撃能力の復活の予算の工面に苦労したという。なお、本機の次世代機であるF-15以降は情勢の変化もあり、能力のオミットはされていない)
各型(輸出先での現地改修はとりあえず割愛)
アメリカ海軍向け
・F4H-1F/F-4B
最初の生産型。冷戦中の海軍が何にビビってたかと言えばソ連の爆撃機であり、これを艦隊から離れた位置で迎撃すべく長射程のスパローミサイルと大型のレーダーを組み合わせて作られた。
ミサイル搭載迎撃機と割り切ったせいで機関砲は搭載しなかった。これは後のベトナム戦争、ミグとの空戦で影を落とした。近すぎるとミサイルは使用できないのだ。またミサイルを打ち尽くした後、機関砲を装備したMig機に翻弄されてしまうという事態も発生した。
・RF-4B
海兵隊で運用された偵察型。機首のレーダーを外し、カメラを収納する。武装は搭載しない。F-4Bの生産ラインから改造された。
・F-4J
B型の改良機種で、レーダーの換装によりルックダウン能力を獲得。またエンジンも換装される一方で効果の低かった赤外線捜索追尾装置は撤去されたりした。後には余剰機がイギリス空軍に引き渡されたりしている。
・F-4N
既存のB型をJ型相当に改修した機体。今なら予算対策でJ型と一緒くたにされてるとこだ。
・F-4S
F-14がその価格ゆえに配備を遅延するなか、それを補完すべく採用されたF/A-18までの繋ぎとして既存の海軍型ファントムを近代化改修したもの。電子機器とエンジンの変更以外に、空軍のE型に採用されて好評だった空戦スラットなんかも導入され、光学照準器はHUDに換装された。F-14を買ってもらえなかった海兵隊から優先的に配備された。
アメリカ空軍向け
・F-4C
戦術空軍団向け戦闘爆撃機で、F-4Bがベース。海軍の調達を阻害すべからずとのお達しにより、空中受油方式の変更、不整地運用向けの降着装置など最低限の改造しか出来なかった。
・RF-4C
戦術偵察仕様。RF-4Bとほぼ同一だが、核攻撃能力があった。ベトナム戦争後には自衛用にサイドワインダーの運用能力も付与されている。
敵防空網制圧(SEAD)に最適化された機体で、対レーダーミサイルを運用した。
・F-4D
本格的戦術戦闘機。F-4Cと比較して戦術空軍の要求をふんだんに盛り込む事が出来た機体。電子機器が空軍独自のものになってるぞ。数ヶ国に輸出された。
・F-4E
固定機関砲装備型。実は当初は海軍のJ型同様にルックダウン能力をレーダーに盛り込んだタイプとして計画されていた。しかしガン装備の要求が優先事項としてねじ込まれたことでレーダー改良は小型化に全振りされ、ルックダウン能力獲得は放棄された。ガンの装備により「決定版」とも称されるが、本型配備の頃にはミサイルを当てるための運用方法の研究が進んでおり、ガンキルによる戦果は少なかった。空戦スラットの導入も生産途中より行われ、これは海軍のS型にも装備された。多数の友好国へ輸出されたのもこのタイプである。
アメリカが運用した最後のファントムは、このSEADミッション機。戦場を交錯する敵レーダー波のなかから脅威度の高いものを選別し、その場でチューンした対レーダーミサイルを撃ち込むすごいやつである。湾岸戦争ではイラク軍レーダー網を無力化する任務において、新型のF-16を差し置く大活躍をみせたが、結局90年代半ばまでに全機が退役。
・QF-4
退役したF-4を改造した標的機(ターゲットドローン)。無人機化によって外部からのリモートによって操作され、主に対空ミサイルの標的等に使用される。正確にはQF-4B、QRF-4Cなど、ベースとなった機体によって名称は異なる。QF-16に更新された。
輸出向け
・F-4K(ファントムFG.1 イギリス海軍)
・F-4M(ファントムFGR.2 イギリス空軍)
・F-4EJ(日本 航空自衛隊)
・F-4F(西ドイツ空軍)
・RF-4E(米国での採用はなく、輸出専用)
・F-4X・RF-4X(イスラエル空軍向けの水エタノール噴霧装置を搭載した推力増強型。計画中止)
F-4E性能諸元
(一部wikipediaより引用)
全体性能
・乗員/2名
・全長/19.20m
・全高/5.02m
・翼幅/11.71m
・使用エンジン/J79-GE-17(F-4E)
武装
・機関砲/GE M61A1 バルカン×1(20mmガトリング砲)
・短距離ミサイル/AIM-9×4
・中距離ミサイル/AIM-7×4
・Mk-81~84など各種爆弾
・AGM-65などの空対地ミサイル
(日本ではASM-2といった空対艦ミサイルも)
(以降を書いてくれる方、募集中)
運用者
アメリカ合衆国/退役済
・アメリカ空軍
・アメリカ海軍
・アメリカ海兵隊
日本/退役済
・航空自衛隊
イギリス/退役済
・イギリス空軍
・イギリス海軍
ドイツ(旧西ドイツ)/退役済
・西ドイツ空軍
ギリシャ/現役
・ギリシャ空軍
スペイン/退役済
・スペイン空軍
トルコ/現役
・トルコ空軍
イスラエル/退役済
・イスラエル空軍
エジプト/退役済
・エジプト空軍
イラン/現役
・イラン空軍
韓国/退役済
・韓国空軍